カナリーヤシ(Phoenix canariensis)に着生しているタマシダ(Nephrolepis cordifolia)のソーラス(sorus=胞子嚢群)はかなり特徴的でした。
カナリーヤシ Phoenix canariensis
タマシダ Nephrolepis cordifolia
今日は池子経由で神武寺へ。逗子ホームせせらぎの先で通行止めになっていたのですが、ロッククライマーのYさんにご教示戴いたおかげで、無事散策を続けるこど出来ました。ウラジロ科は見かけませんでしたが、このあたりはシダ類が豊富なことを再確認できました。金毘羅山のハイキングコースには石祠があるのですが、よくよく考えるとこれが湘南の大蛇伝説に縁のある七諏訪社一の社思われます。
暖地性のシダであるコシダをここしばらく探していたのですが、三浦半島での普通種とは言えそうにないようです。そこで、ターゲットをコシダの属するウラジロ科にひろげると下記の記述をみつけました。
現在の『衣笠公園』は平地の運動場なので、当時の衣笠公園は現在の衣笠山公園であると仮定して、確認してきました。衣笠山公園はシダ類も含めてよく管理されているようでしたが、現在の北側斜面一帯はモウソウチクの林となっていてウラジロやコシダよりも日陰を好むシダ類が繁茂しているだけでした。恐らく竹林を整備した際に乾燥地を好むウラジロは衰退し、耐陰性がより高く湿地を好むシダ類に置き換わって来たものと思われます。温暖化が進む近年ですので、ウロジロ科のシダ類が絶滅しているとは思えませんので、次にはシダ類で覆われていた記憶がある津久井浜浅間神社の若宮などを尋ねたいと思います。
ウロジロ科の写真としては、とりあえず正月飾り用の乾燥標本を掲げておきます。
『小葉植物と大葉シダ植物の分類』
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しら露も
こぼさぬ萩の うねり哉 はせを |
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注:『しら露も こぼさぬ萩の うねり哉』松尾芭蕉、最晩年の句で、
神奈川区の『子安』という地名の由来を調べて見た。まずは、手元にあった『神奈川区誌』を調べて見たが、それらしい記載はなかったので、ウェブを検索してみたところ、吉祥山惠光院相應寺の地蔵尊に由来するのではないかという説をみつけた。早速、現地を確認し、改めて神奈川区誌の該当箇所を再確認したが、やはりそれらしい記述はなかった。
そこで、『新編武蔵風土記稿』を繙くと、巻之六十七橘樹郡之十神奈川領の項には下記の記載があった。
○東子安村 西子安村 新宿村 東西子安新宿の三村はもと一村にして、元祿の頃より今のごとくに別れしかば(中略)正保の頃にも一村にしてたゞ子安とのみいへり、元祿の郷帳に至りて、東西子安新宿と三村に分ち書すれば此間にかく唱へ始しなるべし、又村名の起れる所も詳ならず、(後略)
これだけで、断言することはできないが、どうやら『名称の由来はよくわからない』というのが答えの様である。
【参考】
吉祥山惠光院相應寺:神奈川区七島町144
子育地蔵尊、地神塔、庚申塔、地蔵群
大口一番街
八重地蔵尊:神奈川区子安通1丁目
八重地蔵の来歴について
此のお地蔵さまは今を去る二十年前即ち昭和三十九年の盛夏当時小学校で夏休行事として早朝ラジオ体操が行われていました。当時5才の岡沢八重子ちゃんは兄さんと姉さんの後について体操に行く途中、たま〱停車中の大型トラックの前を走り抜こうとした時、そのトラックが発車し下敷となって死亡されて了ったのです。其の現場のすさまじさは悲愴と言うか、凄惨と申すべきか、家族は申すまでもなく、居あわせた町民は皆狂乱状態となりました。直ちに其の足で我々町民は警察へ、市当局へと怒りをこめて雪崩こみました。市当局は慌て出し、其の日の中に土木局次長殿が見えて、道路の約半分を子供の遊び場として今日に及んで居ります。
我々町民は八重子ちゃんの犠牲により公園が出来、子供の遊び場として又憩いの場として親しまれていることを永遠に忘れることなく、又、八重子ちゃんのご冥福を祈らなければならないと思います。
昭和五十九年八月
東浜町内会
【文献】
神奈川区誌編纂刊行実行委員会(1977)神奈川区誌、628+59p.
林述斎・間宮士信編(1828)新編武蔵風土記稿巻之六十七橘樹郡之十神奈川領, URL: https://dl.ndl.go.jp/pid/1214845/1/132, accessed: 2023-12-08.
今日もコシダを探して、円海山周辺の尾根筋を重点的に歩いてみました。リョウメンシダやイノデの群落は良好に生育していましたが、コシダは未発見。もっとも、このまま温暖化が進めばコシダも(再)侵入してくるかも知れません。
『小葉植物と大葉シダ植物の分類』
手持ち文献にあたっていて、50年ほど前には『上郷の雑木林下岩上に(コシダの)小群落あり』(出口,1698)との記述をみつけましたので、今日は横浜自然観察の森を尋ねました。自然観察センターで伺ったところでは、この地区で確かにコシダは自生しているようなのですが、今日は確認できませんでした。
途中で通りかかった金沢自然公園シダの谷は、多数のシダ類が繁茂していたのですが、コシダにとっては湿潤すぎるのと日照も不足している環境ですので、ここでも確認はできませんでした。
『小葉植物と大葉シダ植物の分類』
シダ類の写真を整理するうちに、松山や広島では普通に見かけたコシダの写真が一枚もないことに気づきました。シダ類は神武寺周辺に種類の多いことが知られているのですが、鷹取山から十州望を辿るハイキングコースが通行止めになって久しいので、今日は鷹取山までを歩いてみました。この辺りはコモチシダやベニシダの多いことが特徴ですが、コシダやウラジロの自生はないようでした。
『小葉植物と大葉シダ植物の分類』
トクサ科(Equisetum)は、痕跡的ではありますが葉脈を持っているため大葉植物亜門(Euphyllophytina)の所属で、他の全てのシダ植物に対して姉妹群と考えられています。現世種はトクサ属(Equisetum)の1属15種(+交配種2種)のみで、かつては同じ科として配置されていた化石種蘆木科とは別科となっています。現生では唯一のトクサ属は、3億4200万年前(石炭紀初頭)に他のシダ類から分岐し、白亜紀中頃までに3つの亜属を分岐し、我国でもなじみ深いスギナ(Equisetum arvense)が現れたのは、トクサ属の中では比較的新しい新第三期中新世であったと、分子時計を用いて推定されています(Christenhusz et al.,2021)。化石種を含むトクサ亜綱の系統関係は下記が提案されています。
*1:石炭紀に栄えたロボク科が絶滅した後にペルム紀初期に現れてペルム紀半ばには絶滅した化石で知られる3種(Paracalamitina striata, Cruciaetheca patagonica, Cruciaetheca feruglioi)で、北半球のアンガラ大陸(シベリア大陸)と南半球のゴンドワナ大陸の両方で化石が発見されています(Naugolnykh,2002; Cúneo and Escapa,2006)。ちなみに、この後ペルム紀後期にかけてこれら大陸の衝突により超大陸パンゲアが形成されていくことになります。
*2:現生のトクサ綱では最も古く(ジュラ紀初頭)に分岐したと推定される南米に分布する種です。ミズドクサ亜属に入れられていたこともあるようですが、他の現生2亜属は白亜紀末期以降に登場したと推定されています。
【トクサ科(Equisetum)】
【文献】
Christenhusz MJM, Chase MW, Fay NF, Hidalgo O, Leitch IJ, Pellicer J and Viruel J (2021) Biogeography and genome size evolution of the oldest extant vascular plant genus, Equisetum (Equisetaceae), Ann Bot, 127, 681–695, DOI: 10.1093/aob/mcab005, Accessed: 2023-11-22.
Elgorriaga A, Escapa IH, Rothwell GW, Tomescu AMF and Cúneo NR (2018) Origin of Equisetum: Evolution of horsetails (Equisetales) within the major euphyllophyte clade Sphenopsida, Am J Bot, 105(8), 1286–1303. DOI: 10.1002/ajb2.1125, Accessed: 2023-11-19.
Marais DLD, Smith AR, Britton DM, and Pryer KM (2003) Phylogenetic Relationships and Evolution of Extant Horsetails, Equisetum, Based on Chloroplast DNA Sequence Data (rbcL and trnL‐F), Int J Plant Sci, 164(5), 737–751, URL: https://www.jstor.org/stable/10.1086/376817, Accessed: 2023-11-26.
Naugolnykh SV (2002) Paracalamitina striata – A newly reconstructed equisetophyte from the Permian of Angaraland, J Paleontol, 76(2), 377-385, DOI: 10.1086/497652, Accessed: 2023-11-26.
Kelber K-P and van Cittert JHAvK-v (1998) Equisetites arenaceus from the Upper Triassic of Germany with evidence for reproductive strategies, Rev Palaeobot Palynol, 100, 1-26, Accessed: 2023-11-26.
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p12-14.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: 10.1111/jse.12229, Accessed: 2023-11-19.
Puttick MN, Morris JL, Williams TA, Cox CJ, Edwards D, Kenrick P,Pressel S, Wellman CH, Schneider H, Davide Pisani D and Donoghue PCJ (2018) The Interrelationships of Land Plants and the Nature of the Ancestral Embryophyte, Current Biology, 28, 733–745, DOI: 10.1016/j.cub.2018.01.063, Accessed: 2023-11-19.
イワヒバ科(Selaginellaceae)は、旧来の分類体系ではシダの仲間とされてきましたが、分子生物学手法による解析の結果、胞子により繁殖するシダ類と種子植物が分岐するより更に遡った時代に維管束植物から分岐したグループとして分離されました。現在では小葉植物亜門ヒカゲノカズラ綱イワヒバ目に置かれている1属約700種からなるグループです(PPG-I,2016)。科内の整理は途上にあるようですが、7つのクレードが識別されています(Weststrand and Korall,2016)。
古い形質を残しているグループではありますが、イヌカタヒバ(Gemmiferous Spikemoss)はそれほど珍しいものではなく、水分条件の良い民家の石垣等に着生しているのを良くみかけます。
維管束植物の分類【シダ類】【裸子植物】【被子植物】 【陸上植物】
【イワヒバ科(Selaginellaceae)】
【文献】
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p7-10.
Weststrand S and Korall P (2016) Phylogeny of Selaginellaceae: There is value in morphology after all!, Am J Bot, 103, 2136-2159, DOI: 10.3732/ajb.1600156, Accessed: 2023-11-19.
Pteridophyte Phylogeny Group (2016) A Community-derived Classification for Extant Lycophytes and ferns, J System Evol, 54(6), 563–603, DOI: , Accessed: 2023-11-19.