内向敷石状と外向敷石状(外出自粛なので…)

内向敷石状と外向敷石状(外出自粛なので写真を整理してみました)
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 内向敷石状(induplicate)、外向敷石状(reduplicate)、どちらも聞きなれない単語ですが、ヤシ科植物に関する記述ではよくみかけます。『敷石状』は覆瓦状に対して使われる植物形態学の用語で、葉や花被の重ならない繰り返し構造を意味します。


カナリーヤシの葉
内向敷石状(∨字断面)

ブラジルヤシ属ヤシの葉
外向敷石状(∧字断面)

ソテツの葉
折り畳み構造はない

(外向敷石状葉の例は良い写真がなかったので、後日差し替えたいと思います)
ヒロハケンチャヤシからブラジルヤシ属ヤシの写真に差し替えました(2/8)

 ヤシ科植物の葉は若い時期には丁度扇子のように折り畳まれており、後に展開して扇状あるいは羽状になるのがこの科の特徴となっています。外観が似ているソテツ科植物の葉では、このような折り畳み構造はありませんので葉を近くで見ることが出来れば明確に区別できます。ヤシ科植物の展開された葉を表から見たときに断面が『∨』字になっているのが内向敷石状、『∧』字になっているのが外向敷石状です。英語ではそれぞれ『V-shaped in cross-section』、『A-shaped in cross-section』です。
 ヤシ科植物はこの敷石構造をみると亜科を判別するのに役立ちます。関東地方辺りでは野外栽培のできない、トウ亜科、ニッパヤシ亜科、ケロクシロン亜科ではすべて外向敷石状(∧)、ココヤシ、テーブルヤシ類、ブラジルヤシなどを含むアレカヤシ亜科もすべて外向敷石状(∧)です。一方、カナリーヤシ、ワシントンヤシ、ビロウ、シュロなどが含まれるコウリバヤシ亜科の植物は、一部の例外を除くと内向敷石状(∨)です。
 コウリバヤシ亜科で外向敷石状(∧)になる種はウチワヤシなど少数で、わが国の屋外では殆どみかけることが出来せんので、『∨』字型断面のヤシの葉を野外で見かけたらほぼコウリバヤシ亜科と考えられます。反対に、琉球、小笠原などでない限り、国内で『∧』字型の断面を持つ葉であれば、アレカヤシ亜科とみて間違いありません。
 なお、コウリバヤシ亜科に外向敷石状(∧)を示す種が含まれるのは、分類に間違いがあるのではと疑いたくなるのですが、遺伝学的手法による検討(Asmussen et al, 2006)でもこれまでの分け方が支持されているようです。


 春はすぐそこですが…。早く集団免疫状態になることを望んでおります。


【参考】
ヤシ科 Arecaceae (Palmae) (∨/∧)
 トウ亜科 Calamoideae (∧)
 ニッパヤシ亜科 Nypoideae (∧)
 コウリバヤシ亜科 Coryphoideae (∨/(∧))
  カナリーヤシPhoenix canariensis (∨)
  ワシントンヤシ Washingtonia filifera (∨)
  ビロウ Livistona chinensis (∨)
  シュロTrachycarpus fortunei (∨)
  ウチワヤシ Licuala grandis (∧:例外)
 ケロクシロン亜科 Ceroxyloideae (∧)
 アレカヤシ亜科 Arecooideae (∧)
  ココヤシ Cocos nucifera (∧)
  テーブルヤシ Chamaedorea elegans (∧)
  ブラジルヤシ Butia capitata (∧)
  ヒロハケンチャヤシ Howea forsteriana (∧)
 ソテツ Cycas revoluta
 寒咲花菜(かんざきはなな) Brassica sp.
【文献】
Dransfield J, Natalie WU, Lange CBA, Baker WJ, Harley MM & LewisCE (2008) Genera Palmarum – The Evolution and Classification of Palms, 219p., Kew Ryal Botanic Garden, UK,, DOI: 10.34885/92, Accessed: 2022-02-05.
Asmussen CB, Dransfield J, Deickmann V, Barfod AS, Pintaud J-C and Baker WJ (2006), A new subfamily classification of the palm family (Arecaceae): evidence from plasmid DNA phylogeny, Bot J. Linnean Soc. 151, 15-38. URL: https://academic.oup.com/botlinnean/article/151/1/15/2420456. Accessed: 2022-02-05.

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