葉山八景を巡る

 葉山八景は他の三浦半島の八景と同じく、あまり知られていない様です。天気に恵まれた今日、往時の面影を訪ねてみました。

1.松久保夜雨
 降る雨を よそに聞く夜や 不如帰


 現在の葉桜団地あたりが松久保の様です。今は、住宅地が並んでいるだけですが、葉桜団地中央園地には、才戸坂上から移転されたという馬頭観音が残っていました。
–> 後日みつけた資料によれば、松久保夜雨は、千光院あたりの情景とされていました

2.名島帰帆
 追い風に はらむ白帆や 春の海


 かながわの景勝50選では、森戸の夕照となっていますが、八景では帰帆となっており、森戸海水浴場の沖に浮かぶ名島あたりに帰ってくる漁船の様子を撰したものと思われます。
 森戸には別途『森戸明神奉納の八景』というのがあると横須賀雑考に記されていますが、こちらは全くの未調査です。森戸神社では折しもビッグハヤマ・マーケットが開催中で大勢の人でに賑わっていました。

3.打鯖晴嵐
 青東風に かはく真砂の 光りかな


 打鯖は葉山御用邸辺りだったようです。晴嵐は晴れた日の山霞を意味するのだそうですが、この辺りも海辺の景色が優れています。近くの神明社には、この辺りにしては大きな庚申塔がありました。煉瓦色の狛犬もちょっと雰囲気が異なっていました。

4.長者崎夕照
 遅き日の 耀く島の 羽音かな


 長者崎は、かながわの景勝50選に入っており、神奈川県が2001年に選定した三浦半島八景にも採用されたので、葉山八景の中では最もよく知られています。観光地に典型的なお土産屋さんは、池沢物産店という名前でした。

5.平越暮雪
 ゆたかさや 雪の山家の 夕煙


 平越は、現在の一色にあった地名の様です。一色小学校近辺の様ですが、正確な場所を特定するには至りませんでした。県道27号線沿いには、ちょっと洒落たショッピングモール『かやの木テラス』がありました。

6.新善光寺晩鐘
 山を洩る 鐘の音うとし 夕時雨


 新善光寺は、かつて鎌倉の名越にあったと新編相模風土記稿に見える古刹ですが、16世紀中ごろに現在地に移転したそうです。晩鐘という事ですので往時を偲ぶ情景とみてよさそうです。

7.沢田落雁
 おろす影 疎らに小田の 雁の声


 木古田辺りの山田に降りた雁の様子を映した一景と思われますが、この地区でもそもそも田んぼが少なくなっており、正確な場所は推定の域を出ません。

8.浅間山秋月
 名月や 潮鳴り遠き 山の腰


 浅間山がどこにあるか未調査でしたが、その後、浅間山=仙元山との情報に接し、10月28日に訪ねてみました。秋月とすべきかどうかは別にして、今でも眺めの良い景勝地と言えます。
霊峰富岳

霊峰富岳


【文献】
 福田勝之発行(1930)葉山郷土史(1994年復刻版)、p.414-418.
 吉川英達(2008)葉山八景の今、歴史トーク湘南・葉山、p.108-115.
 高橋恭一(1968)三浦半島の八景、横須賀雑考、p.466-477.
 高梨 炳(1975)葉山町郷土史、p.182.

葉山八景を巡る” に1件のフィードバックがあります

  1.  平忠廣忠廣

    沢田の落雁の沢田は 木古庭団地の場所で 不動滝の水の流水小川と下山川の合流地点の地所は 元は田圃でした。
    いまでも この場所の下山川には数羽の鴨が いつも泳いでおります
    この辺のちくを土地の人は沢田とよんでいます かっては雁がおりてきたのでしょう

    返信

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