何年振りかで尋ねた松山は、環状線が完成し、外環状道路構想が進んで、当時とは大きく様変わりしていました。松山から移り住んでから23年、街並みが変わったこともさることながら、足掛け11年も暮らしていたにも関わらず、当時は『街並みを訪ねる』ことをあまりしていなかったことに今更のように気づきました。そんな松山にも八景、八勝のあったことを知り、この機に巡ってみました。
道後八景
義安寺蛍、奥谷鶯、円満寺蛙、冠山杜鵑、御手洗水渓、湯元蜻蛉、古城濠水禽、宇佐田雁
この八景の特徴は、瀟湘型を取らず生き物の名前を取り入れていることです。単に景観だけでなく音や色あるいは匂いまでも感じさせる俳句の町松山らしい八景となっています。
道後八勝
温泉楼月、霊之石陽炎、振鷺園雪、円満寺蛙、奥谷鶯、鴉渓納涼、冠山郭公、放生池蓮
【義安寺蛍】
護国山義安禅寺は、道後姫塚にある曹洞宗の寺で湯築城を居城としていた有力豪族河野氏の菩提寺です。八景のことは知りませんでしたが、『義安寺蛍』の事は聞いたことがあります。しかしながらこの近辺で蛍を見かけたことはありません。20年ほど前に1kmちょっと上流の新石手に住んでいた時には、縁側から蛍の光をまだ見ることができました。
義安禅寺
誓いの泉
【奥谷鶯】
奥谷というのは宝厳寺あたりの谷なのだそうです。豊国山遍照院宝厳寺は、一遍上人誕生地とされ、時宗奥谷派本山です。現在は、
2013年の火災で焼失した本堂の改築工事中でしたが、道後温泉から僅か徒歩10分とは思えないほどに緑が残されていました。
【円満寺蛙】
大悲山円満寺は浄土宗の寺で、行基作と伝えられる楠で作られた延命地蔵で知られています。蛙が如何なるカエルかは不明ですが、5km程上流の奥道後まで行けば、カジカガエルのなく場所がありましたので、ここはぜひ声の良いカエルであるとよいと思います。
【冠山杜鵑】
冠山はかつてとは姿を変えているそうですが、
湯神社のある場所が相当するようです。現在、ホトトギスがやってくるかどうかは定かではありませんが、カワラヒワとシジュウカラが囀っていました。
湯神社
湯神社登り口
タブノキ Machilus thunbergii
【御手洗水渓】
現在の
ふなや庭園の周辺にはかつてクイナが棲んでいたのでしょう。
【湯元蜻蛉】
湯元は現在の
道後温泉本館周辺のみならず、湯築谷一帯をさすのだそうです。いかなるトンボを想定していたのかは不明ですが、20年ほど前の石手川ではカワトンボの類が多く生息していたのを思い出しました。
【古城濠水禽】
湯築城の堀に棲む水鳥のことでしょう。湯築城跡にはかつて道後動物園がありましたが、
動物園は砥部に移転し、今は子規記念博物館ができていました。
湯築城址公園
堀の水路
【宇佐田雁】
宇佐八幡社の周辺に田圃があったのでしょうか。道後八景は瀟湘型を取っていませんが、平沙落雁を思い起こさせる縁として、雁を残したのかもしれません。
宇佐八幡神社
環状線の起点になっていました
向かいはフジ道後店
【その他】
伊佐爾波神社
熱田津今昔の作者三好恭治氏も触れていますが、
伊佐爾波神社が八景に入っていないのはなぜでしょうか。137段ある石段を登ったら『色里や十歩はなれて秋の風』という子規の句を思い出しました。
伊佐爾波神社参道
伊佐爾波神社
松山神社
松山神社は、松山城の鬼門の守りで、ここからの眺めが好きでした。今日は霧が深く遠くまでは見通せませんでしたが、ここも八景に加える価値がありそうです。
瀬戸風峠
夕方からのシンポジウムまで時間があったので、さらに祝谷の瀬戸風峠まで上がってみました。かつてはかなりの山奥で当時から夜景が美しいことで知られていたのですが、開発の波はここへも及んでおり、峠のすぐ裏まで南白水の団地ができていました。
瀬戸風峠
鶴の子
道後今市の
西岡菓子舗、まだ健在でした。せっかくの松山で、タルトとか坊ちゃん団子では残念なので今回のお土産は銘菓
つるの子にしました。
西岡菓子舗
銘菓つるの子
【道後八勝】
①温泉楼月【温泉本館】
道後温泉本館の振鷺閣には、道後温泉の象徴シラサギが羽ばたいています。
振鷺閣
②霊之石陽炎【温泉本館脇】
道後温泉本館わきにある玉の石のことと思われます。
伊豫の湯の
汀にたてる
霊の石 これそ神代のしるし成りける
玉の石
③振鷺園雪【温泉本館上手】
振鷺園は過去のものですが、いつの間にか縁となる振鷺亭ができていました。
振鷺亭
④円満寺蛙【円満寺】
道後八景と重複です。古いものではなさそうですが、円満寺ではおみくじの代わりにお結び玉結んで願をかける様になっています。
結び玉
⑤奥谷鶯【宝厳寺】
これも八景と重複。宝厳寺には句碑もいくつかあり、再建をお祈りする次第です。
色里や十歩はなれて秋の風 (正岡子規)
句碑(宝厳寺)
⑥鴉渓納涼【烏谷】
鴉渓の鴉が如何なるカラスかは未調査ですが、カワガラスではなかったかと推測します。
葵苔の碑
⑦冠山郭公【湯神社】
八景ではホトトギス、八勝ではカッコウになっています。開発で様変わりしたとはいえ、冠山にも少しばかりの緑が残されていました。
冠山登山口
⑧放生池蓮【放生池】
放生池のあった場所にハスは植わっていませんでしたが、いつの頃か足湯ができていました。
放生池跡の足湯
【参考文献】
熱田津今昔
http://home.e-catv.ne.jp/miyoshik/nigitazu/nigitazu49.htm
松山外環状道路
http://www.skr.mlit.go.jp/matsuyam/road/sotokanjou/
以下、本日撮影した写真です。
生石八幡神社
ハーデンベルギア Hardenbergia violacea
子規堂
伊予鉄道1号機関車(原寸模型)
銀天街入口の狸像
昼食はことりの鍋焼きうどん
コサギ Egretta garzetta
河津桜、
Cerasus x
kanzakura ‘Kawazu-zakura’
ハナナ Brassica rapa
カルガモ Anas zonorhyncha
ミザクラ Prunus avium
かつての大家さんと
コゲラ Dendrocopos kizuki
愛媛大学拓翠寮
ローズマリー Rosmarinus officinalis
供養碑(愛媛大学農学部)
石手橋脇の(元屋台)葉牡丹
エノキCeltis sinensisとヤドリギViscum album
スジグロシロチョウ Pieris melete
クサイチゴ Rubus hirsutus
【参考】
ハーデンベルギア
Hardenbergia violacea
コサギ
Egretta garzetta
河津桜、
Cerasus x
kanzakura ‘Kawazu-zakura’
ハナナ
Brassica rapa
カルガモ
Anas zonorhyncha
ミザクラ
Prunus avium
コゲラ
Dendrocopos kizuki
ローズマリー
Rosmarinus officinalis
エノキ
Celtis sinensisとヤドリギ
Viscum album
スジグロシロチョウ
Pieris melete
クサイチゴ
Rubus hirsutus
タブノキ
Machilus thunbergii