ウルシ科(Anacardiaceae)は、主として熱帯域に分布し、82属700以上が記載されています(Pell,2004)。ウルシ科の模式種は、カシューナッツノキ(Anacardium occidentale)で、マンゴー(Mangifera indica)、ピスタチオ(Pistacia vera)もこの科に属しています。
ウルシ属植物から採取した漆液をを利用した塗装は古くから行われており、工藤・四柳(2015)の報告によれば、紀元前(約4150年の漆塗櫛が出土しているそうです。漆液は塗布後に空気中の酸素と水分によって、緩やかに重合反応が進むことで高分子化することが明らかになっています(加藤,1962)。この重合高分子の材料となるモノマーが1,2-ジヒドロキシベンゼンの誘導体であることはわかっていて、合成品も作れるようになっている(佐藤ら,1969)ようですが、重合反応が進むためには天然漆液に含まれる酵素「ラッカーゼ」が不可欠であることもあり、天然漆液に匹敵する合成品はいまだに得られていないようです。
維管束植物の分類【概要、小葉植物と大葉シダ植物、裸子植物、被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹】
【 ムクロジ目(Sapindales) ウルシ科(Anacardiaceae)】
【文献】
Pell SK (2004) Molecular systematics of the cashew family (Anacardiaceae). LSU Doctoral Dissertations. 1472, URL: https://digitalcommons.lsu.edu/gradschool_dissertations/1472, Accessed: 2023-08-22.
工藤雄一郎・四柳嘉章(2015)石川県三引遺跡および福井県鳥浜貝塚出土の縄文時代漆塗櫛の年代, Jpn J Histr Bot, 23(2), 55-58, https://www.jstage.jst.go.jp/article/hisbot/23/2/23_55/_article/-char/ja/, Accessed: 2023-08-22.
加藤陸郎(1962)合成うるしの最近の進歩, 高分子, 11(5), 324-325,336, DOI: 10.1295/kobunshi.11.324, Accessed: 2023-08-22.
佐藤誠・鈴鹿清之助・土井孝蔵(1969)ウルシオールジメチルエーテルの合成, 日本科学雑誌, 90(10), 1039-1040, DOI: 10.1246/nikkashi1948.90.10_1039, Accessed: 2023-08-22.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.