マツ科の写真整理

 マツ科(pinaceae)は、北半球の温帯域を中心にして広く世界中に分布しており、11属約228種が記載されていて(Christenhusz and Byng,2016)、日本の景観に欠かせないマツ属(Pinus)樹種が含まれています(高嶋,1975)。旧分類体系ではマツ亜科(Pinoideae)、トウヒ亜科(Piceoideae)、カラマツ亜科(Laricoideae)、モミ亜科(Abietoideae)の4亜科が識別され、白亜紀初期には既に亜科が成立していたと推定されていますが、近年ではカラマツ亜科とトウヒ亜科をマツ亜科に含めるように改められるなどの変更があって、現在のマツ科の系統樹は凡そ下記のように2亜科となっています(Gernandt et al.,2008)。

             ┌マツ亜属(アカマツ、クロマツ、ラジアータマツ)
         ┌マツ属┤╓╍╍Ducampopinus亜属(*1)(ハクショウ)
        ┌┤   └Strobus亜属(ストローブマツ)
   ┌マツ亜科┤└トウヒ属(トウヒ、エゾマツ)
   │    └カラマツ属(カラマツ)
マツ科┤
   │    ┌─┬ツガ属(ツガ、コメツガ)
   └モミ亜科┤ └モミ属(モミノキ)
        └─ヒマラヤスギ属(ヒマラヤスギ)

*1: Gernandt et al.(2008)ではStrobus亜属に入れられています。

 ソフトウッドと総称されて軽いことが特徴の針葉樹材のなかにあって、松材は比較的重く、特にアカマツ、クロマツの属するマツ亜属では気乾比重0.42~0.52(*2)となっていてハードパインと総称されます。マツ亜属材は、樹脂に富んでいることもあり、耐水性、耐不朽性に優れていることから、湿気に晒される部材としても使用されます(佐伯,1993)。江戸城外堀の石垣を支えてきた胴木(安河内,2009)、旧東京駅丸の内駅舎の木杭(野澤・藤原,2016)等が松材であり、数百年にわたって強度を保っていたことが知られています。

*2:木材を乾燥した時の比重で、乾燥条件により誤差を生じるのですが、目安として針葉樹材(ソフトウッド)では0.5以下、広葉樹材(ハードウッド)では0.5以上であることが普通です。

 現生裸子植物の目の一覧  APG-IV体系による被子植物の目一覧


【マツ目(Pinales) マツ科(pinaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
マツ亜科 Pinoideae マツ属 Pinus
アカマツ アカマツ
Pinus densiflora Japanese Red Pine
タギョウショウ タギョウショウ Pinus densiflora f. umbraculifera Tanyoshou
クロマツ クロマツ
Pinus thunbergii Black Pine
ダイオウショウ ダイオウショウ
Pinus palustris Longleaf Pine
ハクショウ ハクショウ
Pinus bungeana White Bark Pine
トウヒ亜科 Piceoideae トウヒ属 Picea
エゾマツ エゾマツ
Picea jezoensis Yezo Spruce
コロラドトウヒ ‘コスター’ コロラドトウヒ 'コスター'
Picea pungens ‘Koster’ Blue Spruce
ヨーロッパトウヒ ‘ウィルス・ツベルク’ ヨーロッパトウヒ 'ウィルス・ツベルク'
Picea abis ‘Will’s Zwerg’ Dwarf Norway Spruce
ヒメバラモミ ヒメバラモミ
Picea maximowiczii Japanese Bush Spruce
カラマツ亜科 Laricoideae カラマツ属 Larix
カラマツ カラマツ
Larix kaempferi Japanese Larch
モミ亜科 Abietoideae ツガ属 Tsuga
ツガ ツガ
Tsuga sieboldii Southern Japanese Hemlock
コメツガ コメツガ
Tsuga diversifolia Northern Japanese Hemlock
カナダツガ ‘ベネット’ カナダツガ 'ベネット'
Tsuga canadensis ‘Bennett’ Canadian Hemlock
モミ亜科 Abietoideae モミ属 Abies
モミノキ モミノキ
Abies firma Momi Fir
モミ亜科 Abietoideae ヒマラヤスギ属 Cedrus
ヒマラヤスギ ヒマラヤスギ
Cedrus deodara Himalayan Cedar
モミ亜科(Abietoideae) ユサン属 Keteleeria
テッケンユサン テッケンユサン
Keteleeria davidiana David’s Keteleeria

【文献】
Gernandt DS, Magallón S, López GG, Flores OZ, Willyard A and Liston A (2008) Use of Simultaneous Analyses to Guide Fossil‐Based Calibrations of Pinaceae Phylogeny, DOI: 10.1086/590472, Accessed: 2023-11-9.
佐伯浩(1993)この木なんの木, 132p., 海育舎、大津.
高嶋雄三郎 (1975) 松、ものと人間の文化史16、328p、法政大学出版会.
安河内孝(2009)城郭の石垣、コンクリート工学、47、68-69, URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/coj/47/1/47_1_1_68/_pdf, Accessed: 2023-11-9.
野澤紳一郎・藤原寅士良 (2016) 東京駅丸の内駅舎に使用された木杭の耐久性、土木学会論文集C(地圏工学), 72(4), 300-309, DOI: 10.2208/jscejge.72.300, Accessed: 2023-11-9.
Liua J, Zhang S, Nagalingum NS, Yu-Chung Chiang Y-C, Lindstrom AJ and Gong X (2018) Phylogeny of the gymnosperm genus Cycas L. (Cycadaceae) as inferred from plastid and nuclear loci based on a large-scale sampling: Evolutionary relationships and taxonomical implications, Mol Physiol Evol, 127, 87-97, DOI: 10.1016/j.ympev.2018.05.019, Accessed: 2023-11-7.
Christenhusz MJM and Byng JW (2016) The number of known plants species in the world and its annual increase, Phytotaxa. 261(3), 201–217. DOI: 10.11646/phytotaxa.261.3.1, Accessed: 2023-10-05.

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