秀樹」カテゴリーアーカイブ

『子安(神奈川区)』の由来

 神奈川区に『子安』という地名の由来を調べて見た。まずは、手元にあった『神奈川区誌』を調べて見たが、それらしい記載はなかったので、ウェブを検索してみたところ、吉祥山惠光院相應寺の地蔵尊に由来するのではないかという説をみつけた。早速、現地を確認し、改めて神奈川区誌の該当箇所を再確認したが、やはりそれらしい記述はなかった。

 そこで、『新編武蔵風土記稿』を繙くと、巻之六十七橘樹郡之十神奈川領の項には下記の記載があった。


○東子安村 西子安村 新宿村 東西子安新宿の三村はもと一村にして、元祿の頃より今のごとくに別れしかば(中略)正保の頃1644~1648にも一村にしてたゞ子安とのみいへり、元祿1688~1703の郷帳に至りて、東西子安新宿と三村に分ち書すれば此間にかく唱へ始しなるべし、又村名の起れる所も詳ならず、(後略)


 これだけで、断言することはできないが、どうやら『名称の由来はよくわからない』というのが答えの様である。

【参考】
吉祥山惠光院相應寺:神奈川区七島町144
 子育地蔵尊、地神塔、庚申塔、地蔵群
大口一番街
八重地蔵尊:神奈川区子安通1丁目


  八重地蔵の来歴について
 此のお地蔵さまは今を去る二十年前即ち昭和三十九年の盛夏当時小学校で夏休行事として早朝ラジオ体操が行われていました。当時5才の岡沢八重子ちゃんは兄さんと姉さんの後について体操に行く途中、たま〱停車中の大型トラックの前を走り抜こうとした時、そのトラックが発車し下敷となって死亡されて了ったのです。其の現場のすさまじさは悲愴と言うか、凄惨と申すべきか、家族は申すまでもなく、居あわせた町民は皆狂乱状態となりました。直ちに其の足で我々町民は警察へ、市当局へと怒りをこめて雪崩こみました。市当局は慌て出し、其の日の中に土木局次長殿が見えて、道路の約半分を子供の遊び場として今日に及んで居ります。
 我々町民は八重子ちゃんの犠牲により公園が出来、子供の遊び場として又憩いの場として親しまれていることを永遠に忘れることなく、又、八重子ちゃんのご冥福を祈らなければならないと思います。
   昭和五十九年八月
          東浜町内会


【文献】
 神奈川区誌編纂刊行実行委員会(1977)神奈川区誌、628+59p.
 林述斎・間宮士信編(1828)新編武蔵風土記稿巻之六十七橘樹郡之十神奈川領, URL: https://dl.ndl.go.jp/pid/1214845/1/132, accessed: 2023-12-08.

コシダを探して円海山から金沢自然公園へ

 今日もコシダを探して、円海山周辺の尾根筋を重点的に歩いてみました。リョウメンシダやイノデの群落は良好に生育していましたが、コシダは未発見。もっとも、このまま温暖化が進めばコシダも(再)侵入してくるかも知れません。
  『小葉植物と大葉シダ植物の分類


【参考】
 円海山方面:京急富岡より
 ペラエア・ビリディス Pellaea viridis
 アリゾナイトスギ Cupressus arizonica:関東地方整備局円海山中継所
 ベニシダ Dryopteris erythrosora
 ヤブソテツ Cyrtomium fortunei
 オニヤブソテツ Cyrtomium falcatum
 イノデ Polystichum polyblepharum
 リョウメンシダ Arachniodes standishii
 カニクサ Lygodium japonicum
 イワガネソウ Coniogramme japonica
 瀬上池・池の上休憩所
 ヤマモミジ Acer amoenum var. matsumurae
 馬頭観音:馬頭の丘休憩所
 ヤクシソウ Youngia denticulata
 十月桜 Cerasus x subhirtella cv. Autumnalis
 トキワサンザシ Pyracantha coccinea
 トキリマメ Rhynchosia acuminatifolia
 タギョウショウ(多行松) Pinus densiflora f. umbraculifera
 ホシダ Thelypteris acuminata

コシダを探して横浜自然観察の森へ

 手持ち文献にあたっていて、50年ほど前には『上郷の雑木林下岩上に(コシダの)小群落あり』(出口,1698)との記述をみつけましたので、今日は横浜自然観察の森を尋ねました。自然観察センターで伺ったところでは、この地区で確かにコシダは自生しているようなのですが、今日は確認できませんでした。
 途中で通りかかった金沢自然公園シダの谷は、多数のシダ類が繁茂していたのですが、コシダにとっては湿潤すぎるのと日照も不足している環境ですので、ここでも確認はできませんでした。
  『小葉植物と大葉シダ植物の分類


【参考】
 オニヤブソテツ Cyrtomium falcatum
 コモチシダ Woodwardia orientalis
 ベニシダ Dryopteris erythrosora
 フモトシダ Microlepia marginata
 ゼンマイ Osmunda japonica
 アラカシ Quercus glauca
 イヌワラビ Athyrium niponicum
 リョウメンシダ Arachniodes standishii
 イノデ Polystichum polyblepharum
 イワガネソウ Coniogramme japonica
 フユノハナワラビ Botrychium ternatum
 スダジイ Castanopsis sieboldii:釜利谷市民の森
 サトクダマキモドキ Holochlora japonica
 アキグミ Elaeagnus umbellata
 トックリラン Beaucarnea recurvata
 スウェーデンアイビー Plectranthus verticillatus
 オジギソウ Mimosa pudica
 ヤブソテツ Cyrtomium fortunei
 ホシダ Thelypteris acuminata
 カンアオイ Asarum nipponicum
【文献】
出口長男(1968)横浜植物誌、256p.、秀英出版、東京.

コシダを探して鷹取山へ

 シダ類の写真を整理するうちに、松山や広島では普通に見かけたコシダの写真が一枚もないことに気づきました。シダ類は神武寺周辺に種類の多いことが知られているのですが、鷹取山から十州望を辿るハイキングコースが通行止めになって久しいので、今日は鷹取山までを歩いてみました。この辺りはコモチシダやベニシダの多いことが特徴ですが、コシダやウラジロの自生はないようでした。
  『小葉植物と大葉シダ植物の分類


【参考】
 コモチシダ Woodwardia orientalis
 ベニシダ Dryopteris erythrosora
 ヤブソテツ Cyrtomium fortunei
 リョウメンシダ Arachniodes standishii
 イワガネソウ Coniogramme japonica
 カニクサ Lygodium japonicum
 タチシノブ Onychium japonicum
 ホシダ Thelypteris acuminata
 シロダモ Neolitsea sericea

トクサ科の写真整理

 トクサ科(Equisetum)は、痕跡的ではありますが葉脈を持っているため大葉植物亜門(Euphyllophytina)の所属で、他の全てのシダ植物に対して姉妹群と考えられています。現世種はトクサ属(Equisetum)の1属15種(+交配種2種)のみで、かつては同じ科として配置されていた化石種蘆木(ロボク)科とは別科となっています。現生では唯一のトクサ属は、3億4200万年前(石炭紀初頭)に他のシダ類から分岐し、白亜紀中頃までに3つの亜属を分岐し、我国でもなじみ深いスギナ(Equisetum arvense)が現れたのは、トクサ属の中では比較的新しい新第三期中新世であったと、分子時計を用いて推定されています(Christenhusz et al.,2021)。化石種を含むトクサ亜綱の系統関係は下記が提案されています。

【トクサ亜綱の系統関係】(Elgorriaga et al.,2018)
┌スフェノフィルム目(Sphenophyllales)(†2種)
┤┌アルカエオカラミテス科(Archaeocalamitaceae)(†3種)
└┤┌┬アンガラ-ゴンドワナ・クレード(Angaran-Gondwanan Clade)(†3種) *1
 └┤└ロボク(蘆木)科(Calamitaceae)(†) 5属10種
  └┬ネオカラミテス属(Neocalamites)(†2種)
   │    ┌Equisetites arenaceus(†1種)
   └トクサ科┤┌Spaciinodum collinsonii(†1種)
        └┴トクサ属(Equisetum total group) 23種(現生15種)─
    ┌Equisetum thermale(†)
トクサ属┼┬──Paramochaete亜属(Equisetum bogotense) 現生1種 *2
    │└Equisetum laterale(†)
    │┌┬Equisetum dimorphum(†)
    └┤└Equisetites lyellii(†)
     │┌┬Equisetum haukeanum(†)
     └┤└Equisetum vancouverense(†)
      └┬ミズドクサ亜属(Equisetum subg.) 8種(現生7種)
       └トクサ亜属(Hippochaete subg.) 8種(現生7種)+交配種2種

*1:石炭紀に栄えたロボク科が絶滅した後にペルム紀初期に現れてペルム紀半ばには絶滅した化石で知られる3種(Paracalamitina striata, Cruciaetheca patagonica, Cruciaetheca feruglioi)で、北半球のアンガラ大陸(シベリア大陸)と南半球のゴンドワナ大陸の両方で化石が発見されています(Naugolnykh,2002; Cúneo and Escapa,2006)。ちなみに、この後ペルム紀後期にかけてこれら大陸の衝突により超大陸パンゲアが形成されていくことになります。
*2:現生のトクサ綱では最も古く(ジュラ紀初頭)に分岐したと推定される南米に分布する種です。ミズドクサ亜属に入れられていたこともあるようですが、他の現生2亜属は白亜紀末期以降に登場したと推定されています。

 維管束植物の分類【シダ類】【裸子植物】【被子植物


【トクサ科(Equisetum)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
トクサ属 Equisetum
スギナ スギナ
Equisetum arvense Common Horsetail
トクサ トクサ
Equisetum hyemale Rough Horsetail
イヌドクサ イヌドクサ
Equisetum ramosissimum Branched Horsetail

【文献】
Christenhusz MJM, Chase MW, Fay NF, Hidalgo O, Leitch IJ, Pellicer J and Viruel J (2021) Biogeography and genome size evolution of the oldest extant vascular plant genus, Equisetum (Equisetaceae), Ann Bot, 127, 681–695, DOI: 10.1093/aob/mcab005, Accessed: 2023-11-22.
Elgorriaga A, Escapa IH, Rothwell GW, Tomescu AMF and Cúneo NR (2018) Origin of Equisetum: Evolution of horsetails (Equisetales) within the major euphyllophyte clade Sphenopsida, Am J Bot, 105(8), 1286–1303. DOI: 10.1002/ajb2.1125, Accessed: 2023-11-19.
Marais DLD, Smith AR, Britton DM, and Pryer KM (2003) Phylogenetic Relationships and Evolution of Extant Horsetails, Equisetum, Based on Chloroplast DNA Sequence Data (rbcL and trnL‐F), Int J Plant Sci, 164(5), 737–751, URL: https://www.jstor.org/stable/10.1086/376817, Accessed: 2023-11-26.
Naugolnykh SV (2002) Paracalamitina striata – A newly reconstructed equisetophyte from the Permian of Angaraland, J Paleontol, 76(2), 377-385, DOI: 10.1086/497652, Accessed: 2023-11-26.
Kelber K-P and van Cittert JHAvK-v (1998) Equisetites arenaceus from the Upper Triassic of Germany with evidence for reproductive strategies, Rev Palaeobot Palynol, 100, 1-26, Accessed: 2023-11-26.
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p12-14.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: 10.1111/jse.12229, Accessed: 2023-11-19.
Puttick MN, Morris JL, Williams TA, Cox CJ, Edwards D, Kenrick P,Pressel S, Wellman CH, Schneider H, Davide Pisani D and Donoghue PCJ (2018) The Interrelationships of Land Plants and the Nature of the Ancestral Embryophyte, Current Biology, 28, 733–745, DOI: 10.1016/j.cub.2018.01.063, Accessed: 2023-11-19.

イワヒバ科(目)の写真整理

 イワヒバ科(Selaginellaceae)は、旧来の分類体系ではシダの仲間とされてきましたが、分子生物学手法による解析の結果、胞子により繁殖するシダ類と種子植物が分岐するより更に遡った時代に維管束植物から分岐したグループとして分離されました。現在では小葉植物亜門ヒカゲノカズラ綱イワヒバ目に置かれている1属約700種からなるグループです(PPG-I,2016)。科内の整理は途上にあるようですが、7つのクレードが識別されています(Weststrand and Korall,2016)。
 古い形質を残しているグループではありますが、イヌカタヒバ(Gemmiferous Spikemoss)はそれほど珍しいものではなく、水分条件の良い民家の石垣等に着生しているのを良くみかけます。
 維管束植物の分類【シダ類】【裸子植物】【被子植物】 【陸上植物


【イワヒバ科(Selaginellaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
イワヒバ属 Selaginella
イワヒバ イワヒバ
Selaginella tamariscina Spikemoss
カタヒバ カタヒバ
Selaginella involvens Medicinal Spikemoss
イヌカタヒバ イヌカタヒバ
Selaginella moellendorffii Gemmiferous Spikemoss
ヒバゴケ ヒバゴケ
Selaginella boninensis Tarry Spikemoss
コンテリクラマゴケ コンテリクラマゴケ
Selaginella uncinata Blue Spikemoss
セラギネラ・デリカツラ セラギネラ・デリカツラ
Selaginella delicatula Delicate Spikemoss
クラマゴケ クラマゴケ
Selaginella remotifolia (Spikemoss)

【文献】
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p7-10.
Weststrand S and Korall P (2016) Phylogeny of Selaginellaceae: There is value in morphology after all!, Am J Bot, 103, 2136-2159, DOI: 10.3732/ajb.1600156, Accessed: 2023-11-19.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: , Accessed: 2023-11-19.

災害時帰宅訓練2023-公衆トイレを辿って

 これで最後となると思われる災害発生時帰宅訓練、今年は祝日で対応しました。37ヶ所の公衆トイレを辿りながら7時間54分で帰宅完了です。


【本日の装備】野帳、時計、歩数計、シャープペン、カメラ、(食料・飲料)


【記録】所要時間:7時間54分、総歩数:42969歩、総距離:30.9km(72cm/歩で換算)、平均時速3.8km/hr
【経路概要】Google Map
 (テクノウェイブ100)-浦島公園-京急東神奈川駅東口-反町公園-幸ヶ谷公園-神奈川公園-横浜駅東口駅前広場-高島町-掃部山公園-長者橋-黄金橋-駿河橋-八幡橋-磯子駅前-新杉田駅前-新杉田公園-富岡総合公園-富岡八幡公園-長浜公園-野鳥観察小屋-小柴自然公園-海の公園-野島公園-室の木野島公園-(自宅)
【災害時帰宅訓練記録】 2019年11月13日  2022年11月20日

 
トイレとコンビニマップ(GoogleMap)

区間毎速度の変化



























 以下は公衆トイレ以外の写真です。


【参考】
 猫の像:横浜駅東口駅前広場
 カナリーヤシ Phoenix canariensis
 ヒイロタケ Pycnoporus coccineus
 秩父宮勢津子妃殿下御染筆歌碑
 メタセコイヤ Metasequoia glyptostroboides
 イチョウ Ginkgo biloba
 クロマツ Pinus thunbergii
 イヌシデ Carpinus tschonoskii
 カモメ公園:金沢区柴町362
 八景島方面
 イソギク Chrysanthemum pacificum
 夕照(ゆうしょう)夕照(せきしょう)

小葉植物(Lycophytina)と大葉シダ植物(Polypodiopsida)の分類

 シダ類の胞子嚢群(ソーラス)  APG-IV体系による被子植物の目  現生裸子植物の目
 【生物の系統概要】【真核生物】 【陸上植物


 陸上植物(有胚植物,Embryophyta)は、コケ植物(Bryophyte)と維管束植物(Tracheophyta)に分けられますが、維管束植物のうち葉脈が1本のみのグループは、従来の形態による分類ではシダに近縁と考えられて羊歯植物門(Pteridophyta)に入れられていました(大井,1957)。現在の分子生物学手法を取り入れた分類体系でのこのグループは、小葉植物亜門(Lycophytina)として独立しています。小葉植物亜門は、ヒカゲノカズラ目(Lycopodiales)、ミズニラ目(Isoetales)、イワヒバ目(Selaginellales)の3目3科5属約1300種が記載されていて(PPG-I,2016)、凡その系統関係は下図になります(Puttick et al.,2018)。

【陸上植物上門(Embryophyta)の系統図】
     ┌─ツノゴケ植物門 Anthocerotae
コケ植物┤┌苔植物門 Hepaticae
│Bryophta└┴蘚植物門 Musci          ┌ヒカゲノカズラ目(16属388種)
┤       ┌小葉植物亜門─ヒカゲノカズラ綱┼ミズニラ目(1属250種)
└─維管束植物門┤ Licophyta   Lycopodiopsida └イワヒバ目(1属750種)
  Tracheophyta│      ┌─────大葉シダ植物綱─(11目48科319属10578種)
        └大葉植物亜門┤    ┌裸子植物上綱─(4綱7目12科83属1079種)
          Monilophyta└種子植物┤ Gymnospermae
                    └被子植物上綱─(64目416科約1300属29万5千種)
                      Angiospermae

 維管束植物門のうち葉脈を持つグループが大葉植物亜門(Euphyllophytina)ですが、そのうち胞子を散布するグループが大葉シダ植物綱(Polypodiopsida)で、旧羊歯植物門から小葉植物亜門を除いたものが相当します。大葉シダ植物綱は、11目48科319属1万種以上が記載されていますが、その8割以上がウラボシ目に属していて、さらにその半数の4200種余りがウラボシ亜目の所属になっています(PPG-I,2016)。大葉シダ植物と種子植物とが分岐したのは古生代デボン紀末期でしたが、65属を分岐して現在最も繁栄しているウラボシ科が分化したのは、中生代白亜紀末期以降の出来事だったようで、現生の目レベルでの系統は下図のように推定されています(Shen et al., 2018)。

【大葉シダ植物綱(Polypodiopsida)の系統図】
 ┌──トクサ亜綱──────トクサ目(Equisetales) 1科1属15種
 │        ┌────ゼンマイ目(Osmundales) 1科6属18種
┌┤        │┌┬──ウラジロ目(Gleicheniales) 3科8属172種
││┌─薄嚢シダ亜綱┤│└──コケシノブ目(Hymenophyllales) 1科6属434種
│││       └┤┌──フサシダ目(Schizaeales) 3科4属190種
┤└┤        └┤┌─サンショウモ目(Salviniales)
│ │         ││  └┬サンショウモ科(Salviniaceae) 2属21種
│ │         ││   └デンジソウ科(Marsileaceae) 3属61種
│ │         └┤┌ヘゴ目(Cyatheales) 8科13属713種
│ │          └┴ウラボシ目(Polypodiales) 6亜目26科253属8714種
│ └┬リュウビンタイ亜綱──リュウビンタイ目(Marattiales) 1科6属111種
│  │       ┌───ハナヤスリ目(Ophioglossales) 1科10属112種
│  └ハナヤスリ亜綱┴───マツバラン目(Psilotales) 1科2属17種

└(外群)ドイツトウヒ(Picea abies)など
 ※科、属、種の数は、現世種に対するPPG-I(2016)による数です。

 ウラボシ目には、6亜目26科253属8714種が識別されています。

【ウラボシ目の系統】(Rothfels et al.,2012)
┌──サッコロマ亜目(Saccolomatineae) 1科1属18種
├──ホングウシダ亜目(Lindsaeineae) 3科9属237種
┤┌─イノモトソウ亜目(Pteridineae) 1科53属1211種
└┼─コバノイシカグマ亜目(Dennstaedtiineae) 1科10属265種
 └┬チャセンシダ亜目(Aspleniineae = Eupolypods II) 11科72属2775種
  └ウラボシ亜目(Polypodiineae = Eupolypods I) 9科108属4208種

【チャセンシダ亜目の系統】(Rothfels et al.,2012)
┌─────ナヨシダ科 (Cystopteridaceae) 3属37種
┤ ┌───ヌリワラビ科 (Rhachidosoraceae) 1属8種
│┌┴┬──イワヤシダ科 (Diplaziopsidaceae) 2属4種
││ └┬─デスモフレビウム科 (Desmophlebiaceae) 1属2種
└┤  └┬ヘミディクティウム科 (Hemidictyaceae) 1属1種
 │   └チャセンシダ科 (Aspleniaceae) 2属730種
 └┬───ヒメシダ科 (Thelypteridaceae) 30種1034種
  └┬──イワデンダ科 (Woodsiaceae) 1属39種
   └┬─メシダ科 (Athyriaceae) 3属650種
    └┬シシガシラ科 (Blechnaceae) 24属265種
     └コウヤワラビ科 (Onocleaceae) 4属5種

【ウラボシ亜目の系統】(Zhang & Zhang,2015)
┌ディディモクラエナ科(Didymochlaenaceae) 1属1種
┤┌キンモウワラビ科(Hypodematiaceae) 2属22種
└┤┌オシダ科(Dryopteridaceae) 26属2115種
 └┤┌┬タマシダ科(Nephrolepidaceae) 1属19種
  └┤└ツルキジノオ科(Lomariopsidaceae) 4属69種
   │┌┬ツルシダ科(Oleandraceae) 1属15種
   └┤└┬シノブ科(Davalliaceae) 1属65種
    │ └ウラボシ科(Polypodiaceae) 65属1652種
    └ナナバケシダ科(Tectariaceae) 7属250種

 シダ類の同定には胞子嚢群(Sorus)の観察が必要な場合が多く、植物全体を撮影した写真だけでは判別できないことも多いので、これまで撮影していた胞子嚢群の写真を整理してみました。
→ シダ類の胞子嚢群(ソーラス)(2023-12-31)


【参考】
大井次三郎(1957)日本植物誌シダ編、244p.、至文堂、東京.
Shen H, Jin D, Shu J-P, Zhou X-L, Lei M, Wei R, Shang H, Wei H-J, Zhang R, Liu L, Gu Y-F, Zhang X-C and Yan Y-H (2018) Large-scale phylogenomic analysis resolves a backbone phylogeny in ferns, GigaScience, 7, 2018, 1–11, DOI: 10.1093/gigascience/gix116, Accessed: 2023-11-18.
Christenhusz MJM and Byng JW (2016) The number of known plants species in the world and its annual increase, Phytotaxa. 261(3), 201–217. DOI: 10.11646/phytotaxa.261.3.1, Accessed: 2023-10-05.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: 10.1111/jse.12229, Accessed: 2023-11-19.
Puttick MN, Morris JL, Williams TA, Cox CJ, Edwards D, Kenrick P,Pressel S, Wellman CH, Schneider H, Davide Pisani D and Donoghue PCJ (2018) The Interrelationships of Land Plants and the Nature of the Ancestral Embryophyte, Current Biology, 28, 733–745, DOI: 10.1016/j.cub.2018.01.063, Accessed: 2023-11-19.

イチイ科の写真整理

 イチイ科(Taxaceae)は、イチイ材の工芸品、カヤ材の碁盤、イヌガヤ材の家具のように高級材、有用材として利用される種が含まれていますし、イチイ(Taxus cuspidata)を生垣に利用しているのはよくみかけます。イチイ科は、旧イヌガヤ科と遺伝的に区別できないことが示されており(Majeed et al., 2019)ひとつの科に統合された結果、6属約27種になっています(Christenhusz and Byng,2016)。Ghimire and Heo(2014)によれば、科内の系統関係は下記のように推定されています。

       ┌─イヌガヤ属(Cephalotaxus)
      ┌┤┌カヤ属(Torreya)
     ┌┤└┴アメントタクスス属(Amentotaxus)
┌イチイ科┤└─┬イチイ属(Taxus)
│    │  └シロミイチイ属(Pseudotaxus)
┤    └───アウストロタクスス属(Austorotaxus)
└(外群)ナンヨウナギ属(Agathis)、コウヤマキ属(Sciadopitys)

 現生裸子植物の目の一覧  APG-IV体系による被子植物の目一覧  カヤとイヌガヤ


【ヒノキ目(Cuperssales) イチイ科(Taxaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
イチイ属 Taxus
イチイ イチイ
Taxus cuspidata Japanese Yew
キャラボク キャラボク
Taxus cuspidata ver. nana Dwarf Japanese Yew
カヤ属 Torreya
カヤ カヤ
Torreya nucifera Japanese Torreya
イヌガヤ属 Cephalotaxus
イヌガヤ イヌガヤ
Cephalotaxus harringtonia> Japanese Plum-yew

【文献】
Ghimire B and Heo K (2014) Cladistic analysis of Taxaceae s. l., Plant Syst Evol, 300, 217–223, DOI: 10.1007/s00606-013-0874-y, Accessed: 2023-11-13.
Majeed A, Singh A, Choudhary S and Bhardwaj P (2019) RNAseq-based phylogenetic reconstruction of Taxaceae and Cephalotaxaceae, Cladistics, 35, 461–468, DOI: 10.1111/cla.12362, Accessed: 2023-11-13.
Li J, Davis CC, Tredici PD, MJ and Donoghue MJ (2001) Phylogeny and biogeography of Taxus (Taxaceae) inferred from sequences of the internal transcribed spacer region of nuclear ribosomal DNA, Harvard Papers in Botany, 6(1), 267-274,
https://www.jstor.org/stable/41761651, Accessed: 2023-11-13.
Morris JL, Puttick MN, Clark JW, Dianne Edwards D, Kenrick P, Pressel S, Wellman CH, Yang Z, Schneider H and Donoghue PCJ (2018) The timescale of early land plant evolution, Proc Nat Acad Sci, 115(10), E2274-E2283, DOI: 10.1073/pnas.1719588115, Accessed: 2023-11-11.
Christenhusz MJM and Byng JW (2016) The number of known plants species in the world and its annual increase, Phytotaxa. 261(3), 201–217. DOI: 10.11646/phytotaxa.261.3.1, Accessed: 2023-10-05.

ヒノキ科の写真整理

 ヒノキ科(Cupressaceae)は、南北両半球に広く分布しており、遺伝子解析の結果を受けて旧スギ科が編入されて29属約149種になっています(Christenhusz and Byng,2016)。科としての成立は三畳紀初期で、白亜紀初頭(約1億5千万年前)には現生の7亜科が出揃っていたと推定されています(Mao et al.,2012)。

     ┌ヒノキ亜科(Cupressoideae) 10属
    ┌┴カリトリス亜科(Callitroideae) 10属
   ┌┴─スギ亜科(Taxodioideae) 3属
  ┌┴──セコイア亜科(Sequoideae) 3属
 ┌┴───タスマニアスギ亜科(Athrotaxidoideae) 1属
┌┴────タイワンスギ亜科(Taiwanioideae) 1属
┴─────コウヨウザン亜科(Cunninghamioideae) 1属

 スギ、ヒノキは軽くて丈夫で狂いの少ない優良材として第二次世界大戦後、各地で植林が進められました。その結果、20世紀後半にはこれら植林樹の花粉が原因となるアレルギー症が広まるようになり、現在では花粉量の少ない品種への植え替えが進められています(齋藤,2020)。
 現生裸子植物の目の一覧  APG-IV体系による被子植物の目一覧


【ヒノキ目(Cuperssales) ヒノキ科(Cupressaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
コウヨウザン亜科(Cunninghamioideae) コウヨウザン属 Cunninghamia
コウヨウザン コウヨウザン
Cunninghamia lanceolata Chinese Fir
セコイア亜科(Sequoioideae) セコイア属 Sequoia
セコイア セコイア
Sequoia sempervirens Coastal Redwood
セコイア亜科(Sequoioideae) メタセコイア属 Metasequoia
メタセコイア メタセコイア
Metasequoia glyptostroboides Dawn Redwood
スギ亜科(Taxodioideae) ヌマスギ属 Taxodium
ヌマスギ ヌマスギ
Taxodium distichum Bald Cypress
スギ亜科(Taxodioideae) スイショウ属 Glyptostrobus
スイショウ スイショウ
Glyptostrobus pensilis Chinese Swamp Cypress
スギ亜科(Taxodioideae) スギ属 Cryptomeria
スギ スギ
Cryptomeria japonica Japanese Cedar
ヒノキ亜科(Cupressoideae) クロベ属 Thuja
ニオイヒバ ニオイヒバ
Thuja occidentalis Northern White-cedar
ヒノキ亜科(Cupressoideae) アスナロ属 Thujopsis
アスナロ アスナロ
Thujopsis dolabrata Hiba Arborvitae
ヒノキ亜科(Cupressoideae) ヒノキ属 Chamaecyparis
ヒノキ ヒノキ
Chamaecyparis obtusa Hinoki Cypress
チャボヒバ チャボヒバ
Chamaecyparis obtusa var. breviramea Chabohiba
サワラ サワラ
Chamaecyparis pisifera Sawara Cypress
イトヒバ イトヒバ
Chamaecyparis pisifera cv. filifera Japanese Falsecypress
ヒノキ亜科(Cupressoideae) コノテガシワ属 Platycladus
コノテガシワ コノテガシワ
Platycladus orientalis Oriental Arborvitae
ヒノキ亜科(Cupressoideae) ビャクシン属 Juniperus
ビャクシン ビャクシン
Juniperus chinensis Chinese Juniper
カイヅカイブキ カイヅカイブキ
Juniperus chinensis ‘Kaizuka’Juniperus conferta Hollywood Juniper
ハイネズ ハイネズ
Juniperus conferta Shore Juniper
エンピツビャクシン エンピツビャクシン
Juniperus virginiana Eastern Redcedar
ヒノキ亜科(Cupressoideae) イトスギ属 Cupressus
アリゾナイトスギ ‘ブルーアイス’ アリゾナイトスギ 'ブルーアイス'
Cupressus arizonica vsr. Glabra ‘Blue Ice’ Arizona Cypress
ヒノキ亜科(Cupressoideae) レイランドヒノキ属 Cupressocyparis
レイランドヒノキ ‘シルバーダスト’ レイランドヒノキ 'シルバーダスト'
X Cupressocyparis leylandii ‘Silver Dust’ Leyland Cypress

【文献】
Mao K, Milne RI, Zhangd L, Peng Y, Liu J, Thomas P, Mill RR and Renner SS (2012) Distribution of living Cupressaceae reflects the breakup of Pangea, Proc Nat Acad Sci, 109(20), 7793-7798, DOI: , Accessed: 2023-11-12.
齋藤央嗣 (2020) 各都道府県の林業・林産業と遺伝育種の関わり(30)神奈川県、森林遺伝育種、9、89-92、DOI: 10.32135/fgtb.9.2_89, Accessed: 2023-11-14.
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