植物」カテゴリーアーカイブ

アンボレラ(属、科、目)

 アンボレラ(Amborella trichopoda)は、ニューカレドニアのグランテール島(Grande Terre)固有の低木で、1属1種で単独科単独目となっています。最初の記載は19世紀(Bailey and Swamy,1948)ですが、20世紀末になって遺伝子解析により、すべての被子植物に対して姉妹群となることが報告(Graham and Olmstead,2000)されてから、一躍注目を集めています(戸部,2021)。『アンボレラは、過去の証人か?』と題した総説(Poncet et al.,2019)も公表されていて、アンボレラばかり研究対象にしていると他の研究が疎かになるのではないかとの懸念も呈されている様です。
 アンボレラを生きた化石とみなすのは必ずも正しくなく、他の被子植物と袂を分かったのはアンボレラの祖先種であって、種としてのアンボレラは新生代になってから現れたと考えられている様です。アンボレラの花期は6月中旬とのことですが、今年(2024)の小石川植物園では一般公開されていませんでした。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


アンボレラ属の系統位置 (Graham and Olmstead,2000)

  ┌マツ属(Pinus)            ┐
┌┬┴グネツム属(Gnetum)         ├裸子植物
┤└イチョウ属(Ginkgo)          ┘Gymnosperm
│┌アンボレラ属(Amborella)
└┤ ┌ハゴロモモ属(Cabomba)
 │┌┴スイレン属(Nymphaea)
 └┤┌シキミ属(Illicium)
  ││   ┌ショウブ属(Acorus)    ┐
  └┤  ┌┤┌ヤマノイモ属(Dioscorea) ├単子葉類
   │  │└┴┬イネ属(Oryza)     │Monocots
   │ ┌┤  └トウモロコシ属 (Zea) ┘
   │┌┤└マツモ属(Ceratophyllum)
   │││┌ヤマグルマ属(Trochodendron)  ┐
   ││└┤┌カツラ属(Cercidiphyllum)   ├真正双子葉類
   └┤ └┴タバコ属(Nicotiana)     ┘Eudicots
    │ ┌クロバナロウバイ属(Calycanthus)
    │┌┴ユリノキ属(Liriodendron)    │
    └┤┌ドリミス属(Drimys)       ├モクレン目群
     └┴┬カンアオイ属(Asarum)     │Magnilids
       └┬ラクトリス属(Lactoris)   │
        └ハンゲショウ属(Saururus)  ┘

【アンボレラ目(Amborellales) アンボレラ科(Amborellaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アンボレラ属 Amborella
アンボレラ No Image
Amborella trichopoda (Amborella)

Amborella Genome Project(0213) The Amborella Genome and the Evolution of Flowering Plants, Science 342, 1241089, DOI: 10.1126/science.1241089, Acessed: 2024-06-14.
Bailey IW and Swamy BGL (1948) Amborella trichopoda Baill., a New Morphological Type of Vesselless Dicotyledon, J Arnold Arboretum, 29(3), 255–256, URL: https://www.biodiversitylibrary.org/page/8441602, Acessed: 2024-06-14.
Graham SW and Olmstead RG (1999) A phylogeny of basal angiosperms infered form 17 chloroplast genes, Paper presented at the sixteen International Botanical Congress, St. Louis, Missouri, U. S., August 1-7, Abst.68.
Graham SW and Olmstead RG (2000) Utility of 17 chloroplast genes for inferring the phylogeny of the basal angiosperms, Am J Bot, 87(11), 1712-1730, DOI: 10.2307/2656749, Acessed: 2024-06-11.
Poncet V, Birnbaum P, Burtet-Sarramegna V, Kochko Ad, Fogliani B, Gâteblé G, Isnard S, Jaffré T, Job D, Munoz F, Munzinger J, Scutt CP, Tournebize R, Trueba S and Pillon Y (2019) Amborella – Bearing Witness to Past ?,
Ann Plant Rev, 2, 1–41, DOI:10.1002/9781119312994.apr0689, Acessed: 2024-06-14.
Soltis DE and AND Soltis PS (2004) Amborella Not a “Basal Angiosperm”? Not so Fast, Am J Bot, 91(6), 997-1001, DOI: 10.3732/ajb.91.6.997, Acessed: 2024-06-11.
戸部博(2021)アンボレラの雌雄性と進化、植物地理・分類研究、60(1), 39-50, DOI: 10.18942/chiribunrui.0691-09, Acessed: 2024-06-11.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-07.

真夏の金沢動物園へ

 今日は、朝から朝比奈市民の森経由で金沢自然公園へ…。まだまだ暑いので、屋外飼育の動物たちは、ほぼ日陰で休んでいました。
維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹



【参考】〇は本日初撮影種
 アオバハゴロモ Geisha distinctissima
 ヒャクニチソウ Zinnia X hybrida
 ホウセンカ Impatiens balsamina
 ワルナスビ Solanum carolinense
 キンミズヒキ Agrimonia pilosa
 ホシダ Thelypteris acuminata
 イヌガヤ(浄林寺跡)横浜市指定名木古木 No.48140 Cephalotaxus harringtonia:朝比奈町267
 ラセイタソウ Boehmeria biloba
 クリ Castanea crenata
 トウガン Benincasa pruriens f. hispida
 マテバシイ Lithocarpus edulis
 サンゴジュ Viburnum odoratissimum
 ヒャクニチソウ(一重) Zinnia X hybrida
〇アラゲハンゴンソウ Rudbeckia hirta var. pulcherrima
 キバナコスモス Cosmos sulphureus
〇ヒメハラナガツチバチ Campsomeris annulata
 金澤自然公園夏山口
 金沢動物園
 オニドコロ Dioscorea tokoro
 アオダイショウ Elaphe climacophora
〇アズマヒキガエル Bufo japonicus formosus
 シマヘビ Elaphe quadrivirgata
〇モリアオガエル Zhangixalus arboreu
 タガメ Kirkaldyia deyrolli
〇ノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus
〇ヒダリマキマイマイ Euhadra quaesita
 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus
〇アカハライモリ Cynops pyrrhogaste
 追浜方面
 アオバネワライカワセミ Dacelo leachii leachii
 hiroki:國川裕美 作
 コアラ Phascolarctos cinereus
 モモイロペリカン Pelecanus onocrotalus
 ノカンゾウ Hemerocallis longituba
 アブラチャン Lindera praecox
〇ミズカンナ Thalia dealbata
 ベゴニア Begonia semperflorens
 クロウリハムシ Aulacophora nigripennis
 カラスウリ Trichosanthes cucumeroides
 ヒャクニチソウ(一重) Zinnia X hybrida


この像は一体…何?!
 と、思われる方も多いかと思います。
パルマワラビー舎では、2015年までウォンバットを飼育していました。以前、金沢動物園で行っていたイベント【アニマルアートコラボ2014】の際に、國川裕美さんに出展していただいた作品『hiroki』です。同時飼育していたウォンバットの『ヒロキ』は残念ながら亡くなってしまいましたが、思い出の詰まったこの像はそのままここに飾っています。

鬼怒川温泉から日光へ

 朝のうちに鬼怒川周辺を散策してから、日光へと向かいました。




【参考】〇は本日初撮影種
 佳祥坊福松
 湯泉(ゆどころ)(ひと)
 鬼怒川
 鬼怒太像:定印
 ユウガオ(ヒョウタンの変種) Lagenaria siceraria var. hispida
〇ビロ-ドシダ Pyrrosia linearifolia
 (三毛)猫 Felis catus
 おさるの山入口
 ノチドメ Hydrocotyle maritima
 マツカゼソウ Boenninghausenia albiflora var. japonica
〇クラマゴケ Selaginella remotifolia
 鬼怒川温泉神社
 石尊碑
 湯殿山碑
 男體山碑
 宝の湯(鬼怒川プラザホテル)
 ウラハグサ(風知草) Hakonechloa macra
 鬼怒太の階段アート(ふれあい橋東詰)
 キリ Paulownia tomentosa
〇チャコウラナメクジ Ambigolimax valentianus
〇ヤマビル Haemadipsa zeylanica japonica
〇イワツバメ Delichon urbica
 シンテッポウユリ Lilium x formolongi
 スペーシア
 スペーシアと鬼怒川みやび
 先頭車両は貸し切り状態


 東武日光駅
 東武100系電車
〇カラマツ Larix kaempferi
 華厳滝
 涅槃滝
 昼食:ゆば料理滝(ゆば&グリーンカレー)
 オトギリソウ Hypericum erectum
 アキアカネ Sympetrum frequens
 中禅寺湖
 オオハンゴンソウ Rudbeckia laciniata
 タマアジサイ Platycrater involucrata
 アスナロ Thujopsis dolabrata
 日光東照宮参道
 イワタバコ Conandron ramondioides
 神橋
 旧日光市役所
 湯葉懐石与多呂(跡)
 ゆばむすびの「ふだらく」
〇ウスバカゲロウ Hagenomyia micans (平六トンネル)


 湯泉(ゆどころ)(ひと)
鬼怒川音頭
    作詞 野口 柾夫 氏
    作曲 杉山長谷夫 氏
 春は八汐よ 秋来りや紅葉
 錦々鬼怒川 しんしん
 しんとろ お湯が湧く
 サラサラ 瀬の瀬で 鳴く河鹿
 サラ鬼怒川 湯泉 コーロコロ


鬼怒太:定印鬼
 うでを組むのは鬼の定印。人と逆で、手のかわりに足で合掌、「幸」を祈る
     藤原郁三 2008年

 鬼怒川温泉神社
主祭神 大己貴命(おおあなむちのみこと)少名彦命(すくなひこののみこと)
例祭  四月吉日
敷地内 三百坪
本殿  流造銅板葺
由緒沿革 創立は不詳、古老の口伝によれば鬼怒川温泉宿地の温泉神社を現地に遷座。(温泉の守護神を祀る)
「湯楽の神は湯の神、温泉神(いでゆのかみ)」ともいい、温泉の霊力を神格化し崇敬され温泉神社が建立された。
祭神には医療・禁厭(きんよう)の神とされている大己貴命・少名彦命が祀らりている。
温泉には不病を癒す効能がある為、全国より多数の人々達が浴湯を楽しむ。
御神徳 家内安全、身体健全、勝運、
          温泉神社 宮司


鬼怒川温泉発祥の湯
  宝の湯
 古くは江戸時代より滝温泉の名称にてよばれ、一七五二年当時は日光の寺社領であったことから日光詣で帰りの諸大名や僧侶達のみが利用可能な温泉でありました。明治時代になり滝温泉が一般に開放され、やけどやキズの名湯としてこの山奥まで尋ねる人が絶えず、その後鬼怒川を間にして西岸と東岸に温泉を分かち、西を滝温泉、東を藤原温泉と呼び会津街道を行き交う人の旅人宿としてまた、里から山村に出入りする商人の宿としてますますその需要を深め、昭和二年頃より鬼怒川温泉として名称を改めました。その滝温泉から湧き出た温泉の一つ、名湯宝の湯は、明治八年五月官報に書きしるされ、湧き出す温度は現在でも五十三度前後を保ち、毎分約三百リットルもの豊富な湯量を誇る鬼怒川温泉発祥の湯と呼ばれています。
     鬼怒川プラザホテル


日光の歴史の1ページを彩った路面電車
 日光軌道線は、1910年(明治43)年、古河鉱業(現 古河電気工業)日光電気精銅所の貨物輸送を主目的として、日光電気軌道株式会社が停車場前~岩の鼻間で開業したもので、当初から、日光地域の観光輸送の一翼も担っていました。戦後の日本経済の復興とともに観光ブームが起こる中、戦禍を免れた日光軌道線は、1947(昭和22)年の合併により東武鉄道日光軌道線となり、東京方面から日光地域への観光客の円滑な輸送に、大きな役割を果たしてきました。
 この路面電車は、1953(昭和28)年から15年間にわたり、市民生活の足として、また国際観光地日光を訪れる観光客の貴重な輸送手段として、日光駅から馬返までの全線10.6kmの日光の街中を運行した東武100系電車10両のうちの1両です。
 その後、1965(昭和40)年の第一いろは坂に続く第二いろは坂寛政の影響を受けて旅客数や貨物数が激減し、1968(昭和43)年、東武鉄道日光軌道線はその58年間の歴史に幕を閉じましたが、このような歴史的背景を踏まえ、実際に走っていた車両を当時の姿に復元し、東武鉄道駅前広場に展示することで、後世に残すべき貴重な産業遺産として、また往時を偲ぶ観光試験として活用を図るものです。


東武鉄道日光軌道線 東武100系車両
規格: 全長12,350mm、全幅2,200mm、全高3,552mm
その他:車番109
定員: 96名


A Tram that Colores One Page of Nikko’s History
 The Nikko-Kido Line Tramway was opened in 1910 by Nikkio Electric Tram Co.,Ltd., between Teishaba-mae Station and Iwa-no-Hana Station, and was used mainly for freight transportation by the Furukawa Mining (currently Ferukawa Electric) Nikko Electric Copper Works. From its outset, it also played a role in transportation for tourism purposes in the Nikko region. In 1947, coinciding with the tourism boom which followed the recovery of the Japanese economy after the war, the Nikko-Kido Line Tramway merged with Tobu railway to become the Tobu Railway Nikko-Kido Line. It come to play a major role in transporting tourism from the Tokyo area to Nikko.
 For 15 years following its launch in 1953, this particular tram served to support the everyday lives of Nikko citizens, and provided a much-loved means of transport for tourism visiting Nikko from all around the world. It is one of 10Tobu 100-series trams that ran on the 10.6km tramway through Nikko City, from Nikko Station to Umagaeshi Station.
 However, as a result of the completion of the second Irohazaka Road in 1965, freight transportation and passenger numbers decreased dramatically, and 1968 the Tobu Railway Nikko-Kido Line closed its doors on a 58 year history. In order to preserve the much-loved industry for future generations, the tram has been restored to its original condition, and is now displayed in front of Tobu Nikko Station.


Tobu Railway Nikko-Kido Line Tobu 100-Series
Dimensions: Overall length – 12,350mm
Overall width – 2,200mm
Overall height – 3,552mm
Other: Car Number 109
Capacity: 96 people


  御案内
 その昔、男体山の噴火で生まれた中禅寺湖の湖水が大尻川となって流れだし、この大岩壁から一気に落下する壮大な雄姿が華厳滝です。
 高さ   九七.〇m
 落口巾  七.〇m
 滝壺深さ 四.五m
 落水量(毎秒〇.三トン)
 華厳滝を囲むこの大岩壁は上部から安山岩・集か塊岩・石英斑岩とで形成され中段の細い滝の数々は十二滝と呼ばれています。
 滝の流れはさらに観瀑台直下の涅槃滝にかかり大谷(だいや)川となって鬼怒川に合流しています。


旧日光市庁舎
特徴:木造4階建の和洋折衷の入母屋造りで、当時ととしては珍しい米松を使用し、周囲の一部には高さ8メートルの石垣を築造しています。
沿革:等建造物は、当時地元の名士であった小林庄一郎氏が、日光を訪ねる外国人向けのホテル経営を目指して建設した建物です。
建設着工の時期は明治38年(1905年)頃、当時で35万円(現在の10数億円相当)の金額と15年の歳月をかけ大正8年(1919年)にほぼ完成したといわれています。名称も徳川家ゆかりの土地柄にちなみ「大名ホテル」と決定していたとのことですが、ホテルとしての使用実績はほとんどありませんでした。
昭和18年(1943年)に古河電工日光精銅所へ売却され、工員アパートとして使用されました。戦後一時的に進駐軍の社交場になりましたが、昭和23年(1948年)に旧日光町役場本館として、昭和29年(1954年)の市制施行後は、旧日光市庁舎本館として使用されました。
平成18年(2006年)の市町村合併により、新日光市の日光総合支所(その後、名称変更により日光行政センター)となりましたが、平成30年(2018年)3月、新庁舎が日光行政センター機能が移転したことによりその役割を終えました。保存のため外観の修繕と周囲の園地化を行い、令和4年4月に旧日光市役所記念公園とてしオープンいたしました。
備考:【国登録有形文化財建造物】登録年月日:平成18年(2006年)3月2日
   【地域活性化に役立つ近代化産業遺産】認定年月日:平成19年(2007年)11月30日


Former Nikko City Hall
 A four-story building with a Japanese Western-style hip-and-gable roof. Made of Douglas fir, rare for the time period, and a stone wall measuring 8 meters high built in part of the surrounding area.
This building was created by Shoichiro Kobayashi, a notable figure at the time, with the aim of managing a hotel for foreigners visiting Nikko. It is said that construction started around 1905 (Meiji 38), nearing completion almost 15 years later in 1919 (Taisho 8). At that time, it cost the amount of 350,000 yen (today’s equivalent of 1 billion yen). Although the name “Daimyo Hotel” was decided in reference to the landingholding magnates (Daimyo) of the Tokugawa Clan, there was almost no record of its use aa a hotel.
 It was sold to Nikko Copper Works od Furukawa Electric in 1943 (Showa18) and utilized for workers’ housing. Although it temporarily served as a social gathering place for occupying forces after the war, it was then donated in 1948 (Showa 23) as the Town Hall to Former Nikko Town. After the city system was enforces in 1954 (Showa 29) it was used as Nikko City Hall. Due to the merger of cities, towns, and villages in 2006 (Heisei 18) it become the Nikko General Branch of present day Nikko City (later changing its name to the Nikko Administration Center). However, In March 2018 (Hesei 30), the Nikko Administrating Center was added to the new government building, thus ending its role due to its shift of purpose.
 The exterior was repaired for preservation and the surrounding area was converted into a park. In April 2022 (Reiwa 4), it was reopened as the Former Nikko City Hall Memorial Park.
Remarks: [National Registered Tangible Culture Property Building Registration Date: March 2nd, 2006 (Heisei 18)
     [Heritage of Industrial Modernization Serving ad Regional Revitalization] Certification Date; November 30th, 2007 (Heisei 19)


【文献】
西脇三郎・小池啓一 (2001) 軟体動物腹足類の新分類体系と上位分類群の和名, 群馬大学教育学部紀要 自然科学編, 49, 79-97, URL: https://gunma-u.repo.nii.ac.jp/record/4296/files/ares049079.pdf, 2024-08-13.
山中征夫 (2007) ヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica)-日本で唯一の陸生吸血ビル-, 森林科学, 51(10), 10.11519/jjsk.51.0_4343-51, Accessed: 2024-08-13.

朝のうちに金澤八景へ

 今日も朝からの強い陽射しで、暑い一日となりそうです。


【参考】
 キョウチクトウ Nerium oleander var. indicum
 シュロ Trachycarpus fortunei
 ブーゲンビレア Bougainvillea sp.
 ツクツクボウシ Meimuna opalifera
 ノウゼンカズラ Alstroemeria aurea
 ルリマツリ Plumbago auriculata
 柳町の母子像
 エノキグサ Acalypha australis

アマモ科の写真整理

 アマモ科(Zosteraceae)は、4属約20種で構成される海草で、温帯の浅海域を中心にして広く南北半球に分布しています(Coyer et al.,2013)。アマモ(Zostera marina)、スガモ(Phyllospadix iwatensis)などは、藻場の種たる構成種であり、多くの魚介類の産卵場、保育場となっています。さらに、広島湾での事例研究では、湾内のアマモ草体中の炭素量は164トンと概算されており(Tarawaki et al.,2002)、二酸化炭素固定に重要な役割を果たしていることからも注目されています。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【オモダカ目(Alismatales) アマモ科(Zosteraceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アマモ属 Zostera
アマモ アマモ
Zostera marina Eel Grass

【文献】
Coyer JA, Hoarau Kuo GJ, Tronholm A, Veldsink J and Olsen JL (2013) Phylogeny and temporal divergence of the seagrass family Zosteraceae using one nuclear and three chloroplast loci, System Biodivers, 11(3), 271-284, 10.1080/14772000.2013.821187, Accessed: 2023-08-10.
Terawaki T, Tamaki H, Nishimura M Yoshikawa L and Yoshihda G (2002) Total amount of varbon and nitrogen in Zostera marina in Hiroshima Bay, western Seto inland Sea, Japan, Bull Fish Res Agen, 4, 25-32, 10.1371/journal.pone.0150890, Accessed: 2023-08-10.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

ビブリス科の写真整理

 ビブリス科(Byblidaceae)は、ビブリス属(Byblis)のみで構成される外観はモウセンゴケに似た食虫植物で、APG体系ではシソ目に置かれています(APG-IV,2016)。かつてのビブリス科にはビブリス属に加えてロリドゥラ属(Roridula)も含められていましたが、遺伝子配列を用いた検討の結果、両属の間には目レベルを超える違いのあることが明らかとなり(Conran and Doeb,1993)、ロリドゥラ属は、ロリドゥラ科(Roridulaceae)として分離されツツジ目に移されています。ビブリス属は、オーストラリアとニューギニアに分布しており、かつて2種だったのに加えて今世紀に入ってからも新種記載が続いていて現在8種となっている様です(Katogi and Hoshi,2022)。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【ビブリス科周辺の系統推定図】(APG-IV,2016)

キク目群(Asterids)
│┌ミズキ目(Cornales)
││┌ツツジ目(Ericales)
└┤│└ロリドゥラ科(Roridulaceae)
 └┤┌キキョウ類(Campanulids)
  │││┌モチノキ目(Aquifoliales)
  ││└┤┌キク目(Asterales)
  ││ └┼エスカロニア目(Escalloniales)
  └┤  └┬ブルニア目(Bruniales)
   │   └┬セリ目(Apiales)
   │    └┬マツムシソウ目(Dipsacales)
   │     └パラクリフィア目(Paracryphiales)
   └シソ類(Lamiids)
    │   ┌ナス目(Solanales)
    │   ├シソ目(Lamiales)
    │  ┌┤└ビブリス科(Byblidaceae)
    │  │├ヴァーリア目(Vahliales)
    │ ┌┤├リンドウ目(Gentianales)
    │┌┤│└ムラサキ目(Boraginales)
    └┤│└ガリア目(Garryales)
     │└メッテニウサ目(Metteniusales)
     └クロタキカズラ目(Icacinales)

【シソ目(Lamiales) ビブリス科(Byblidaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
ビブリス属 Byblis
ビブリス・リニフロラ ビブリス・リニフロラ
Byblis liniflora Australian Rainbow Plant

【文献】
Conran JG and Doeb JM (1993) The phylogenetic relationships of Byblis and Roridula (Byblidaceae-Roridulaccae) inferred from partial 18S ribosomal RNA sequences, Plant Syst Evol, 188, 73-86, DOI; 10.1007/bf00937837
Katogi T and Hoshi Y (2022) Determination of Chromosome Numbers and Genome Sizes in Six Species of Byblis (Byblidaceae), Cytologia 87(3), 277–280, DOI: 10.1508/cytologia.87.277, Accessed: 2023-07-11.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

食虫植物展

 こども植物園で開催中の食虫植物展を見てきました。


【食虫植物展】


食虫植物とは
 昆虫などの小動物を捕らえて栄養にしている植物たちを食虫植物と呼びます。養分にとぼしい土地をすみかに選んだ食虫植物の祖先たちは、不足する栄養分を小動物から得ようと葉を捕虫するための道具に進化させ、さらには自ら消化液を出して獲物を消化吸収するようになりました。なお、消化液を出さずバクテリアの力を借りて分解されたものを栄養として吸収する種類を食虫植物に含める場合もあります。しかし、捕らえた獲物だけから栄養をたよっているわけではなく光合成をしてい自分でも栄養分を作り出しているので、万が一小動物を捕らえることができなくても枯れることはありません。
 南極大陸を除く世界各地の標高の低い土地から高い山まで見られ、湿原などの湿った土地や池・沼などに生えています。


ビブリスの仲間 -Byblis- ビブリス科
 オーストラリア原産で、現在8種に分類されています。リニフロラほか5種はオーストラリア北部やパプアニューギニアなどの熱帯地域、バガンテア、ラメラタは地中海性気候のオーストラリア南西部に離れて分布していて、同じ仲間でも生えている環境が全く違います。
 長い間、消化酵素が認められなかったため、食虫植物ではないという意見がありました。しかし最近になって、消化液を出しているということがわかり、食虫植物であることが確定しました。


モウセンゴケの仲間 -Drosera- モウセンゴケ科
 世界中(南極大陸以外)に分布がみられ、湿原などの湿った場所に生えています。日本には「モウセンゴケ」や「コモウセンゴケ」、地下に塊茎をつくる「シイモチソウ」など6種ほどが自生しています。葉にある腺毛の先から粘液を出し、腺毛や葉を動かし、獲物を包み込んで消化します。
 オーストラリア南西部には「ピグミーサンデュ」とよばれる非常にちいさなモンセンゴケの仲間が分布しており、これらはムカゴでも繁殖します。
 「もうせん(毛氈)」とは毛などで織った敷物のことで、日本ではおもに赤い毛氈(緋毛氈)が多く使われました。この植物の腺毛は陽がよく当たると真っ赤に色づくため「モウセンゴケ(毛氈苔)」と名づけられました。


タヌキモとミミカキグサの仲間 -Utricularia- タヌキモ科
 世界中(南極大陸以外)に分布がみられ、池沼や湿地に生育しています。この仲間には根がありません。タヌキモ類とミミカキグサ類は同じタヌキモ属に含まれますが、タヌキモの仲間はおもに水中に浮かんで生活しており、一方のミミカキグサの仲間は湿原の泥の中や、森林の苔と岩のあいだ、またパイナップル科の植物の葉のあいだにたまった水の中など生育場所はさまざまで、タヌキモ類とちがい水上に葉を出します。いずれも小さな生き物を吸い込んで捕らえます。日本には「タヌキモ」や「ミミカキグサ」、日本でしか見られない「フサタヌキモ」、世界で最も小さい食虫植物といわれる「ヒメミミカキグサなとが自生しています。フサフサと水中にただようようすをタヌキのしっぽにたとえて「タヌキモ」と呼びます。


ハエトリグサ –Dionaea muscipula- モウセンゴケ科 (ハエトリソウ、ハエジゴク)
 欧米では、葉のようすを女神のまつ毛にたとえて、ビーナス・フライトラップ(女神のハエ取り器)ともよびます。閉じ合わさる形をした、捕虫葉の内側には獲物の動きを感じとる数本の感覚毛があり、獲物が葉の中に入りその感覚毛にふれると0.5秒というすばやい速さで葉が閉じ合わさるしくみになっています。そして閉じた葉はさらに中の獲物をしめつけ押しつぶすと、消化液を出して消化吸収します。
 アメリカ合衆国のノースカロライナ州とサウスカロライナ州のごく限られた地域の湿原に生育していて、現在では国によって厳重に保護されています。


プロッキニアの仲間 -Brocchinia- パイナップル科
 私たちが食用にするパイナップルの仲間で、ヘリアンフォラと同じく南アメリカ北部のギアナ高地が原産です。葉の構造は単純で、葉と葉の間にたまった甘い香りを発する水(強い酸性)の中に落ちた昆虫などの小さな生き物を、バクテリアに分解させて養分を吸収します。レドゥクタ(B. reducuta)とヘクティオイデス(B. hechtioides)、タテイ(B. tatei)の3種が食虫植物として知られています。


ヘイシソウの仲間 -Sarracenia- サラセニア科
 北アメリカのおもに大西洋沿岸をふるさととする植物です。一般的には学名の「サラセニア」で呼ばれ、8種(分類によっては11種)ほどに分類されています。1日中陽の当たる湿った土地にしっかりと根を伸ばして生育しており、筒状になったカラフルな葉の中に消化液が溜まっていてい、さそい込まれて中に落ちた虫などをとらえ栄養にしています。筒の内側には下を向いた毛がたくさん生え、落ち込んだ獲物は上がることができず、動くほど中へ中へと入りこんでしまいます。春、新しい葉が出る前後に赤色やクリーム色のユニークな形の花を咲かせます。また冬の間は冬芽を作って休眠します。


【その他】


熱帯性スイレン(昼咲き) Tropical Dat Blooming Water Lilies
 東南アジアからアフリカにかての、おもに熱帯域に分布するスイレンの仲間(スイレン科 スイレン属)、また、それらを元に交配して誕生した園芸品種を「熱帯性スイレン」または「熱帯スイレン」と呼びます。青~紫、桃~紅、白、黄といった豊富な花色を楽しむことができることが、大きな魅力です。高水温でよく成長し花を咲かせますから、日当たりさえよければ、年々暑さが厳しくなる日本の夏には非常に適した園芸植物といえるでしょう。
 育種の中心は、アメリカやタイで、国際的な品評会も行われています。近年、温帯性スイレンとの亜種間交配も次々と発表されており、今後が楽しみです。なお、白色や紅色の花を咲かせる夜咲きの種類もあります。


二千年前の古代ハス大賀ハス
 一九五一(昭和二六)年に植物学者の大賀一郎博士たちは千葉県検見川の東京大学厚生農場内(現・東京大学総合運動公園)の泥炭層を掘り進め、地下約六メートルの青泥層から三月三〇日に種子一粒を発見しました。そのあと四月六日にニ粒の種子を発見し、同年五月六日に大賀博士宅(東京都府中市)で発芽処理が行われ、発芽した実生苗のうちの一株だけがその後順調に成長しました。一九五二年(昭和二七)年七月十八日にはじめて開花し、一九五四(昭和二九)年三月三十一日付で千葉県の天然記念物「検見川の大賀蓮」として指定されています。大賀ハスは他のハスとくらべ性質がやや弱く、特に容器栽培ではあまり花を咲かせません。
 なお、ハスの花は早朝から開き昼には閉じます。そして開きはじめてから四日目に散ります。
 大賀ハスのおもな特徴
■葉の表面はすべすべしており、ざらつかない。
■花弁の条線がはっきりしていない。
現在、各地で大賀ハスとして公開されているもののなかには、大賀ハスとは明らかに違うとおもわれる個体が多く見受けられます。たとえ大賀ハスから採れた種子から成長した株でも大賀ハスとは呼べません。なお、この株は、千葉県農業試験場より当園に譲渡された正真正銘の大賀ハスです。
     一部参照:千葉県ホームページ「大賀ハス何でも情報館


【参考】○は本日初撮影種、◎は科としても初撮影
ビブリス科(Byblidaceae)
◎ビブリス・リニフロラ Byblis liniflora


タヌキモ科(Lentibulariaceae)
○ピンギクラ・プリムラフロラ Pinguicula primuliflora
○ウトリクラリア・ディコトマ Utricularia dichotoma
○ミミカキグサ Utricularia bifida
○イチョウバミミカキグサ Utricularia livida


モウセンゴケ科(Droseraceae)
 ヤツマタモウセンゴケ Drosera binata var. multida f. extrema
 トウカイモウセンゴケ Drosera tokaiensis subsp. tokaiensis
○コモウセンゴケ Drosera spathulata
○イトバモウセンゴケ Drosera filiformis
○ツルギバモウセンゴケ Drosera adelae
 アフリカナガバノモウセンゴケ Drosera capensis
○ドロセラ・マダガスカリエンシス Drosera madagascariensis
 ハエトリグサ Dionaea muscipula


ウツボカズラ科(Nepenthaceae)
○ネペンシス ‘レグレヤナ’ Nepenthes X ‘Wrigleyana’
 (ナンヨウウツボカズラ X フッカーウツボ(ウツボカズラ x ツボウツボカズラ))
 (N. mirabilis X N. X Hookeriana(N. rafflesiana X N. ampullaria)
○ネペンシス・グラキリフロラ Nepenthes graciliflora Syn. N. alata
○ネペンシス ‘ミクスタ’ Nepenthes X ‘Mixta’
 (N. northiana X N. maxima)
○ネペンシス ‘インターメディア’ Nepenthes X ‘Intermedia’
 イビツウツボカズラ Nepenthes ventiricosa
○ネペンシス・マダガスカリエンシス Nepenthes madagascariensis
○ネペンシス・アルボマルギナータ Nepenthes albomarginata


パイナップル科(Bromeliaceae)
 ブロッキニア・レドゥクタ Brocchinia reducuta


サラセニア科(Sarraceniaceae)
○ウスギヘイシソウ Sarracenia alata
 シラフヘイシソウ Sarracenia leucophylla
○モミジヘイシソウ Sarracenia rubra subsp. gulfensis
○コヘイシソウ Sarracenia minor
○ヒメヘイシソウ Sarracenia psittacina
○サラセニア ‘スカーレット・ベル’ Sarracenia X ‘Scarlet Bell’
○ムラサキヘイシソウ Sarracenia purpurea Subsp. venosa


 ゼニゴケ(雌器托) Marchantia polymorpha
 ゼニゴケ(雄器托) Marchantia polymorpha
 横浜南キリスト教会:六ツ川2-1-14
 ヒャクニチソウ Zinnia elegans
 ミンミンゼミ Hyalessa maculaticollis
 スイレン ‘スター・オブ・ザンジバル’ Nymphaea X ‘Star of Zanzibar’ (N. ‘Mornig Star’ X N. ‘Purple Zanxibar’)
 スイレン ‘ペンシルヴァニア’ Nymphaea ‘Pennsylvania’ (N. caerulea X N. nouehali var. znzibariensis)
 ホシザキスイレン Nymphaea nouchali var. zanzibariensis Syn, Nymphaea colorata
 ハス Nelumbo nucifera
○オオアカバナ Epilobium hirsutum
 ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima
○ウバタマムシ Chalcophora japonica
◎オオゴキブリ Panesthia angustipennis spadica
◎クロゴキブリ Periplaneta fuliginosa
 ヒオウギ Iris domestica
 オミナエシ Patrinia scabiosifolia
 ミズヒキ Persicaria filiformis
 ヤブミョウガ Pollia japonica
 ハンゲショウ Saururus chinensis
○メハジキ Leonurus japonicus
○コノシメトンボ Sympetrum baccha matutinum
 アイ Persicaria tinctoria
○ウツボグサ Prunella vulgaris subsp. Asiatica
 カラタチ Poncirus trifoliata
 カジノキ Broussonetia papyrifera
 アズキ Vigna angularis
〇カワラケツメイ Chamaecrista nomame
 ケチョウセンアサガオ Datula inoxia
○アジアワタ Gossypium arboreum var. obtusidolium
 キンカン Citrus japonica Syn. Fortunella margarita

植物界の系統概要と当ブログでの収録数

 以前に作図した系統図より、単純化されて緑藻類の基部が分かりやすくなった現在の植物界全体の系統図(Leebens-Mack et al.,2019)を見つけましたので、和訳再録しておきます。併せて、現時点での当ブログでの収録種数を、維管束植物について数えてみました。一部亜種を含む数なので、記載種約30万に対する当ブログでの収録種数は約2000種(0.7%)といったところです。
 維管束植物の分類【陸上植物小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【植物界の系統推定図】(Leebens-Mack et al.,2019)

            ┌被子植物(Angiospermae)
            ││             ┌コア・バラ目群(Core rosids)
            ││            ┌┴ユキノシタ目(Saxifragales)
            ││           ┌┴ブドウ目(Vitales)      │
            ││          ┌┴ビャクダン目(Santalales)    │
            ││         ┌┤ ┌キク目群(Asterids)      │
            ││         │└┬┴ベルベリドプシス目      ┝真正双子葉類 
            ││         │ │  (Berberidopsidales)    │ (Eudicots)
            ││         │ └ナデシコ目(Caryophyllales)   │
            ││        ┌┴グンネラ/ビワモドキ        │
            ││        │  (Gunnera and Dillenia)      │
            ││       ┌┴ツゲ/ヤマグルマ           │
            ││       │  (Buxus and Trochodendron)     │
            ││      ┌┴ヤマモガシ目(Proteales)        │
            ││     ┌┴キンポウゲ類(Ranunculids)        ┘
            ││    ┌┴マツモ(Ceratophyllum demersum)
            ││   ┌┴モクレン目群/センリョウ目(Magnoliids and Chloranthales)
            ││   │   ┌ユリ目/キジカクシ目     ┐
            ││   │   │ (Liliales and Asparagales) │
            ││   │  ┌┴ツユクサ目群(Commelinids)  │
            ││  ┌┤ ┌┴ヤマノイモ目/タコノキ目    ┝単子葉類
            ││  ││ │  (Dioscoreales and Pandanales)│(Monocots)
            ││  │└┬┴オモダカ目(Alismatales)     │
            ││ ┌┤ └ショウブ(Acorus americanus)    ┘
            ││┌┤└アウストロバイレヤ目(Austrobaileyales)
           ┌┤└┤└スイレン目(Nymphaeales)          ┝ANA側系統群
           ││ └アンボレラ属(Amborella)          ┘(ANA grade)
           │└裸子植物(Gymnosperms)
           │ │   ┌ヒノキ目(Cupressales)
          ┌┤ │  ┌┴ナンヨウスギ目(Araucariales)
          ││ │ ┌┴マツ科(Pinaceae)
         ┌┤│ │┌┴グネツム目(Gnetales)
         │││ └┴ソテツ類/イチョウ(Cycads and Ginkgo)
         ││└大葉シダ類(Ferns)
        ┌┤│ │  ┌ウラボシ亜綱(Polypodiidae)
        │││ │ ┌┴リュウビンタイ亜綱(Marattiidae)
        │││ │┌┴ハナヤスリ亜綱(Ophioglossidae)
        │││ └┴トクサ亜綱(Equisetidae)
        ││└小葉植物(Lycophytes)
        │└コケ植物(Bryophytes)
        │ │ ┌蘚類(Mosses)
       ┌┤ │┌┴苔類(Liverworts)
      ┌┤│ └┴ツノゴケ類(Hornworts)
      ││└接合藻綱(Zygnematophyceae)       ┐
     ┌┤└コレオケーテ藻綱(Coleochaetales)     │
    ┌┤└シャジクモ属(Chara)             ┝ストレプト藻側系統群
    │└クレブソルミジウム目(Klebsormidiales)     │(Streptophyte algae grade)
   ┌┤ ┌スピロテニア・ミヌタ(Spirotaenia minuta)  │
   │└┬┴クロロキブス・アトモフィティクス      │
   │ │ (Chlorokybus atmophyticus)         │
  ┌┤ └メソスティグマ・ビリデ(Mesostigma viride)   ┘
 ┌┤└┬プラシノ藻目(Prasinococcales)          ┐緑藻側系統群
┌┤│ └緑藻植物(Chlorophyta)              ┴(Chlorophyte algae grade)
┤│└灰色植物(Glaucophytes)
│└紅色植物(Rhodophytes)
└外群(Outgroup)


注:側系統群(grade)は、現在の知見では多系と考えられていて従来体系との繋がりを確保するために階級を設定せずに仮置きされているグループで『段階群』の訳語もあります。一方、クレード(clade)は単系統であることは確認されていても階級が定められていないグループで訳語は『分岐群』です。グレードをクレードに置き換えていくのが、現在の分子系統整理の目的の一つとなっており、近年ではかつての『門』『綱』などの分類階級はあまり重視されなくなりつつあるようです。例えば、被子植物の分類体系であるAPG(Angiosperm Phylogeny Group)分類では、綱を設定せずに綱相当以上の高位群はすべてクレードまたはグレードとして扱っています。


【維管束植物の収録割合】2024-11-10時点

分類群(Taxon)
(Order)

(Family)

(Genus)
種(亜種)
(Species)
維管束植物計 70 (82%) 234 (49%) 1134 (8.3%) 2220 (0.72%)
被子植物 50 (78%) 197 (47%) 1048 (8.0%) 2079 (0.70%)
裸子植物 7 (100%) 12 (100%) 40 (48%) 68 (6.3%)
大葉シダ 11 (100%) 23 (48%) 43 (14%) 64 (0.61%)
小葉植物 2 (67%) 2 (50%) 3 (17%) 9 (0.67%)

カッコ内の%値は、全記載数(推定値)に対する割合です。


【文献】
One Thousand Plant Transcriptomes Initiative (Leebens-Mack JH, Barker MS, Carpenter EJ, Deyholos MK, Gitzendanner MA, Graham SW, Grosse I, Li Z, Melkonian M, Mirarab S, Porsch M, Quint M, Rensing SA, Soltis DE, Soltis PS, Dennis W. Stevenson DW, Ullrich KK, Wickett NJ, DeGironimo L, Edger PP, Jordon-Thaden IE, Joya S, Liu T, Melkonian B, Miles NW, Pokorny L, Quigley C, Thomas P, Villarreal JC, Augustin MM, Barrett MD, Baucom RS, Beerling DJ, Benstein RM, Biffin E, Brockington SF, Burge DO, Burris JN, Burris KP, Burtet-Sarramegna V, Caicedo AL, Cannon SB, Çebi Z, Chang Y, Chater C, Cheeseman JM, Chen T, Clarke ND, Clayton H, Covshoff S, Crandall-Stotler BJ, Cross H, dePamphilis CW, Der JP, Determann R, Dickson RC, Stilio Shona Ellis S, Fast E, Nicole Feja N, Field KJ, Filatov DA, Finnegan PM, Floyd SK, Fogliani B, García N, Gâteblé G, Godden GT, Goh F(QU), Greiner S, Harkess A, Heaney JM, Helliwell KE, Heyduk K, Hibberd JM, Hodel RGJ, Hollingsworth PM, Johnson MTJ, Jost R, Joyce B, Kapralov MV, Kazamia E, Kellogg EA, Koch MA, Konrat MV, Könyves K, Kutchan TM, Lam V, Larsson A, Leitch AR, Lentz R, Li F-W, Lowe AJ, Ludwig M, Manos PS, Mavrodiev E, McCormick MK, McKain M, McLellan T, McNeal JR, Miller RE, Nelson MN, Peng Y, Ralph P, Real D, Riggins CW, Ruhsam M, Sage RF, Sakai AK, Scascitella M, Schilling EE, Schlösser E-M, Sederoff H, Servick S, Sessa EB, Shaw AJ, Shaw SW, Sigel EM, Skema C, Smith AG, Smithson A, Stewart JrCN, Stinchcombe JR, Szövényi P, Tate JA, Tiebel H, Trapnell D, Villegente M, Wang C-N, Weller SG, Wenzel M, Weststrand S, Westwood JH, Whigham DF, Wu S, Wulff AS, Yang Y, Zhu D, Zhuang C, Zuidof J, Chase MW, Pires JC, Rothfels CJ, Yu J, Chen C, Chen L, Cheng S, Li J, Li R, Li X, Lu H, Ou Y, Sun X, Tan X, Tang J, Tian Z, Wang F, Wang J, Wei X, Xu X, Yan Z, Yang F, Zhong X, Zhou F, Zhu Y, Zhang Y, Ayyampalayam S, Barkman TJ, Nguyen N-P, Matasci N, Nelson DR, Sayyari E, Wafula EK, Walls RL, Warnow T, An H, Arrigo N, Baniaga AE, Sally Galuska S, Jorgensen SA, Kidder TI, Kong H, Lu-Irving P, Marx HE, Qi X, Reardon CR, Sutherland BL, Tiley GP, Welles SR, Yu R, Zhan S, Gramzow L, Theißen G and Wong GK-S (2019) One thousand plant transcriptomes and the phylogenomics of green plants, Nature, 574(31), 679-685, DOI: 10.1038/s41586-019-1693-2, Accessed: 2024-07-29.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-07.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: 10.1111/jse.12229, Accessed: 2023-11-19.
Christenhusz MJM and Byng JW (2016) The number of known plants species in the world and its annual increase, Phytotaxa. 261(3), 201–217. DOI: 10.11646/phytotaxa.261.3.1, Accessed: 2023-10-05.

針葉樹と広葉樹

 『針葉樹→裸子植物』『広葉樹→被子植物』と理解されていることが普通のようですし、特に年配の方では『そう習った』と記憶している方も多いと思います。広辞苑(1983)でも『針葉樹:裸子植物の一群』と定義されているのですが、何事にも例外はあるもので、針葉(needle leaf)の被子植物、広葉(broad leaf)の裸子植物も存在しています。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【文献】
 新村出 (1983) 広辞苑第三版、p1260、岩波書店、東京.

緑藻植物の分類

 これまでの定義による緑藻類は多系であることが微細形態や遺伝子の解析により明らかとなったため、車軸藻を陸上植物に近い別のクレードとして定義することを初めとして、分類体系は大きく組み替えられています。下図は葉緑体の遺伝子配列に基づく系統推定の一例です。この図では接合藻が描かれていないのですが、最近の解析結果によれば接合藻はプラシノ藻よりさらに陸上植物に近い位置に配置されるという報告(Gontcharov,2008; 鈴木,2021)もあります。接合藻が現在仮置きされているストレプト藻が側系統であることは間違いない様ですので、近い将来、門を越えての移動があると思われます。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【緑藻植物周辺の系統図】(Fang et al.,2017)

┌車軸藻植物と陸上植物(Charophyte Green Algae and Land Plants)

緑藻植物門(Chlorophyta)
 └┬─────プラシノ藻綱(Prasinophytes)
  └コア緑藻植物門(Core Chlorophyta)
   │┌───ペディノ藻綱(Pedinophyceae)
   └┼───クロロデンドロン藻綱(Chlorodendrophyceae)
    └┬────クロレラ目(Chlorellales)          ┬トレボウクシア藻綱
     └┬─コア・トレボウクシア藻綱(Core Trebouxiophyceae) ┘(Trebouxiophyceae)
      └┬アオサ藻綱(Ulvophyceae)
       └緑藻綱(Chlorophyceae)

 再編後も残されている狭義の緑藻綱は、恐らく単系になったと思われますが、下位分類についてはブートストラップ法による再現性が不十分で、未だ定まっていないようです(Müller et al.,2004)。


【緑藻植物門(Chlorophyta) アオサ藻綱(Ulvophyceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アオサ目(Ulvales) アオサ科(Ulvaceae) アオサ属 Ulva
アナアオサ アナアオサ
Ulva australis Sea Lettuce
スミレモ目(Trentepohliales) スミレモ科(Trentepohliaceae) スミレモ属 Trentepohlia
スミレモ スミレモ
Trentepohlia aurea Ulvophytes

【ストレプト植物門(Streptophyta) 接合藻綱(Zygnematophyceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アオミドロ目(Spirogyrales) アオミドロ科(Spirogyraceae) アオミドロ属 Spirogyra
アオミドロ アオミドロ
Spirogyra sp. Pond Scum

【文献】
Fang L, Leliaert F, Zhang X-H, Penny D and Zhong B-J (2017) Evolution of the Chlorophyta: Insights from chloroplast phylogenomic analyses, J Syst Evol, 55(4), 322-332, DOI: 10.1111/jse.12248, Accessed: 2024-07-27.
Gontcharov AA (2008) Phylogeny and classification of Zygnematophyceae (Streptophyta): current state of affairs, Fottea, 8(2), 87–104, DOI: 10.5507/fot.2008.004, Accessed: 2024-07-28.
鈴木重勝 (2021) 比較ゲノム解析より明らかにされた緑色植物の初期進化, Jpn. J. Phycol. (Sôrui) 69: 86–94, URL: http://sourui.org/publications/sorui/list/Sourui_PDF/Sourui69(2)_86.pdf, Accessed: 2024-07-28.
Müller T, Rahmann S, Dandekar T and Wolf M (2004) Accurate and robust phylogeny estimation based on profile distances: a study of the Chlorophyceae (Chlorophyta), BMC Evol Biol, 4:20, DOI: 10.1186/1471-2148-4-20, Accessed: 2024-09-15.