植物」カテゴリーアーカイブ

海の公園から泥牛庵へ

 何か藻類の写真が撮れればと思い、海の公園を尋ねました。

 【生物の系統概要】【真核生物】【シダ類】【裸子植物】【被子植物】【菌類】【哺乳類】【鳥類】【昆虫類】 【節足動物】 【軟体動物】【後生動物


【参考】○:本日、初撮影種
 センニンソウ Clematis terniflora
 メナダ Planiliza haematocheilus
 デュランタ Duranta erecta
 エノコログサ Setaria viridis
 ノウゼンカズラ Alstroemeria aurea
○ウミニナ Batillaria multiformis
○イワフジツボ Chthamalus challengeri
 マガキ Crassostrea gigas
 未来へのタマゴ(作者:日本造形)
  これは、宇宙・生命・自然など、あらゆる意味を秘めている。「さあ、何が生まれてくるのかな?」次代を担うタマゴ達へ贈ります。 平成5年3月
 コノテガシワ Platycladus orientalis
 ムラサキナツフジ Callerya reticulata
○カワラヒワ Chloris sinica
 カリン Pseudocydonia sinensis
 レモン Citrus limon
○トチカガミ Hydrocharis dubia
○アズマザサ Sasaella ramosa
 アレチヌスビトハギ Desmodium paniculatum
 メリケンカルカヤ Andropogon virginicus
 マテバシイ Lithocarpus edulis
○アナアオサ Ulva australis
 ハマボウ Hibiscus hamabo
 カランコエ Kalanchoe blossfeldiana
 ゴシキトウガラシ Capsicum annuum
 サンショウモ Salvinia natans
 クルクマ・ペティオラタ Curcuma petiolata
 クルクマ・シャローム Curcuma alismatifolia
 キムネクマバチ Xylocopa appendiculata
 ネズミモチ Ligustrum japonicum
 ヤマアジサイ ‘光月’ Hydrangea serrata ‘Kogetau’
  一重額咲き。鋸葉があり、弁は重なる。葉が乳白色になる独特の品種。新葉は緑色だが、その後六月頃から乳白色に変化し、十一月頃まで葉色を楽しめる。
 瀬戸神社のカヤ Torreya nucifera:横浜市指定名木古木 No.48137
 吼月山(くげつさん)泥牛庵:金沢区瀬戸11-1
 石塔群(庚申、馬頭観音、青面金剛、猿田彦):
 ハス Nelumbo nucifera
 ウキクサ Spirodela polyrhiza
 スイレン Nymphaea sp.
○クロモ Hydrilla verticillata
○ラセンイ Juncus effusus ‘Spiralis’
 エノキグサ Acalypha australis
○セスジスズメ Theretra oldenlandiae
 カラムシ Boehmeria nivea
 アオツヅラフジ Cocculus trilobus
 タマシダ Nephrolepis cordifolia (の貯水球)
 メドハギ Lespedeza cuneata


【文献】
加戸隆介 (2023) 日本沿岸の人工構造物に付着するフジツボ類の形態的特徴と分布(前編), 海生研ニュース, (160), 4-7, URL: https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news160kaisetu.pdf, Accessed: 2024-09-14.
加戸隆介 (2024) 日本沿岸の人工構造物に付着するフジツボ類の形態的特徴と分布(後編), 海生研ニュース, (161), 5-8, URL: https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news161kaisetu.pdf, Accessed: 2024-09-14.
金末姫・山口寿之 (1996) イワフジツボおよびオオイワフジツボ(蔓脚亜綱,完胸目,イワフジツボ科)の幼生発生と類縁関係, Marine Fouling, 12(2), 1-23, DOI: 10.4282/sosj1979.12.2_1, Accessed: 2024-09-14.


  泥牛庵縁起
開基 北條高時(鎌倉幕府第十四代執権)
開山 南山士雲禅師(鎌倉円覚寺第十一世)
開創 正中二年(一三二五年)
移転 元禄年間
 米倉家柳沢吉保六男を養子に迎え皆川藩より転封、金沢六浦藩陣屋創設に当たり現在の京急金沢駅裏谷戸の旧寺領より現在地へ移転となる。
本尊 聖観世音菩薩(北條高時公護守仏)
脇仏 子育て地蔵尊(元六浦地蔵堂本尊)下野国小山家遺児供養仏


  泥牛庵庚申塔
道教由来の更新思想により庚申塔は江戸時代街道の整備と共に全国の寺社の辻付近に多く建てられるようになりました。通行人の道中安全や疫病、災害を防ぐ意味と、また六十日に一度訪れる庚申の日に体内の三尸の虫が天帝に人間の罪悪事を告げ口に行くことを阻止するために一晩中皆衆が集まり夜を明かした場所にもなりました。当庵の庚申塔は豊れ九年間に据えられたもので正面左から三猿像、馬頭観音塔、青面金剛塔、猿田彦神塔の順に並んでいます。

寄生虫館(目黒)と『きらら舎』(東十条)

 今日は、午前中に目黒寄生虫館に寄った後、注文品を受け取りにきらら舎へ行ってきました。


【参考】〇は初撮影種


 大鳥神社
 イチョウ Ginkgo biloba (大鳥神社神木)
 切支丹灯籠
 オニドコロ Dioscorea tokoro
 コムラサキ Callicarpa dichotoma
〇ホザキナナカマド Sorbaria sorbifolia
〇クジラヒジキムシ Pennella balaenopterae
 ヒトノミ Pulex irritans ♂ (模型:目黒寄生虫館)


 初音ミク(ポカリスエット・コラボ)


 (あずま)軒:残念ながら、店主の足の具合がよくないとのことで閉店中でした。
〇オオクサキビ Panicum dichotomiflorum
 きらら舎
 柏木神社
 ムベ Stauntonia hexaphylla
 アメリカノウゼンカズラ Campsis radicans
 オジギソウ Mimosa pudica
〇リュウキュウアオイ Corculum cardissa (軟体動物門二枚貝綱ザルガイ目)
〇フレヌラソデガイ Frenulina sanguinolenta ビサヤ諸島ボホール島周辺海域産(腕足動物門)
〇トリティシーテス属の一種(フズリナの化石) Triticites sp. (有孔虫門)
 トリティシーテス属は、古生代カシモビアン(Kasimovian):3億700万年前から3億370万年前に生息していた(Ueno,2021)有孔虫で、写真の標本は米国ネブラスカ州で採集されたものをきらら舎でお譲りいただきました。
〇ゼニイシ Marginopora sp.
〇太陽の砂:カルカリナ属の一種の殻 Calcarina sp. 星の砂(ホシズナの殻) Baculogypsina sphaerulata
 形が記憶と異なるので念のため調べたところ、ホシズナとは別種でした。ただし、タイヨウノスナとホシズナの殻を合わせて星の砂と呼ぶこともあるそうですので、一般名としては『星の砂』でも間違いではありません。こちらもきらら舎で購入。


  大鳥神社
     下目黒3-1-2
 この神社は、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東征にゆかりがあるといわれるこの地に、大同元年(806)創建された区内最古の神社です。江戸地図として古いものとされる「長禄江戸図」に書かれている古江戸9社の1つで、目黒村の総鎮守でもありました。祭神は日本武尊を主神とし国常立尊(くにとこたちのみこと)弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと)を合祀しています。
 毎年11月に開かれる酉の市は、東京では古いものの1つといわれており、現在も都内では有数の賑いをみせています。この一のいわれは日本書紀に「十月己酉(つちのととり)に日本武尊を遣わして、熊襲を撃つ」とあり、尊の出発日が酉の日であったことから、おこったと伝えられています。
 毎年9月の例大祭には、目黒通りに大小30余基の町みこしが勢揃いします。それとともに社殿では「大々(だいだい)神楽・剣の舞」が奉納されます。11月の酉の市には、「大々神楽・熊手の舞」が神前で舞われます。
 境内には、東京都の天然記念物に指定された「オオアカガシ」の老木や三猿だけの延宝塔、元禄時代(1688~1703)や宝永年間(1704~1710)の屋根付庚申塔など5基の石造物もあります。また、俗に切支丹灯籠といわれる「織部式灯籠」や、天保6年(1835)の酉の市に神楽を奉納した記念碑などもあります。
     平成7年3月
     目黒区教育委員会


東京都指定天然記念物
 大鳥神社のオオアカガシ
    所在地  目黒区下目黒三の一のニ
    指定   昭和三八年三月一九日
    指定解除 平成二四年三月二一日
 大鳥神社境内に生育していたオオアカガシは、基本種のアカガシに比べ非常に大きく、薄い葉を茂らせ、また、雄花穂の花軸はアカガシより太く長く、苞や果実も大きいという特徴からアカガシの変種とみなされました。新変種名の基準となった本樹は、学術上貴重な樹木として、昭和三八年に東京都の天然記念物に指定されました。本樹の枝葉は、現在でもオオウカガシCtclebalnopsis scuta (Thimb.) Oerst. var. megaphylla Hayashi var. nov. のタイプ標本として、国立科学博物館筑波実験植物園に保管されています。
 指定時に樹高約一六メートル、幹周り一・六メートルあった本樹は、生育環境の変化等により昭和五〇年代初め頃から樹勢の衰退がはじまり、数回にわたる樹勢回復事業も実施されましたが、平成一四年枯死が確認されました。またも後継樹育成のため挿し木により増殖も試みましたが、成功せず、平成二四年に指定解除されました。
 ここに説明版を設置し、都内でも学術上貴重な名木が存在したことを後世に伝えるものです。
 平成二四年三月 建設 東京都教育委員会


「御神木」
 年代不詳の昔から武蔵野の名木と知られ昭和5年、熱心な町民運動の末、境内に献木される。昭和20年の空襲に見舞われるも復活した奇跡の大銀杏である。


  大鳥神社御由緒
御祭神 主祭神 日本武尊(やまとたけるのみこと) 景行(けいこう)天皇の皇子で、熊襲討伐、東国の蝦夷を平定
    相殿神(あいどののかみ)
        国常立尊(くにとこたちのみこと) 日本の国開きの神様
        弟橘姫命(おとたちばなひめのみこと) 日本武尊の妃
  御由緒  例祭 九月九日に近い日曜日
 景行天皇の御代(七一~一三〇)当所に国常立尊を祀った社がありました。景行天皇の皇子である日本武尊は、天皇の命令で熊襲を討ち、その後、東国の蝦夷を平定しました。この東夷征伐の折当社に立寄られ、東夷を平定する祈願をなされ、また部下の「目の病」の治らんことをお願いされたところ、東夷を平定し、部下の目の病も治ったことから、当社を盲神(めくらがみ)と称え、手近に持っておられた十握剣(とつかのつるぎ)を当社に献って神恩に感謝されました。この剣が天武雲剣(あめのたけぐものつるぎ)で、現在当社の社宝となっています。
 東征の後、近江伊吹山の妖賊を討伐になられましたが、病を得て薧ぜられました。日本書紀に「尊の亡骸を伊勢の能褒野(のばの)に葬したところ、その陵より尊の霊が大きな白鳥となられ倭国を指して飛ばれ、倭の琴弾原(ことひきのはら)、河内の舊市邑(ふるいちむら)に留まり、その後、天に上られた」とあり、このことからも日本武尊を鳥明神と申す訳です。当社の社伝によると「尊の霊が当地に白鳥としてあらわれ給い、鳥明神として祀る」とあり、大同元年(八〇六)社殿が造営されました。当社の社紋が鳳の紋を用いているのはこのためです。江戸図として最も古いとされる長禄の江戸図(室町時代)に当社は鳥明神として記載されております。
  酉の市(八つ頭と熊手の由来)
 当社の酉の市は都内でも古く、江戸時代に始まります。酉の市が毎年十一月の「酉の日」に行われるのは、尊の熊襲討伐の出発日が酉の日だった為その日を祭日としました。酉の日の当日、御神前に幣帛として「八つ頭」と「熊手」を奉献します。「八つ頭」は尊が東征の時、八族の各頭目を平定された御功業を具象化したもので、「熊手」は尊が焼津で焼討ちに遭われた時、薙ぎ倒した草を当時武器であった熊手を持ってかき集めさせ、その火を防ぎ、向火(むかえび)をもって賊を平らげ、九死に一生を得た事を偲び奉るためのものです。ここから古来より、「八つ頭」は人の上に立つように出世できるという縁起と結びつき、「熊手」は家内に宝を掻き込むという意味で縁起物として広く信仰を集めました。大鳥神社の社名「おおとり」は、「大取」に通ずる為、宝物を大きく取り込むという商売繁盛開運招福の神様として、多くの人達の信仰を集めております。また、酉の市当日はね社殿において、この縁起のもとになる「開運熊手守」が授与されます。


  切支丹灯籠
 かつて肥前島原藩主松平主殿頭(まつだいらとのものかみ)の下屋敷にあったものと伝えられる。後に境内へ移されたもの。竿石の下部に刻まれた像には足の表現がなく、イエス像を仏像形式に偽装した珍しい型の織部灯籠である。キリシタンへの弾圧と迫害が厳しくなった寛永・正保・慶安の頃から江戸中期にかけて作られたものと考えられる。他の宗教からも大鳥神社は、崇敬の念を持たれていたという事がわかる。


  柏木神社の由緒
 柏木神社は、元享年間(西暦一三二一~一三二四年)に現神谷三丁目の荒川の畔に、伊邪那美命を御祭神とする神谷の総鎮守神として建立されました。
 広く子孫繁栄と家庭円満、和楽を念じ、縁結びの神、安産の神として崇敬されると共に、荒川を行き来する舟の安全を祈る交通安全の神としても有名であった。
 その昔は、社域は広大で神楽殿もあり、樹木の聳える荘厳な森に囲まれ、神谷内外の人々で賑わっていましたがね大東亜戦争が激化するに伴い境内は軍需工場に接収され、昭和十八年十二月ね現神谷一丁目にあった須賀社の御祭神・須佐之男命わ合祀し、現在地に遷宮されました。
 その後、昭和五十四年八月、神谷内外の氏子有志の奉賛により現在の社殿が建立され、令和五年九月、永い歴史を受け継ぎ、創建七百年を迎えました。
  令和五年九月吉日
          宗教法人 柏木神社


【文献】
藤田和彦 (2001) 星砂の生物学、みどりいし、(12)、26-29、URL: https://www.amsl.or.jp/midoriishi/1208.pdf, Accessed: 2024-09-08.
Ueno K (2021) Carboniferous fusuline Foraminifera: taxonomy, regional biostratigraphy, and palaeobiogeographic faunal development, In Lucas SG, Schneider JW, Wang X and Nikolaeva S eds, The Carboniferous Timescale, Geological Society, London, Special Publications, 512, 327–496, DOI: https://doi.org/10.1144/SP512-2021-107, Accessed: 2024-09-08.
University of Florida, human flea, URL: , Accessed: 2024-09-08.

頭状花序(頭花)における筒状花と舌状花

キク科の写真整理 グリーンネックレス イズハハコ属(ConyzaEschenbachia)
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


 キク科(Asterales)やマツムシソウ属(Scabiosa)の花は、小花(Floret)と言われる花の集合体によって構成されているため、厳密には花序(Inflorescence)です。この様に小花が花茎を介さずに円盤状に集合した花序は頭状花序(Capitulum)と呼ばれます。頭状花序を構成する小花は、その構造から筒状花(Tubular Flower)と舌状花(Ligulate Flower)が区別され、例えばヒマワリの花の中心部は筒状花、周辺部は舌状花で構成されています。

【筒状花と舌状花からなる頭状花序】

ヒマワリ Helianthus annuus
 ヒマワリ連 Heliantheae

シオン Aster tataricus
 シオン連 Astereae

ガーベラ Gerbera jamesonii
 ムティシア連 Mutisieae
【筒状花のみの頭状花序】

ハハコグサ Gnaphalium affine
 ハハコグサ連 Gnaphalieae

ノアザミ Cirsium japonicum
 アザミ連 Cardueae

イソギク Chrysanthemum pacificum
 キク連 Anthemideae
【舌状花のみの頭状花序】

ブタナ Hypochaeris radicata
 タンポポ連 Cichorieae

ノゲシ Sonchus oleraceus>
 タンポポ連 Cichorieae

カントウタンポポ Taraxacum platycarpum
 タンポポ連 Cichorieae

 頭状花序の種は主としてキキョウ類(Campanulids)に属していて、キク科、カリケラ科、マツムシソウ連(スイカズラ科)が相当しますが、系統との関係は定かではないようです(図1)。その他にも系統的にはかなり離れているイネ目ホシクサ科は頭状花序を形成するようです。


図1【キキョウ類(Campanulids)の系統概要】Lundberg and Bremer(2003)

キキョウ類(Campanulids)
│ ┌キク目(Asterales)
│ ││ ┌ロウセア科(Rousseacea)
│ ││┌┴┬ユガミウチワ科(Pentaphragmataceae)
│ │││ └キキョウ科(Campanulaceae)
│ │└┤ ┌MGCA Clade
│┌┤ │ │└┬ミツガシワ科(Menyanthaceae)
│││ │┌┤ └┬クサトベラ科(Goodeniaceae)
│││ │││  └┬カリケラ科(Calyceraceae)
└┤│ └┤│   └キク科(Asteraceae)
 ││  │└スティリディウム科(Stylidaceae)
 ││  └APA Clade
 ││   └┬アルセウオスミア科(Alseusniaceae)
 ││    └┬フェリネ科(Phellinaceae)
 ││     └アルゴフィルム科(Argophyllaceae)
 ││ ┌パラクリフィア目(Paracryphiales)
 ││┌┴┬マツムシソウ目(Dipsacales)
 │└┤ └セリ目(Apiales)
 │ └エスカロニア目(Escalloniales)
 └モチノキ目(Aquifoliales)


ヒャクニチソウの筒状花と舌状花

 図2は、科の下の分類群である連(tribe)レベルで、頭状花序を構成する小花の種類を示しています。ただし、例外も多数あり、例えばキク連に属するイソギクマメカミツレメリケントキンソウに舌状花はありませんし、ヒマワリ連のセンダングサ属、シオン連のアズマギク属のように舌状花の発達が良くない種もあります。
 キク科の姉妹群と考えられるカリケラ科の花序は筒状花のみから構成されますが、キク科ではもっとも早くに分岐したと考えられているバルデシア連は筒状花と舌状花で構成される頭状花序を持っているので、キク科植物はカリケラ科から分岐した8300万年前(Mandel et al.,2019)には既に頭状花序だったと考えてよさそうです。
 これまで撮影した写真、入手可能な文献やウェブ掲載画像などから判断する限り、筒状花を欠くのはタンポポ連だけであり、半数以上の連では筒状花と舌状花の両方で花序が構成されていること、また古い時代に分岐した連ほど舌状花を欠くことが多いことなどが伺われます。
 以上から、舌状花あるいは筒状花のどちらかを欠く種は、二次的にそれらのどちらかを失ったと推測されるのですが、必ずしも遺伝だけで決まっているとは言えないようです。


図2【キク科(Asteraceae)の系統概要】Mandel et al.(2019)

┬カリケラ科(Calyceraceae)50種【筒】
└キク科(Asteraceae)
 │┌バルナデシア連(Barnadesieae)91種【筒】【舌】
 └┤ ┌┬ファマティナンテ連(Famatinantheae)1種【筒】【舌】
  │┌┤└スティフティア連(Stifftieae)50種【筒】
  │││┌オノセリデ連(Onoserideae)52種【筒】
  └┤└┴┬ナッソービア連(Nassauvieae)313種【筒】【舌】
   │  └ムティシア連(Mutisieae)254種:ガーベラ【筒】【舌】
   │ ┌┬ワンダーリキア連(Wunderlichieae)35種【筒】
   │┌┤└シクロレピス連1種(Cyclolepis)【筒】
   └┤└ゴチナティエ連(Gochnatieae)70種【筒】
    │┌ヘカストクレイス連(Hecastocleideae)1種【筒】
    └┤┌コウヤボウキ連(Pertyaea)70種【二唇形】
     └┤ ┌オルデンベルギア連(Oldenburgieae)4種【筒】【舌】
      │┌┴タルコナンサス連(Tarchonantheae)13種【筒】
      └┤┌ディコメア連(Dicomeae)100種【筒】
       └┤┌アザミ連(Cardueae)2500種【筒】
        └┤┌ギムナレア連(Gymnarrheneae)2種【筒】
         ││  ┌エレモタムナス連(Eremothamneae)3種【筒】
         └┤ ┌┤┌┬プラティカルフ連(Platycarpheae)3種【筒】
          │ │└┤└ハゴロモギク連-A(Arctotideae-A)76種【筒】【舌】
          │┌┤ └ハゴロモギク連-G(Arctotideae-G)131種【筒】【舌】
          │││┌リアパム連(Liabeae)174種【筒】【舌】
          ││└┤┌ショウジョウハグマ連-D(Vernonieae-D)40種【筒】
          └┤ └┴┬モキニアストラム連(Moquinieae)2種【筒】
           │   └ショウジョウハグマ連(Vernonieae)1500種【筒】
           │┌タンポポ連(Cichorieae)1100種【舌】
           └┤┌コリンビウム連(Corymbieae)9種【筒】:頭状花序ではない
            └┤ ┌キンセンカ連(Calenduleae)120種【筒】【舌】
             │┌┤┌┬サワギク連(Senecioneae)3500種【筒】【舌】
             ││└┤└キク連(Anthemideae)1800種【筒】【舌】
             └┤ └┬シオン連(Astereae)3080種【筒】【舌】
              │  └ハハコグサ連(Gnaphalieae)1240種【筒】
              │┌オグルマ連(Inuleae)687種【筒】
              └┤┌アスロイスマ連(Athroismeae)55種【筒】【舌】
               └┤┌テンニンギク連(Helenieae)120種【筒】【舌】
                ││  ┌メナモミ連(Millerieae)380種【筒】【舌】
                └┤ ┌┴コウオウソウ連(Tageteae)267種:マリーゴールド【筒】【舌】
                 │┌┤┌┬ペリタイル連(Perityleae)84種【筒】【舌】
                 ││└┤└ヒヨドリバナ連(Eupatorieae)2200種【筒】
                 ││ │┌マディア連(Madieae)203種:ウサギギク【筒】【舌】
                 └┤ └┴┬カエナクティス連(Chaenactideae)29種【筒】
                  │   └バヒア連(Bahieae)83種【筒】【舌】
                  │┌ニューロレナ連(Neurolaeneae)153種【筒】【舌】
                  └┴┬ハルシャギク連(Coreopsideae)550種【筒】【舌】
                    └ヒマワリ連(Heliantheae)1461種【筒】【舌】

 アズマギク属Erigeronは、ヒメムカシヨモギ、オオアレチノギクなど、舌状花の発達が良くない、または舌状花を欠く種が含まれるのですが、通常個体では舌状花がよく発達する種でも、稀に舌状花の発達の芳しくない個体がみられ、さらには同じ株内や、ひとつの花序内でも舌状花の大きさに違いの見られることがあります。


舌状花の発達が不均一なハルジオン

株全体で舌状花の短いハルジオン

 さらに、イヌカミツレMatricaria inodora(キク連)では、オーキシン投与により筒状花が舌状花に変化する(Zoulias et al.,2019)という興味深い報告がありますので、キク科の頭状花序での小花の分化は、遺伝だけでなく環境要因が関与していると考えてよさそうです。


【言葉の整理】
花序(かじょ):Inflorescence
 花軸(茎)に対する花のつき方

花床(かしょう):receptacle
 花序軸が短縮して平面状になったもの

頭状花序(とうじょうかじょ):Capitulum (pl. Capitula)
 円盤状の花床に無柄の小花が密生する花序、『頭花』と略すこともある。

小花(しょうか):Floret
 頭状花序、肉穂花序、隠頭花序などを構成する花柄を持たない個々の花。


筒状花(とうじょうか):Tubular Flower
 筒状の小花。花弁部分は5放射相称の星型となることが多い。頭状花序との混同を避けるために『つつじょうか』と発音することもある。

舌状花(ぜつじょうか):Ligulate Flower
 基部は筒状であるが、上部は合弁して舌状となる小花。

二唇形筒状花(にしんけいとうじょうか):Bilabiate Tubular Flower
 舌片が向かい合って2枚つく、舌状花から筒状花への移行形と考えられている小花で、コウヤボウキ連でみられる。

中心小花(ちゅうしんしょうか):Central Floret, Disk Floret
 頭状花序の円盤状の花床の中心部分を構成する小花。通常は筒状花なので、筒状花の意味で用いられることもある。

周辺小花(しゅうへんしょうか):Outer Floret , Ray Floret
 頭状花序の円盤状の花床の周辺部分を構成する小花。中心小花と区別する必要がある時の周辺小花は通常舌状花なので、舌状花の意味で用いられることもある。


【文献】
Mandel JR, Dikow RB, Siniscalchi CM, Thapa R, Watson L and Funk VA (2019) A fully resolved backbone phylogeny reveals numerous dispersals and explosive diversifications throughout the history of Asteraceae, Proc Natl Acad Sci, 116(28), 14083-14088, DOI: 10.1073/pnas.1903871116, Accessed: 2023-10-20.
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(下)、p1492-1645.
Lundberg J and Bremer K (2003) A Phylogenetic Study of the Order Asterales Using One Morphological and Three Molecular Data Sets, Int J Plant Sci, 164(4), 553–578,DOI: 10.1086/374829, Accessed: 2024-08-18.
Zoulias N, Duttke SHC, Garcês H, Spencer V and Kim M (2019) The Role of Auxin in the Pattern Formation of the Asteraceae Flower Head (Capitulum), Plant Physiology, 179, 391–401, DOI: 10.1104/pp.18.01119, Accessed: 2024-08-18.

アンボレラ(属、科、目)

 アンボレラ(Amborella trichopoda)は、ニューカレドニアのグランテール島(Grande Terre)固有の低木で、1属1種で単独科単独目となっています。最初の記載は19世紀(Bailey and Swamy,1948)ですが、20世紀末になって遺伝子解析により、すべての被子植物に対して姉妹群となることが報告(Graham and Olmstead,2000)されてから、一躍注目を集めています(戸部,2021)。『アンボレラは、過去の証人か?』と題した総説(Poncet et al.,2019)も公表されていて、アンボレラばかり研究対象にしていると他の研究が疎かになるのではないかとの懸念も呈されている様です。
 アンボレラを生きた化石とみなすのは必ずも正しくなく、他の被子植物と袂を分かったのはアンボレラの祖先種であって、種としてのアンボレラは新生代になってから現れたと考えられている様です。アンボレラの花期は6月中旬とのことですが、今年(2024)の小石川植物園では一般公開されていませんでした。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


アンボレラ属の系統位置 (Graham and Olmstead,2000)

  ┌マツ属(Pinus)            ┐
┌┬┴グネツム属(Gnetum)         ├裸子植物
┤└イチョウ属(Ginkgo)          ┘Gymnosperm
│┌アンボレラ属(Amborella)
└┤ ┌ハゴロモモ属(Cabomba)
 │┌┴スイレン属(Nymphaea)
 └┤┌シキミ属(Illicium)
  ││   ┌ショウブ属(Acorus)    ┐
  └┤  ┌┤┌ヤマノイモ属(Dioscorea) ├単子葉類
   │  │└┴┬イネ属(Oryza)     │Monocots
   │ ┌┤  └トウモロコシ属 (Zea) ┘
   │┌┤└マツモ属(Ceratophyllum)
   │││┌ヤマグルマ属(Trochodendron)  ┐
   ││└┤┌カツラ属(Cercidiphyllum)   ├真正双子葉類
   └┤ └┴タバコ属(Nicotiana)     ┘Eudicots
    │ ┌クロバナロウバイ属(Calycanthus)
    │┌┴ユリノキ属(Liriodendron)    │
    └┤┌ドリミス属(Drimys)       ├モクレン目群
     └┴┬カンアオイ属(Asarum)     │Magnilids
       └┬ラクトリス属(Lactoris)   │
        └ハンゲショウ属(Saururus)  ┘

【アンボレラ目(Amborellales) アンボレラ科(Amborellaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アンボレラ属 Amborella
アンボレラ No Image
Amborella trichopoda (Amborella)

Amborella Genome Project(0213) The Amborella Genome and the Evolution of Flowering Plants, Science 342, 1241089, DOI: 10.1126/science.1241089, Acessed: 2024-06-14.
Bailey IW and Swamy BGL (1948) Amborella trichopoda Baill., a New Morphological Type of Vesselless Dicotyledon, J Arnold Arboretum, 29(3), 255–256, URL: https://www.biodiversitylibrary.org/page/8441602, Acessed: 2024-06-14.
Graham SW and Olmstead RG (1999) A phylogeny of basal angiosperms infered form 17 chloroplast genes, Paper presented at the sixteen International Botanical Congress, St. Louis, Missouri, U. S., August 1-7, Abst.68.
Graham SW and Olmstead RG (2000) Utility of 17 chloroplast genes for inferring the phylogeny of the basal angiosperms, Am J Bot, 87(11), 1712-1730, DOI: 10.2307/2656749, Acessed: 2024-06-11.
Poncet V, Birnbaum P, Burtet-Sarramegna V, Kochko Ad, Fogliani B, Gâteblé G, Isnard S, Jaffré T, Job D, Munoz F, Munzinger J, Scutt CP, Tournebize R, Trueba S and Pillon Y (2019) Amborella – Bearing Witness to Past ?,
Ann Plant Rev, 2, 1–41, DOI:10.1002/9781119312994.apr0689, Acessed: 2024-06-14.
Soltis DE and AND Soltis PS (2004) Amborella Not a “Basal Angiosperm”? Not so Fast, Am J Bot, 91(6), 997-1001, DOI: 10.3732/ajb.91.6.997, Acessed: 2024-06-11.
戸部博(2021)アンボレラの雌雄性と進化、植物地理・分類研究、60(1), 39-50, DOI: 10.18942/chiribunrui.0691-09, Acessed: 2024-06-11.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-07.

真夏の金沢動物園へ

 今日は、朝から朝比奈市民の森経由で金沢自然公園へ…。まだまだ暑いので、屋外飼育の動物たちは、ほぼ日陰で休んでいました。
維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹



【参考】〇は本日初撮影種
 アオバハゴロモ Geisha distinctissima
 ヒャクニチソウ Zinnia X hybrida
 ホウセンカ Impatiens balsamina
 ワルナスビ Solanum carolinense
 キンミズヒキ Agrimonia pilosa
 ホシダ Thelypteris acuminata
 イヌガヤ(浄林寺跡)横浜市指定名木古木 No.48140 Cephalotaxus harringtonia:朝比奈町267
 ラセイタソウ Boehmeria biloba
 クリ Castanea crenata
 トウガン Benincasa pruriens f. hispida
 マテバシイ Lithocarpus edulis
 サンゴジュ Viburnum odoratissimum
 ヒャクニチソウ(一重) Zinnia X hybrida
〇アラゲハンゴンソウ Rudbeckia hirta var. pulcherrima
 キバナコスモス Cosmos sulphureus
〇ヒメハラナガツチバチ Campsomeris annulata
 金澤自然公園夏山口
 金沢動物園
 オニドコロ Dioscorea tokoro
 アオダイショウ Elaphe climacophora
〇アズマヒキガエル Bufo japonicus formosus
 シマヘビ Elaphe quadrivirgata
〇モリアオガエル Zhangixalus arboreu
 タガメ Kirkaldyia deyrolli
〇ノコギリクワガタ Prosopocoilus inclinatus
〇ヒダリマキマイマイ Euhadra quaesita
 ミヤマクワガタ Lucanus maculifemoratus
〇アカハライモリ Cynops pyrrhogaste
 追浜方面
 アオバネワライカワセミ Dacelo leachii leachii
 hiroki:國川裕美 作
 コアラ Phascolarctos cinereus
 モモイロペリカン Pelecanus onocrotalus
 ノカンゾウ Hemerocallis longituba
 アブラチャン Lindera praecox
〇ミズカンナ Thalia dealbata
 ベゴニア Begonia semperflorens
 クロウリハムシ Aulacophora nigripennis
 カラスウリ Trichosanthes cucumeroides
 ヒャクニチソウ(一重) Zinnia X hybrida


この像は一体…何?!
 と、思われる方も多いかと思います。
パルマワラビー舎では、2015年までウォンバットを飼育していました。以前、金沢動物園で行っていたイベント【アニマルアートコラボ2014】の際に、國川裕美さんに出展していただいた作品『hiroki』です。同時飼育していたウォンバットの『ヒロキ』は残念ながら亡くなってしまいましたが、思い出の詰まったこの像はそのままここに飾っています。

鬼怒川温泉から日光へ

 朝のうちに鬼怒川周辺を散策してから、日光へと向かいました。




【参考】〇は本日初撮影種
 佳祥坊福松
 湯泉(ゆどころ)(ひと)
 鬼怒川
 鬼怒太像:定印
 ユウガオ(ヒョウタンの変種) Lagenaria siceraria var. hispida
〇ビロ-ドシダ Pyrrosia linearifolia
 (三毛)猫 Felis catus
 おさるの山入口
 ノチドメ Hydrocotyle maritima
 マツカゼソウ Boenninghausenia albiflora var. japonica
〇クラマゴケ Selaginella remotifolia
 鬼怒川温泉神社
 石尊碑
 湯殿山碑
 男體山碑
 宝の湯(鬼怒川プラザホテル)
 ウラハグサ(風知草) Hakonechloa macra
 鬼怒太の階段アート(ふれあい橋東詰)
 キリ Paulownia tomentosa
〇チャコウラナメクジ Ambigolimax valentianus
〇ヤマビル Haemadipsa zeylanica japonica
〇イワツバメ Delichon urbica
 シンテッポウユリ Lilium x formolongi
 スペーシア
 スペーシアと鬼怒川みやび
 先頭車両は貸し切り状態


 東武日光駅
 東武100系電車
〇カラマツ Larix kaempferi
 華厳滝
 涅槃滝
 昼食:ゆば料理滝(ゆば&グリーンカレー)
 オトギリソウ Hypericum erectum
 アキアカネ Sympetrum frequens
 中禅寺湖
 オオハンゴンソウ Rudbeckia laciniata
 タマアジサイ Platycrater involucrata
 アスナロ Thujopsis dolabrata
 日光東照宮参道
 イワタバコ Conandron ramondioides
 神橋
 旧日光市役所
 湯葉懐石与多呂(跡)
 ゆばむすびの「ふだらく」
〇ウスバカゲロウ Hagenomyia micans (平六トンネル)


 湯泉(ゆどころ)(ひと)
鬼怒川音頭
    作詞 野口 柾夫 氏
    作曲 杉山長谷夫 氏
 春は八汐よ 秋来りや紅葉
 錦々鬼怒川 しんしん
 しんとろ お湯が湧く
 サラサラ 瀬の瀬で 鳴く河鹿
 サラ鬼怒川 湯泉 コーロコロ


鬼怒太:定印鬼
 うでを組むのは鬼の定印。人と逆で、手のかわりに足で合掌、「幸」を祈る
     藤原郁三 2008年

 鬼怒川温泉神社
主祭神 大己貴命(おおあなむちのみこと)少名彦命(すくなひこののみこと)
例祭  四月吉日
敷地内 三百坪
本殿  流造銅板葺
由緒沿革 創立は不詳、古老の口伝によれば鬼怒川温泉宿地の温泉神社を現地に遷座。(温泉の守護神を祀る)
「湯楽の神は湯の神、温泉神(いでゆのかみ)」ともいい、温泉の霊力を神格化し崇敬され温泉神社が建立された。
祭神には医療・禁厭(きんよう)の神とされている大己貴命・少名彦命が祀らりている。
温泉には不病を癒す効能がある為、全国より多数の人々達が浴湯を楽しむ。
御神徳 家内安全、身体健全、勝運、
          温泉神社 宮司


鬼怒川温泉発祥の湯
  宝の湯
 古くは江戸時代より滝温泉の名称にてよばれ、一七五二年当時は日光の寺社領であったことから日光詣で帰りの諸大名や僧侶達のみが利用可能な温泉でありました。明治時代になり滝温泉が一般に開放され、やけどやキズの名湯としてこの山奥まで尋ねる人が絶えず、その後鬼怒川を間にして西岸と東岸に温泉を分かち、西を滝温泉、東を藤原温泉と呼び会津街道を行き交う人の旅人宿としてまた、里から山村に出入りする商人の宿としてますますその需要を深め、昭和二年頃より鬼怒川温泉として名称を改めました。その滝温泉から湧き出た温泉の一つ、名湯宝の湯は、明治八年五月官報に書きしるされ、湧き出す温度は現在でも五十三度前後を保ち、毎分約三百リットルもの豊富な湯量を誇る鬼怒川温泉発祥の湯と呼ばれています。
     鬼怒川プラザホテル


日光の歴史の1ページを彩った路面電車
 日光軌道線は、1910年(明治43)年、古河鉱業(現 古河電気工業)日光電気精銅所の貨物輸送を主目的として、日光電気軌道株式会社が停車場前~岩の鼻間で開業したもので、当初から、日光地域の観光輸送の一翼も担っていました。戦後の日本経済の復興とともに観光ブームが起こる中、戦禍を免れた日光軌道線は、1947(昭和22)年の合併により東武鉄道日光軌道線となり、東京方面から日光地域への観光客の円滑な輸送に、大きな役割を果たしてきました。
 この路面電車は、1953(昭和28)年から15年間にわたり、市民生活の足として、また国際観光地日光を訪れる観光客の貴重な輸送手段として、日光駅から馬返までの全線10.6kmの日光の街中を運行した東武100系電車10両のうちの1両です。
 その後、1965(昭和40)年の第一いろは坂に続く第二いろは坂寛政の影響を受けて旅客数や貨物数が激減し、1968(昭和43)年、東武鉄道日光軌道線はその58年間の歴史に幕を閉じましたが、このような歴史的背景を踏まえ、実際に走っていた車両を当時の姿に復元し、東武鉄道駅前広場に展示することで、後世に残すべき貴重な産業遺産として、また往時を偲ぶ観光試験として活用を図るものです。


東武鉄道日光軌道線 東武100系車両
規格: 全長12,350mm、全幅2,200mm、全高3,552mm
その他:車番109
定員: 96名


A Tram that Colores One Page of Nikko’s History
 The Nikko-Kido Line Tramway was opened in 1910 by Nikkio Electric Tram Co.,Ltd., between Teishaba-mae Station and Iwa-no-Hana Station, and was used mainly for freight transportation by the Furukawa Mining (currently Ferukawa Electric) Nikko Electric Copper Works. From its outset, it also played a role in transportation for tourism purposes in the Nikko region. In 1947, coinciding with the tourism boom which followed the recovery of the Japanese economy after the war, the Nikko-Kido Line Tramway merged with Tobu railway to become the Tobu Railway Nikko-Kido Line. It come to play a major role in transporting tourism from the Tokyo area to Nikko.
 For 15 years following its launch in 1953, this particular tram served to support the everyday lives of Nikko citizens, and provided a much-loved means of transport for tourism visiting Nikko from all around the world. It is one of 10Tobu 100-series trams that ran on the 10.6km tramway through Nikko City, from Nikko Station to Umagaeshi Station.
 However, as a result of the completion of the second Irohazaka Road in 1965, freight transportation and passenger numbers decreased dramatically, and 1968 the Tobu Railway Nikko-Kido Line closed its doors on a 58 year history. In order to preserve the much-loved industry for future generations, the tram has been restored to its original condition, and is now displayed in front of Tobu Nikko Station.


Tobu Railway Nikko-Kido Line Tobu 100-Series
Dimensions: Overall length – 12,350mm
Overall width – 2,200mm
Overall height – 3,552mm
Other: Car Number 109
Capacity: 96 people


  御案内
 その昔、男体山の噴火で生まれた中禅寺湖の湖水が大尻川となって流れだし、この大岩壁から一気に落下する壮大な雄姿が華厳滝です。
 高さ   九七.〇m
 落口巾  七.〇m
 滝壺深さ 四.五m
 落水量(毎秒〇.三トン)
 華厳滝を囲むこの大岩壁は上部から安山岩・集か塊岩・石英斑岩とで形成され中段の細い滝の数々は十二滝と呼ばれています。
 滝の流れはさらに観瀑台直下の涅槃滝にかかり大谷(だいや)川となって鬼怒川に合流しています。


旧日光市庁舎
特徴:木造4階建の和洋折衷の入母屋造りで、当時ととしては珍しい米松を使用し、周囲の一部には高さ8メートルの石垣を築造しています。
沿革:等建造物は、当時地元の名士であった小林庄一郎氏が、日光を訪ねる外国人向けのホテル経営を目指して建設した建物です。
建設着工の時期は明治38年(1905年)頃、当時で35万円(現在の10数億円相当)の金額と15年の歳月をかけ大正8年(1919年)にほぼ完成したといわれています。名称も徳川家ゆかりの土地柄にちなみ「大名ホテル」と決定していたとのことですが、ホテルとしての使用実績はほとんどありませんでした。
昭和18年(1943年)に古河電工日光精銅所へ売却され、工員アパートとして使用されました。戦後一時的に進駐軍の社交場になりましたが、昭和23年(1948年)に旧日光町役場本館として、昭和29年(1954年)の市制施行後は、旧日光市庁舎本館として使用されました。
平成18年(2006年)の市町村合併により、新日光市の日光総合支所(その後、名称変更により日光行政センター)となりましたが、平成30年(2018年)3月、新庁舎が日光行政センター機能が移転したことによりその役割を終えました。保存のため外観の修繕と周囲の園地化を行い、令和4年4月に旧日光市役所記念公園とてしオープンいたしました。
備考:【国登録有形文化財建造物】登録年月日:平成18年(2006年)3月2日
   【地域活性化に役立つ近代化産業遺産】認定年月日:平成19年(2007年)11月30日


Former Nikko City Hall
 A four-story building with a Japanese Western-style hip-and-gable roof. Made of Douglas fir, rare for the time period, and a stone wall measuring 8 meters high built in part of the surrounding area.
This building was created by Shoichiro Kobayashi, a notable figure at the time, with the aim of managing a hotel for foreigners visiting Nikko. It is said that construction started around 1905 (Meiji 38), nearing completion almost 15 years later in 1919 (Taisho 8). At that time, it cost the amount of 350,000 yen (today’s equivalent of 1 billion yen). Although the name “Daimyo Hotel” was decided in reference to the landingholding magnates (Daimyo) of the Tokugawa Clan, there was almost no record of its use aa a hotel.
 It was sold to Nikko Copper Works od Furukawa Electric in 1943 (Showa18) and utilized for workers’ housing. Although it temporarily served as a social gathering place for occupying forces after the war, it was then donated in 1948 (Showa 23) as the Town Hall to Former Nikko Town. After the city system was enforces in 1954 (Showa 29) it was used as Nikko City Hall. Due to the merger of cities, towns, and villages in 2006 (Heisei 18) it become the Nikko General Branch of present day Nikko City (later changing its name to the Nikko Administration Center). However, In March 2018 (Hesei 30), the Nikko Administrating Center was added to the new government building, thus ending its role due to its shift of purpose.
 The exterior was repaired for preservation and the surrounding area was converted into a park. In April 2022 (Reiwa 4), it was reopened as the Former Nikko City Hall Memorial Park.
Remarks: [National Registered Tangible Culture Property Building Registration Date: March 2nd, 2006 (Heisei 18)
     [Heritage of Industrial Modernization Serving ad Regional Revitalization] Certification Date; November 30th, 2007 (Heisei 19)


【文献】
西脇三郎・小池啓一 (2001) 軟体動物腹足類の新分類体系と上位分類群の和名, 群馬大学教育学部紀要 自然科学編, 49, 79-97, URL: https://gunma-u.repo.nii.ac.jp/record/4296/files/ares049079.pdf, 2024-08-13.
山中征夫 (2007) ヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica)-日本で唯一の陸生吸血ビル-, 森林科学, 51(10), 10.11519/jjsk.51.0_4343-51, Accessed: 2024-08-13.

朝のうちに金澤八景へ

 今日も朝からの強い陽射しで、暑い一日となりそうです。


【参考】
 キョウチクトウ Nerium oleander var. indicum
 シュロ Trachycarpus fortunei
 ブーゲンビレア Bougainvillea sp.
 ツクツクボウシ Meimuna opalifera
 ノウゼンカズラ Alstroemeria aurea
 ルリマツリ Plumbago auriculata
 柳町の母子像
 エノキグサ Acalypha australis

アマモ科の写真整理

 アマモ科(Zosteraceae)は、4属約20種で構成される海草で、温帯の浅海域を中心にして広く南北半球に分布しています(Coyer et al.,2013)。アマモ(Zostera marina)、スガモ(Phyllospadix iwatensis)などは、藻場の種たる構成種であり、多くの魚介類の産卵場、保育場となっています。さらに、広島湾での事例研究では、湾内のアマモ草体中の炭素量は164トンと概算されており(Tarawaki et al.,2002)、二酸化炭素固定に重要な役割を果たしていることからも注目されています。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【オモダカ目(Alismatales) アマモ科(Zosteraceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
アマモ属 Zostera
アマモ アマモ
Zostera marina Eel Grass

【文献】
Coyer JA, Hoarau Kuo GJ, Tronholm A, Veldsink J and Olsen JL (2013) Phylogeny and temporal divergence of the seagrass family Zosteraceae using one nuclear and three chloroplast loci, System Biodivers, 11(3), 271-284, 10.1080/14772000.2013.821187, Accessed: 2023-08-10.
Terawaki T, Tamaki H, Nishimura M Yoshikawa L and Yoshihda G (2002) Total amount of varbon and nitrogen in Zostera marina in Hiroshima Bay, western Seto inland Sea, Japan, Bull Fish Res Agen, 4, 25-32, 10.1371/journal.pone.0150890, Accessed: 2023-08-10.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

ビブリス科の写真整理

 ビブリス科(Byblidaceae)は、ビブリス属(Byblis)のみで構成される外観はモウセンゴケに似た食虫植物で、APG体系ではシソ目に置かれています(APG-IV,2016)。かつてのビブリス科にはビブリス属に加えてロリドゥラ属(Roridula)も含められていましたが、遺伝子配列を用いた検討の結果、両属の間には目レベルを超える違いのあることが明らかとなり(Conran and Doeb,1993)、ロリドゥラ属は、ロリドゥラ科(Roridulaceae)として分離されツツジ目に移されています。ビブリス属は、オーストラリアとニューギニアに分布しており、かつて2種だったのに加えて今世紀に入ってからも新種記載が続いていて現在8種となっている様です(Katogi and Hoshi,2022)。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【ビブリス科周辺の系統推定図】(APG-IV,2016)

キク目群(Asterids)
│┌ミズキ目(Cornales)
││┌ツツジ目(Ericales)
└┤│└ロリドゥラ科(Roridulaceae)
 └┤┌キキョウ類(Campanulids)
  │││┌モチノキ目(Aquifoliales)
  ││└┤┌キク目(Asterales)
  ││ └┼エスカロニア目(Escalloniales)
  └┤  └┬ブルニア目(Bruniales)
   │   └┬セリ目(Apiales)
   │    └┬マツムシソウ目(Dipsacales)
   │     └パラクリフィア目(Paracryphiales)
   └シソ類(Lamiids)
    │   ┌ナス目(Solanales)
    │   ├シソ目(Lamiales)
    │  ┌┤└ビブリス科(Byblidaceae)
    │  │├ヴァーリア目(Vahliales)
    │ ┌┤├リンドウ目(Gentianales)
    │┌┤│└ムラサキ目(Boraginales)
    └┤│└ガリア目(Garryales)
     │└メッテニウサ目(Metteniusales)
     └クロタキカズラ目(Icacinales)

【シソ目(Lamiales) ビブリス科(Byblidaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
ビブリス属 Byblis
ビブリス・リニフロラ ビブリス・リニフロラ
Byblis liniflora Australian Rainbow Plant

【文献】
Conran JG and Doeb JM (1993) The phylogenetic relationships of Byblis and Roridula (Byblidaceae-Roridulaccae) inferred from partial 18S ribosomal RNA sequences, Plant Syst Evol, 188, 73-86, DOI; 10.1007/bf00937837
Katogi T and Hoshi Y (2022) Determination of Chromosome Numbers and Genome Sizes in Six Species of Byblis (Byblidaceae), Cytologia 87(3), 277–280, DOI: 10.1508/cytologia.87.277, Accessed: 2023-07-11.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

食虫植物展

 こども植物園で開催中の食虫植物展を見てきました。


【食虫植物展】


食虫植物とは
 昆虫などの小動物を捕らえて栄養にしている植物たちを食虫植物と呼びます。養分にとぼしい土地をすみかに選んだ食虫植物の祖先たちは、不足する栄養分を小動物から得ようと葉を捕虫するための道具に進化させ、さらには自ら消化液を出して獲物を消化吸収するようになりました。なお、消化液を出さずバクテリアの力を借りて分解されたものを栄養として吸収する種類を食虫植物に含める場合もあります。しかし、捕らえた獲物だけから栄養をたよっているわけではなく光合成をしてい自分でも栄養分を作り出しているので、万が一小動物を捕らえることができなくても枯れることはありません。
 南極大陸を除く世界各地の標高の低い土地から高い山まで見られ、湿原などの湿った土地や池・沼などに生えています。


ビブリスの仲間 -Byblis- ビブリス科
 オーストラリア原産で、現在8種に分類されています。リニフロラほか5種はオーストラリア北部やパプアニューギニアなどの熱帯地域、バガンテア、ラメラタは地中海性気候のオーストラリア南西部に離れて分布していて、同じ仲間でも生えている環境が全く違います。
 長い間、消化酵素が認められなかったため、食虫植物ではないという意見がありました。しかし最近になって、消化液を出しているということがわかり、食虫植物であることが確定しました。


モウセンゴケの仲間 -Drosera- モウセンゴケ科
 世界中(南極大陸以外)に分布がみられ、湿原などの湿った場所に生えています。日本には「モウセンゴケ」や「コモウセンゴケ」、地下に塊茎をつくる「シイモチソウ」など6種ほどが自生しています。葉にある腺毛の先から粘液を出し、腺毛や葉を動かし、獲物を包み込んで消化します。
 オーストラリア南西部には「ピグミーサンデュ」とよばれる非常にちいさなモンセンゴケの仲間が分布しており、これらはムカゴでも繁殖します。
 「もうせん(毛氈)」とは毛などで織った敷物のことで、日本ではおもに赤い毛氈(緋毛氈)が多く使われました。この植物の腺毛は陽がよく当たると真っ赤に色づくため「モウセンゴケ(毛氈苔)」と名づけられました。


タヌキモとミミカキグサの仲間 -Utricularia- タヌキモ科
 世界中(南極大陸以外)に分布がみられ、池沼や湿地に生育しています。この仲間には根がありません。タヌキモ類とミミカキグサ類は同じタヌキモ属に含まれますが、タヌキモの仲間はおもに水中に浮かんで生活しており、一方のミミカキグサの仲間は湿原の泥の中や、森林の苔と岩のあいだ、またパイナップル科の植物の葉のあいだにたまった水の中など生育場所はさまざまで、タヌキモ類とちがい水上に葉を出します。いずれも小さな生き物を吸い込んで捕らえます。日本には「タヌキモ」や「ミミカキグサ」、日本でしか見られない「フサタヌキモ」、世界で最も小さい食虫植物といわれる「ヒメミミカキグサなとが自生しています。フサフサと水中にただようようすをタヌキのしっぽにたとえて「タヌキモ」と呼びます。


ハエトリグサ –Dionaea muscipula- モウセンゴケ科 (ハエトリソウ、ハエジゴク)
 欧米では、葉のようすを女神のまつ毛にたとえて、ビーナス・フライトラップ(女神のハエ取り器)ともよびます。閉じ合わさる形をした、捕虫葉の内側には獲物の動きを感じとる数本の感覚毛があり、獲物が葉の中に入りその感覚毛にふれると0.5秒というすばやい速さで葉が閉じ合わさるしくみになっています。そして閉じた葉はさらに中の獲物をしめつけ押しつぶすと、消化液を出して消化吸収します。
 アメリカ合衆国のノースカロライナ州とサウスカロライナ州のごく限られた地域の湿原に生育していて、現在では国によって厳重に保護されています。


プロッキニアの仲間 -Brocchinia- パイナップル科
 私たちが食用にするパイナップルの仲間で、ヘリアンフォラと同じく南アメリカ北部のギアナ高地が原産です。葉の構造は単純で、葉と葉の間にたまった甘い香りを発する水(強い酸性)の中に落ちた昆虫などの小さな生き物を、バクテリアに分解させて養分を吸収します。レドゥクタ(B. reducuta)とヘクティオイデス(B. hechtioides)、タテイ(B. tatei)の3種が食虫植物として知られています。


ヘイシソウの仲間 -Sarracenia- サラセニア科
 北アメリカのおもに大西洋沿岸をふるさととする植物です。一般的には学名の「サラセニア」で呼ばれ、8種(分類によっては11種)ほどに分類されています。1日中陽の当たる湿った土地にしっかりと根を伸ばして生育しており、筒状になったカラフルな葉の中に消化液が溜まっていてい、さそい込まれて中に落ちた虫などをとらえ栄養にしています。筒の内側には下を向いた毛がたくさん生え、落ち込んだ獲物は上がることができず、動くほど中へ中へと入りこんでしまいます。春、新しい葉が出る前後に赤色やクリーム色のユニークな形の花を咲かせます。また冬の間は冬芽を作って休眠します。


【その他】


熱帯性スイレン(昼咲き) Tropical Dat Blooming Water Lilies
 東南アジアからアフリカにかての、おもに熱帯域に分布するスイレンの仲間(スイレン科 スイレン属)、また、それらを元に交配して誕生した園芸品種を「熱帯性スイレン」または「熱帯スイレン」と呼びます。青~紫、桃~紅、白、黄といった豊富な花色を楽しむことができることが、大きな魅力です。高水温でよく成長し花を咲かせますから、日当たりさえよければ、年々暑さが厳しくなる日本の夏には非常に適した園芸植物といえるでしょう。
 育種の中心は、アメリカやタイで、国際的な品評会も行われています。近年、温帯性スイレンとの亜種間交配も次々と発表されており、今後が楽しみです。なお、白色や紅色の花を咲かせる夜咲きの種類もあります。


二千年前の古代ハス大賀ハス
 一九五一(昭和二六)年に植物学者の大賀一郎博士たちは千葉県検見川の東京大学厚生農場内(現・東京大学総合運動公園)の泥炭層を掘り進め、地下約六メートルの青泥層から三月三〇日に種子一粒を発見しました。そのあと四月六日にニ粒の種子を発見し、同年五月六日に大賀博士宅(東京都府中市)で発芽処理が行われ、発芽した実生苗のうちの一株だけがその後順調に成長しました。一九五二年(昭和二七)年七月十八日にはじめて開花し、一九五四(昭和二九)年三月三十一日付で千葉県の天然記念物「検見川の大賀蓮」として指定されています。大賀ハスは他のハスとくらべ性質がやや弱く、特に容器栽培ではあまり花を咲かせません。
 なお、ハスの花は早朝から開き昼には閉じます。そして開きはじめてから四日目に散ります。
 大賀ハスのおもな特徴
■葉の表面はすべすべしており、ざらつかない。
■花弁の条線がはっきりしていない。
現在、各地で大賀ハスとして公開されているもののなかには、大賀ハスとは明らかに違うとおもわれる個体が多く見受けられます。たとえ大賀ハスから採れた種子から成長した株でも大賀ハスとは呼べません。なお、この株は、千葉県農業試験場より当園に譲渡された正真正銘の大賀ハスです。
     一部参照:千葉県ホームページ「大賀ハス何でも情報館


【参考】○は本日初撮影種、◎は科としても初撮影
ビブリス科(Byblidaceae)
◎ビブリス・リニフロラ Byblis liniflora


タヌキモ科(Lentibulariaceae)
○ピンギクラ・プリムラフロラ Pinguicula primuliflora
○ウトリクラリア・ディコトマ Utricularia dichotoma
○ミミカキグサ Utricularia bifida
○イチョウバミミカキグサ Utricularia livida


モウセンゴケ科(Droseraceae)
 ヤツマタモウセンゴケ Drosera binata var. multida f. extrema
 トウカイモウセンゴケ Drosera tokaiensis subsp. tokaiensis
○コモウセンゴケ Drosera spathulata
○イトバモウセンゴケ Drosera filiformis
○ツルギバモウセンゴケ Drosera adelae
 アフリカナガバノモウセンゴケ Drosera capensis
○ドロセラ・マダガスカリエンシス Drosera madagascariensis
 ハエトリグサ Dionaea muscipula


ウツボカズラ科(Nepenthaceae)
○ネペンシス ‘レグレヤナ’ Nepenthes X ‘Wrigleyana’
 (ナンヨウウツボカズラ X フッカーウツボ(ウツボカズラ x ツボウツボカズラ))
 (N. mirabilis X N. X Hookeriana(N. rafflesiana X N. ampullaria)
○ネペンシス・グラキリフロラ Nepenthes graciliflora Syn. N. alata
○ネペンシス ‘ミクスタ’ Nepenthes X ‘Mixta’
 (N. northiana X N. maxima)
○ネペンシス ‘インターメディア’ Nepenthes X ‘Intermedia’
 イビツウツボカズラ Nepenthes ventiricosa
○ネペンシス・マダガスカリエンシス Nepenthes madagascariensis
○ネペンシス・アルボマルギナータ Nepenthes albomarginata


パイナップル科(Bromeliaceae)
 ブロッキニア・レドゥクタ Brocchinia reducuta


サラセニア科(Sarraceniaceae)
○ウスギヘイシソウ Sarracenia alata
 シラフヘイシソウ Sarracenia leucophylla
○モミジヘイシソウ Sarracenia rubra subsp. gulfensis
○コヘイシソウ Sarracenia minor
○ヒメヘイシソウ Sarracenia psittacina
○サラセニア ‘スカーレット・ベル’ Sarracenia X ‘Scarlet Bell’
○ムラサキヘイシソウ Sarracenia purpurea Subsp. venosa


 ゼニゴケ(雌器托) Marchantia polymorpha
 ゼニゴケ(雄器托) Marchantia polymorpha
 横浜南キリスト教会:六ツ川2-1-14
 ヒャクニチソウ Zinnia elegans
 ミンミンゼミ Hyalessa maculaticollis
 スイレン ‘スター・オブ・ザンジバル’ Nymphaea X ‘Star of Zanzibar’ (N. ‘Mornig Star’ X N. ‘Purple Zanxibar’)
 スイレン ‘ペンシルヴァニア’ Nymphaea ‘Pennsylvania’ (N. caerulea X N. nouehali var. znzibariensis)
 ホシザキスイレン Nymphaea nouchali var. zanzibariensis Syn, Nymphaea colorata
 ハス Nelumbo nucifera
○オオアカバナ Epilobium hirsutum
 ヤマトタマムシ Chrysochroa fulgidissima
○ウバタマムシ Chalcophora japonica
◎オオゴキブリ Panesthia angustipennis spadica
◎クロゴキブリ Periplaneta fuliginosa
 ヒオウギ Iris domestica
 オミナエシ Patrinia scabiosifolia
 ミズヒキ Persicaria filiformis
 ヤブミョウガ Pollia japonica
 ハンゲショウ Saururus chinensis
○メハジキ Leonurus japonicus
○コノシメトンボ Sympetrum baccha matutinum
 アイ Persicaria tinctoria
○ウツボグサ Prunella vulgaris subsp. Asiatica
 カラタチ Poncirus trifoliata
 カジノキ Broussonetia papyrifera
 アズキ Vigna angularis
〇カワラケツメイ Chamaecrista nomame
 ケチョウセンアサガオ Datula inoxia
○アジアワタ Gossypium arboreum var. obtusidolium
 キンカン Citrus japonica Syn. Fortunella margarita