秀樹」カテゴリーアーカイブ

大船フラワーセンターの玉縄桜など(2022年3月13日)

 そろそろ見頃かと尋ねた大船フラワーセンターでは、玉縄桜が満開を迎えていました。2019年の台風19号被害を受けた原木も少しずつ元気を取り戻しつつあるようでした。
 昨年来、気になっていたButia属のヤシは、種子が沢山落ちていましたので、確認できました。種子の形が全体的に球形に近く、3つある発芽孔には窪みがありませんので、間違いなくブラジルヤシ Butia capiatataと言って良いようです。
 帰りは、北鎌倉からハイキングコースに入って天園、朝比奈を経由しましたが、天園から瑞泉寺に抜けるルート未だに通行止めになっています。


TamanawaZakura_genboku
玉縄桜原木
TamanawaZakura
玉縄桜

ブラジルヤシ


椿


木瓜



【参考】
 桜 Cerasus spp.
  玉縄桜たまなわざくら
  寒緋桜 x 唐実桜 ‘春めきCerasus canpanulata x Cerasus psuudo-cerasus
  阿亀(おかめ)Cerasus campanulata x Cerasus incisa cv. ‘Okame’
  啓翁桜(けいおうざくら)Cerasus serrulata ‘Keio-zakura’
  寒緋桜(かんひざくら)Cerasus campanulata
  マメザクラ ‘雪嶺(せつれい)‘ x 八重咲寒緋桜 Cerasus incisa cv. ‘Setsurei’ x Cerasus canpanulata
  大寒桜(おおかんざくら)Cerasus x kanzakura cv. ‘Oh-kanzakura’
 椿 Camellia japonica
  紅侘助べにわびすけ
  草紙洗そうしらい
  緋の蓮華ひのれんげ
  加茂本阿弥かもほんあみ
  菊更紗きくさらさ
  白露錦はくろにしき
  侘助わびすけ
  京小町きょうこまち
  白角倉しろすみくら
  紅車べにわぐるま
  明石潟あかしがた
  昭和侘助しょうわわびすけ
  太陽錦たいようにしき
  紅乙女べにおとめ
  相模五色椿べにおとめ
 ハルサザンカ Camellia x vernalis
  笑顔えがお
 木瓜 Chaenomeles speciosa
  モナリザ
  長寿冠ちょうじゅかん
  ピンクレディー
  クレナタイン
  雲の峯
  名古屋寒木瓜
  茜
  白扇はくせん
  白蝶殿はくちょうでん
  大八州おおやしお
 大船観音
 ツゲ Buxus microphylla var. japonica
 シロバナジンチョウゲ Daphne odora f. alba
 ヒメウズ Semiaquilegia adoxoides
 ラナンキュラス Ranunculus asiaticus
 トキワナズナ(イベリス) Iberis sempervirens
 ハーデンベルギア Hardenbergia violacea
 アラセイトウ Matthiola incana
 ネモフィラ Nemophila menziesii
 アセビ Pieris japonica
 プラタナス Platanus sp.
 ウメ Armeniaca mume cv. ‘月影’
 ムスカリ Muscari neglectum
 ヒイラギナンテン Mahonia japonica
 アマナ Amana edulis
 ハナサフラン(クロッカス) Crocus vernus
 スハマソウ Hepatica nobilis var.
japonica
f. f. variegata
 キバナセツブンソウ Eranthis hyemalis
 スノードロップ Galanthus nivalis
 ペチコートスイセン Narcissus bulbocodium
 キブサスイセン Narcissus tazetta ‘Grand Soleil d’Or’
 ツルニチニチソウ Vinca major
 ベルベリス・サングイネア Berberis sanguinea
 深山含笑 Michelia maudiae
 アーモンド Prunus dulcis
 セイヨウサンシュユ Cornus mas
 ウンナンオウバイ Jasminum mesnyi
 オウバイ Jasminum nudiflorum
 モンステラ Monstera deliciosa
 フィロデンドロン cv.’クッカバラ・オージー’ Philodendron xanadu cv. Kookaburra Aussie’
 ブラック・バットフラワー Tacca chantrieri
 ドンベヤ・ワリッキー Dombeya wallichii
 ブーゲンビリア Bougainvillea sp.
  バーバラ・カースト Barbar Karst
  メリー・パーマー Mary Palmer
  オォーラーラ Oo-La-La
  サンデリアーナ Sanderiana
 金花茶きんかちゃ Camellia petelotii (syn. C. chrysantha)
 ラナンキュラス Ranunculus sp.
 カエンカズラ Pyrostegia venusta
 マンゴー Mangifera indica
 ライオンゴロシの一種 Uncarina grandidieri
 スパイダーガム Eucalyptus Lehmannii
 アカシア・ブアマニー Acacia boormanii
 ハケア・セリケア Hakea Sericea
 シャクナゲ Rhododendron sp. “太陽” Rhododendron cv. “Taiyoh”
 オオイヌノフグリ Veronica persica
 タネツケバナ Cardamine scutata
 ヒマラヤザクラ Cerasus cerasoides
 リキュウバイ Exochorda racemosa
 サンシュユ Cornus officinalis
 雪割草 Hepatica sp.
 ジャノメエリカ Erica canaliculata
 カナメモチ Photinia glabra
 ショカッサイ Orychophragmus violaceus
 タチツボスミレ Viola grypoceras
 ヒイロタケ Pycnoporus coccineus
 十王岩
 逗子方面(十王岩より)
 栄螺を思わせる奇岩
 由比ヶ浜方面(六国峠(天園)より)
 日源荘碑
 タイワンリス Callosciurus erythraeus thaiwanensis

三浦海岸の桜まつり(2022年)

 三浦海岸の桜まつり、今年は二人で尋ねました。
  2012年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年


【参考】
 河津桜(かわづざくら)Cerasus x kanzakura ‘Kawazu-zakura’
 寒咲花菜(かんざきはなな) Brassica sp.
 ノゲシ Sonchus oleraceus
 カワウ Phalacrocorax carbo

鷹取山周辺では~2022年2月27日

 夕方の買い物に出る際に鷹取山を経由してみました。ジンチョウゲの開花ももうすぐです。


【参考】
 ホソバヒイラギナンテン Mahonia fortunei
 オニシバリ Daphne pseudomezereum
 キブシ Stachyurus praecox
 チャカイガラタケDaedaloepsis tricolor
 シロダモハコブフシ
 リュウノヒゲ Ophiopogon japonicus
 シハイタケ Trichaptum abietinum
 鷹取山山頂
 キヅタ Hedera rhombea
 カラスザンショウ Fagara ailanthoides
 ウメ Armenica mume
 アセビ Pieris japonica
 アオキ Aucuba japonica
 ペラルゴニウム Pelargonium cv.
 イワヒバ Selaginella tamariscina
 ワイヤープランツ Muehlenbeckia axillaris
 ジンチョウゲ Daphne odora

一雨ごとに春めく追浜で

 昨日からの雨も上がって、少しずつ温かくなってきました。鷹取山ではヤツデの花はすっかり終わり、スイカズラも冬の葉に代わって春の葉が目立つようになっています。花の種類はまだ多くはないのないのですが、オニシバリの開花が進んでいました。ジンチョウゲが香る季節はもうすぐです。


【参考】
 オニシバリ Daphne pseudomezereum
 ヤツデ Fatsia japonica
 スイカズラ Lonicera japonica
 ウメ Armenica mume
 石切場跡
 弥勒磨崖仏
 前浅間
 ヤマノイモ Dioscorea japonica
 シュロ Trachycarpus fortunei

春はどこまで?

 今冬はラニーニャの影響のためか、最近にしては寒いのですが、春は遠くないと思い、午後から横浜イングリッシュガーデンの開花状況を確認してきました。ミモザやカワヅザクラが咲き始めていましたし、帰りに立ち寄った金沢八景の御伊勢山ではオニシバリも咲いていました。


【参考】
 ギンヨウアカシア Acacia baileyana
 紅梅 Armenica mume
 ロウバイ Chimonanthus praecox
 河津桜(かわづざくら)Cerasus x kanzakura ‘Kawazu-zakura’
 マンサク Hamamelis japonica
 十月桜 Cerasus x subhirtella cv. Autumnalis
 スイセン Narcissus ‘February Gold’
 子福桜 Cerasus x ‘kobuku-zakura’
 スノードロップ Galanthus nivalis
 エレガンスみゆき Cerasus x Armenica mume‘Elegance Miyuki’
 ムーシュウチュウ(木綉球) ‘ステリーレ’ Viburnun macrocephalum ‘Sterile’
 ヒイラギナンテン ‘黄香’ Mahonia japonica
 ノボロギク Senecio vulgaris
 ミツマタ Edgeworthia chrysantha
 オニシバリ Daphne pseudomezereum

ヤシ科Trachycarpeae連の属への検索表(外出自粛なので…part3)

【概要】
 わが国で地植え可能なヤシ科植物の多くはコウリバヤシ亜科Trachycarpeae連に属しており、以下の9種は関東あたりでもよくみかけます。
カナリーヤシ(Phoenix canariensis)は、葉が羽状で樹高10mを超える。幹にはシダ類の着生することが多い。
シンノウヤシ(Phoenix roebelenii)は、葉が羽状の小型ヤシで鉢植えの観葉植物としても利用される。
シュロ(Trachycarpus fortunei)は、葉が扇状で、葉柄基部に繊維網を密に生じる。
 トウジュロはシュロのなかでも葉先が下垂しない園芸種。シュロとの中間型が存在し、実生育成するとシュロと区別がつかない個体を生ずることがあるためシュロと同一種と見做されている。
チャボトウジュロ(Chamaerops humilis)は、トウジュロに似るが、葉の先端がさらに2裂する。
カンノンチク(Rhapis excelsa)は、幹は細身で竹に似ており、葉は扇状で6-10裂する。
シュロチク(Rhapis humilis)は、カンノンチクに似るが、扇状葉は7-18裂する。
ビロウ(Livistona chinensis)は、葉身が規則正しく分裂、先端はさらに2裂し、葉柄の基部には逆刺を有する。花序にはビロード毛(tomentum)が密に宿存する。
 オガサワラビロウ(L. boninensis )は、小笠原諸島に広く分布し、果実の長径が最大30mmとビロウより大きいこと、花序のビロード毛を欠くこと等で識別される。長くビロウの変種(L. chinensis var. boninensis )とされてきたが、Dowe(2001)により北村四郎の記載当初の通りに独立種とすることが提案され、PalmWEbもこれを受け入れている。
 メイジマビロウは、小笠原諸島の聟島列島、母島列島の姪島などに分布する。オガサワラビロウより小型で葉柄基部の逆刺が殆ど目立たない。分類的な位置は確定していない様だが、遺伝的にオガサワラビロウから隔離していることが確認されているため、島間の移動自粛など保全に際しては配慮が必要とされている。
ワシントンヤシ(Washingtonia filifera)は、扇状の葉に白い糸状の繊維が垂れ、樹高20mに達する。オニジュロの別名がある。
ワシントンヤシモドキWashingtonia robusta
)は、ワシントンヤシより細身で、幹は概ね電柱より太くならならず、ゆるやかに湾曲することが多い。
  ヤシ科植物の写真整理 ヤシ科植物原産地マップ 内向敷石状と外向敷石状 PALMeweb
  亜科への検索表 夢の島熱帯植物 板橋区立熱帯環境植物館 サムエル・コッキング苑



 コウリバヤシ亜科(Coryphoideae)は北半球の熱帯起源と考えられており、わが国でもなじみ深いシュロやビロウが含まれています。ここでは、これらが含まれるTrachycarpeae連の属への検索表を和訳してみたのですが、通常、ヤシ科の花を近くで観察することは簡単ではないので、花序等に関する記述を割愛すると識別できなくなってしまうことに気づきました。また、チャボトウジュロ属は元の検索表では全く触れられていませんでしたので、わが国を念頭に加筆したのが上述の概要です。小笠原諸島、南西諸島や九州南端に分布するクロツグはTrachycarpeae連ではないので触れませんでしたが、コウリバヤシ亜科Caryoteae連に分類されています。
 なお、関東地方の暖地では、アレカヤシ亜科に属するブラジルヤシ属も普通にみることができますし、南西諸島であればヤエヤマヤシ、ノヤシが自生しており、この2種もアレカヤシ亜科です。さらに、西表島のマングローブ林ではニッパヤシ(ニッパヤシ亜科)もみられるそうです。


ヤシ科コウリバヤシ亜科Trachycarpeae連の属への検索表 (Dransfield et al.,2008)
1.雌器は全長で遊離した3つ心皮からなる。
(Rhapidinae亜連)
     ——————————————2
1.雌器は基部では遊離するが、花糸の先端部で合着した3つ心皮からなる。
(Livistoninae亜連と亜連の所属未定のTrachycarpeae連)
     ——————————————6
2.葉は背軸(裏側)の折れ目に沿って裂けて、外向敷石状と裂片となる
     ——————————————36.Guihaia
2.葉は向軸(表側)の折れ目に沿って裂ける
     ——————————————3
3.雄蕊の花糸は遊離する
     ——————————————4
3.花糸は輪状に合着あるいは花冠着生する
     ——————————————5
4.葉鞘繊維は棘状ではなく、葉身は向軸の折れ目に沿って裂け、花序は葉鞘に沿って生ずる。種子は種皮に深く侵入する。
     ——————————————37.Trachycarpus(シュロ属)
4.葉鞘繊維は棘状。葉身は折れ目の間で裂け、花序は葉鞘の間深くに生ずる。種子は種皮に深く侵入することはない。
     ——————————————38.Rhapidophyllum
5.幹は細身で竹に似る。葉は折れ目の間で裂けて、いくつかの裂片となり、大抵は切り取ったような先端(切形)となる。螺旋状の花被は多汁で肉厚な革質。萼片は合着する。雄蕊の花糸は遊離し、花冠着生する
     ——————————————40.Rhapis(カンノンチク属)
5.幹は頑丈で竹に似ることは殆どない。葉身は向軸の折れ目に沿って鋭頭あるいは鈍裂の裂片に裂ける。螺旋状の花被は膜質ないし革質。萼片は明らかに鱗状、雄蕊の花糸は合着し花冠着生する。
     ——————————————39.Maxburretia
6.葉身は裂けずダイヤモンド型、羽状脈で、中肋は明瞭。葉柄と葉身の基部には鉤状の鋸歯がある。花序はそれぞれ膨大した苞葉を持つ。果実はコルク質の疣があり、内胚乳は種皮により不規則に深く貫入されている。
     ——————————————43.Johannesteijsmannia
6.葉身は断裂し、断裂しない時にもダイヤモンド型かつ基部に鋸歯をもつことは殆どない。果実表面は平滑で、コルク質の疣があるときにも葉身は断裂する。
     ——————————————7
7.葉身は背軸(裏側)の折れ目に沿って、(稀に)単一または複数の折り畳みに断裂するが、大抵は楔状の断裂となるかまたは断裂しない。
     ——————————————42.Licuala
7.葉身は向軸(表側)の折れ目に沿って、単一あるいは複数の折り畳みに断裂するが、切形には断裂しない。
     ——————————————8
8.花序は大抵長い花柄を伴い、先端に向かってのみ、またはごく基部から軸方向に2-4倍の長さでで分枝する。先端に向かってのみ分枝し、葉腋ごとにひとつ以上の花序を生ずることもある。花冠は雄蘂群が明らかに露出する開花後に早落する。種皮は貫入しない。
     ——————————————51.Pritchardia
8.花序は先端に閉じ込められずに分枝する。花冠は開花後に早落することはないが、極めて稀に遅れて脱落する。
     ——————————————9
9.苞葉は側面で裂けて剣型に垂下し、花弁は比較的大きく、平らな芽鱗に覆われ、内表面に溝はない。開花時に強く反り返る。花柱は雌器種子部分の長さの約3倍に伸長する。花と果実には小花柄があり、果実には芽鱗が宿存する。
     ——————————————52.Washingtonia(ワシントンヤシ属)
9.花序の苞葉は菅状で、開花時に剣状の鞘に裂けることはない。花弁は平らでも芽鱗状でもなく、内表面の葯に一致する溝がある。花糸の長さは種子部分と同じか、時として2-2.5倍(Serenoa属)。
     ——————————————10
10.果実は大きく平滑(成熟時に直径約5cm)。中果皮は海綿状で、短い繊維が内果皮の近傍か密着して癒着する。内果皮は三角形の基部の突起物を伴い、ひとつは丸く、その他の3つは竜骨状となる。胚は偏心し頂部優勢となる。内胚乳は著しく浅裂した種皮の貫入を伴う。
     ——————————————45.Pritchardiopsis
10.果実は様々で、大きい時はコルク質の疣を伴うことがある。内果皮は平滑で竜骨状にはならず、基部に突起物はない。胚は外側胚あるいは基底胚で、種皮の貫入はある場合とない場合がある。
     ——————————————11
11.葉柄および屡々葉脈は丈夫な鋸歯を伴う。果実のうち頂部の心皮は不稔。種子は内果皮に包まれる。
     ——————————————50.Copernicia(ロウヤシ属)
11.葉柄は突起物がある場合とない場合があり、鋸歯を欠く、基底胚は通常不稔となる。種子は同種の内胚乳を伴い、時として種皮が貫入する。
     ——————————————12
12.種皮が内胚乳に貫入する
     ——————————————13
12.種皮は内胚乳に貫入しない
     ——————————————15
13.幹は孤立し、時として中位で片面が膨大する。葉柄には突起物はない。雄蕊は花冠を超えて突出する。
     ——————————————49.Colpothrinax
13.幹は束生し、直立または匍匐し分枝する。葉柄は棘状で、葉身は細かいか粗い鋸歯を伴う。雄蕊は花冠を超えて突出しない。
     ——————————————14
14.茎(幹)は直立し、密に叢生する。花は扇状集散花序(多出集散花序)で一組あるい単独で小軸の先端に向かって配置する。鱗状の萼片は明瞭あるいは基部で合着する。雄蕊は基部の環状部に合し、遊離部は短く切形で狭い。果実は球形で縫線は短く、かろうじて種子長の半分より長い程度。
     ——————————————46.Acoelorrhaphe
14.茎(幹)は匍匐性で、稀に直立する。花は単生か時として2集花で、萼は菅状で3裂し、雄蕊は基部で合着し、遊離部は漸次狭まる。果実は長楕円形で、縫線は枝分かれし種子の長さまで延長する。
     ——————————————47.Serenoa
15.萼片は明瞭に鱗状。
     ——————————————48.Brahea
15.萼片は基部で合着する。
     ——————————————16
16.葉身は深く分裂して裂片となり。さらに浅く分裂し単一のて裂片となる。雄蕊群は明らかな環状となり、厚く基部では殆ど遊離する。花糸は遊離し細く丸く膨大することはない。雌器は先端が糸紡状。果実は非常に大きく(少なくとも直径6cm)、通常コルク質の疣がある。
     ——————————————44.Pholidocarpus
16.葉身は規則正しく単一の裂片に分裂する。きわめて稀に複合の裂片となる(L. saribus, L. exigua)。雄蕊群環は頂部で扇状に広がり花冠着生する。雌器は子房室の上で最も広くなり、花柱に向かって急に狭くなる。果実は小さく(稀に成熟時の直径が4cmを超える)平滑。
     ——————————————41.Livistona(ビロウ属)


【参考】
 我が国で地植え栽培可能なヤシとその他の名が知れている(一部の)ヤシのリストです。ヤシ科で最も多様化しているのはアレカヤシ亜科で、ヤシ科の半分以上の属はアレカヤシ亜科に属しますが、このリストでは北半球起源とされるコウリバヤシ亜科のほうが多くなっています。
          ヤシ科の亜科への検索表
Coryphoideae (コウリバヤシ亜科)
 Sabaleae (サバル連)
 Cryosophileae連
 Phoeniceae (ナツメヤシ連)
   Phoenix属
    カナリーヤシ (P. canariensis) ∨
    ナツメヤシ (P. dactylifera) ∨
    シンノウヤシ (P. roebelenii) ∨
 Trachycarpeae (シュロ連)
  Rhapidinae (シュロチク亜連)
   Chamaerops属
    チャボトウジュロ (C. humilis) ∨
   Trachycarpus属
    シュロ (T. fortunei) ∨
     (トウジュロ:園芸品種) ∨
   Rhapis属
    カンノンチク (R. excelsa) ∨
    シュロチク (R. humilis) ∨
  Livistoninae (ビロウ亜連)
   Livistona属
    ビロウ(枇榔) (Livistona chinensis var. subglobosa) ∨
    オガサワラビロウ (Livistona boninensis) ∨
    メイジマビロウ ∨
   Licuala属
    ウチワヤシ (Licuala grandis) ∧
  亜連未分類
   Washingtonia属
    ワシントンヤシ (W. filifera) ∨
    ワシントンヤシモドキ (W. robusta) ∨
 Chuniophoeniceae連
 Caryoteae連
   Arenga属
    クロツグ (A. engleri) ∨
 Corypheae (コウリバヤシ連)
 Borasseae (パルミラヤシ連)
Arecoideae (アレカヤシ亜科)
 Cocoseae (ココヤシ連)
  Arecinae亜連
   ビンロウ(檳榔) (Areca catechu) ∧
  Attaleinae亜連
   ブラジルヤシ (Butia capitata) ∧
   ヤタイヤシ (Butia yatay) ∧
   ココヤシ (Cocos nucifera) ∧
 Areceae (アレカヤシ連)
  Carpoxylinae亜連
   ヤエヤマヤシ (Satakentia liukiuensis) ∧
  Clinospermatinae亜連
   ノヤシ (Clinostigma savoryanum) ∧
  Dypsidinae亜連
   アレカヤシ(ヤマドリヤシ) (Dypsis lutescens) ∧
  ∨:内向敷石状に葉身が断裂、∧:外向敷石状に葉身が断裂


【文献】
Dransfield J, Natalie WU, Lange CBA, Baker WJ, Harley MM & LewisCE (2008) Genera Palmarum – The Evolution and Classification of Palms, 219p., Kew Ryal Botanic Garden, UK,, DOI: 10.34885/92, Accessed: 2022-02-06.
北村四郎・村田源(1979)原色日本植物図鑑木本編Ⅱ、保育社、東京、545p.
森林総合研究所森林遺伝研究領域、小笠原諸島における植栽木の種苗移動に関する遺伝的ガイドライン、URL: https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/chukiseika/documents/3rd-chuukiseika25.pdf, Accessed: 2022-02-12.
Ohtani M,Tani N and Yoshimaru H (2009)Isolation of polymorphic microsatellite loci in Livistona chinensis (Jacq.) R.Br. ex Mart. var. boninensis Becc., an endemic palm species of the oceanic Bonin Islands, Japan, Conserv. Genet., 10:997–999, DOI: 10.1007/s10592-008-9671-5, Accessed: 2022-02-12.
Dowe JL (2001) Studies in th genus Livistona (Cryphoideae: Arengaceae), PhD thesis, Janes Cook University, URL: https://researchonline.jcu.edu.au/24103/, acesses: 2022-02-13.

ヤシ科の亜科への検索表(外出自粛なので…part2)

【概要】ヤシ科の5つの亜科の特徴
 トウ亜科は、果実(子房)が瓦状の鱗片で覆われる。
 ニッパヤシ亜科は、地上の幹が確認できず、雌花が頂生する。
 コウリバヤシ亜科は、内向敷石状に葉が裂けていることが多い。
 ケロクシロン亜科は、外向敷石状で雌雄異株のことが多い。
 アレカヤシ亜科は、外向敷石状で雌雄同株のことが多く、花は3花が集合する。


 手持ち資料では適当な検索表がなかったので和訳したのですが、英語の方が寧ろわかりやすかったかも知れません。述語には誤訳もあるかと思います。でも意味合いはこの様な感じで、その概要は上記です。


ヤシ科-亜科への検索表 (Dransfield et al,2008)
1.子房と果実は瓦状の鱗片に覆われている。花は両性花あるいは単性花で、稀に二形花柱性、単生花あるいは2集花(dyads)で配列し、稀に扇状集散花序(多出集散花序)を形成する。
     —————————————トウ亜科(Calamoideae)
1.子房と果実は無毛、または、楯形か基部で付着している鱗片、毛、コルク質の疣、棘などを有するが、瓦状の鱗片はない。花は両性花あるいは単性花で、しばしば両性花で、単生花あるいは3集花(triads)で配列、あるいは扇状集散花序(多出集散花序)を形成する。
     —————————————2.
2.雌花は頂生し、離生して大きく非対称な心皮を3(-4)個、花被を6個有する。雄花は雌花の下方の花序の先端の穂状花序に集生し、それぞれ離生する線形の花被を6個、堅固な柄上に3個の葯を配する。
     —————————————ニッパヤシ亜科(Nypoideae)
2.雌花は頂生せず、もし頂生しても雌雄異株で複数部分に分かれる。雄花は遊離または合着する雄蕊を有し、ごく稀に堅固な柄上に葯を生ずる。
     —————————————3.
3.葉は向軸の折れ目に沿って裂けて内向敷石状の裂片となった小葉を生じる、扇状、羽状複葉、二回羽状複葉、稀に折れ目の間で避けたり、背軸の折れ目に沿って裂け(常に扇状とな)る。または、先端小葉が裂けずに内向敷石状の裂片となる。
     —————————————コウリバヤシ亜科(Coryphoideae)
          → Trachycarpeae連の属への検索表
3.葉は背軸の折れ目に沿って裂けて外向敷石状の裂片となった小葉を生じる、常に羽状複葉で、全て二裂し羽状の畝を生じる。
     —————————————4.
4.花は通常は単性で雌雄異株、稀に雌雄同株で、単軸性の株となる。
     —————————————ケロクシロン亜科(Ceroxyloideae)4.花は常に単性で、通常は雌雄同株、稀に雌雄同株で、花は3花が集合する(triads)、それぞれの花は雌花1花、雄花2花で構成される。ごく稀に縦に配列し(acervuli)、さらに稀に単生する。
     —————————————アレカヤシ亜科(Arecoideae)


【文献】
Dransfield J, Natalie WU, Lange CBA, Baker WJ, Harley MM & LewisCE (2008) Genera Palmarum – The Evolution and Classification of Palms, 219p., Kew Ryal Botanic Garden, UK,, DOI: 10.34885/92, Accessed: 2022-02-06.
下野綾子, 植物の繁殖-自殖?他殖?, URL: https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0816.html, Accessed: 2022-02-08.

内向敷石状と外向敷石状(外出自粛なので…)

内向敷石状と外向敷石状(外出自粛なので写真を整理してみました)
  ヤシ科植物の写真整理  ヤシ科植物原産地マップ  PALMeweb


 内向敷石状(induplicate)、外向敷石状(reduplicate)、どちらも聞きなれない単語ですが、ヤシ科植物に関する記述ではよくみかけます。『敷石状』は覆瓦状に対して使われる植物形態学の用語で、葉や花被の重ならない繰り返し構造を意味します。


カナリーヤシの葉
内向敷石状(∨字断面)

ブラジルヤシ属ヤシの葉
外向敷石状(∧字断面)

ソテツの葉
折り畳み構造はない

(外向敷石状葉の例は良い写真がなかったので、後日差し替えたいと思います)
ヒロハケンチャヤシからブラジルヤシ属ヤシの写真に差し替えました(2/8)

 ヤシ科植物の葉は若い時期には丁度扇子のように折り畳まれており、後に展開して扇状あるいは羽状になるのがこの科の特徴となっています。外観が似ているソテツ科植物の葉では、このような折り畳み構造はありませんので葉を近くで見ることが出来れば明確に区別できます。ヤシ科植物の展開された葉を表から見たときに断面が『∨』字になっているのが内向敷石状、『∧』字になっているのが外向敷石状です。英語ではそれぞれ『V-shaped in cross-section』、『A-shaped in cross-section』です。
 ヤシ科植物はこの敷石構造をみると亜科を判別するのに役立ちます。関東地方辺りでは野外栽培のできない、トウ亜科、ニッパヤシ亜科、ケロクシロン亜科ではすべて外向敷石状(∧)、ココヤシ、テーブルヤシ類、ブラジルヤシなどを含むアレカヤシ亜科もすべて外向敷石状(∧)です。一方、カナリーヤシ、ワシントンヤシ、ビロウ、シュロなどが含まれるコウリバヤシ亜科の植物は、一部の例外を除くと内向敷石状(∨)です。
 コウリバヤシ亜科で外向敷石状(∧)になる種はウチワヤシなど少数で、わが国の屋外では殆どみかけることが出来せんので、『∨』字型断面のヤシの葉を野外で見かけたらほぼコウリバヤシ亜科と考えられます。反対に、琉球、小笠原などでない限り、国内で『∧』字型の断面を持つ葉であれば、アレカヤシ亜科とみて間違いありません。
 なお、コウリバヤシ亜科に外向敷石状(∧)を示す種が含まれるのは、分類に間違いがあるのではと疑いたくなるのですが、遺伝学的手法による検討(Asmussen et al, 2006)でもこれまでの分け方が支持されているようです。


 春はすぐそこですが…。早く集団免疫状態になることを望んでおります。


【参考】
ヤシ科 Arecaceae (Palmae) (∨/∧)
 トウ亜科 Calamoideae (∧)
 ニッパヤシ亜科 Nypoideae (∧)
 コウリバヤシ亜科 Coryphoideae (∨/(∧))
  カナリーヤシPhoenix canariensis (∨)
  ワシントンヤシ Washingtonia filifera (∨)
  ビロウ Livistona chinensis (∨)
  シュロTrachycarpus fortunei (∨)
  ウチワヤシ Licuala grandis (∧:例外)
 ケロクシロン亜科 Ceroxyloideae (∧)
 アレカヤシ亜科 Arecooideae (∧)
  ココヤシ Cocos nucifera (∧)
  テーブルヤシ Chamaedorea elegans (∧)
  ブラジルヤシ Butia capitata (∧)
  ヒロハケンチャヤシ Howea forsteriana (∧)
 ソテツ Cycas revoluta
 寒咲花菜(かんざきはなな) Brassica sp.
【文献】
Dransfield J, Natalie WU, Lange CBA, Baker WJ, Harley MM & LewisCE (2008) Genera Palmarum – The Evolution and Classification of Palms, 219p., Kew Ryal Botanic Garden, UK,, DOI: 10.34885/92, Accessed: 2022-02-05.
Asmussen CB, Dransfield J, Deickmann V, Barfod AS, Pintaud J-C and Baker WJ (2006), A new subfamily classification of the palm family (Arecaceae): evidence from plasmid DNA phylogeny, Bot J. Linnean Soc. 151, 15-38. URL: https://academic.oup.com/botlinnean/article/151/1/15/2420456. Accessed: 2022-02-05.

水道道から横浜イングリッシュガーデンへ

 いつもとはルートを変えて、今日は日ノ出町から横浜イングリッシュガーデンを尋ねました。追浜駅では、ホームドアの設置工事か始まっていました。
【マップ】うらが道、かなざわ道、など
【主な経路】(日ノ出町駅)ー野毛三丁目公園-尻こすり坂-藤棚-水道橋-横浜イングリッシュガーデン-金沢横丁-いわな坂-清水ヶ丘公園-(南太田駅)


日本近代水道最古の水道管 (野毛三丁目公園)
 明治20年(1882)、日本最初の近代水道がイギリス人パーマーの指導により、ここ横浜の地に誕生しました。相模川と道志川の合流点(現津久井町)に水源を求め、44km離れた野毛山貯水池に運ばれた水は、浄水され、市内に給水されました。
 当時の水道管を利用して造られたこの記念碑は、パーマーを始め、多くの先人たちの偉業を偲んで建立したものです。
 The oldest water pipes are used underground herem in Nogezaka. There pipes were set up bt Henry Spencer Palmer in 1887. We make this monument with a part of these pipes and we praise in this place that many pineers including Mr. Palmer who achieved this feat.


横濱開港の先覺者 佐久間象山の碑 (老松町63)
 安政元年一八五四年米国の使節ペリーが来朝のおり、松代藩軍議役として横浜村にいた佐久間象山先生は、当時の新思想家でありまた熱心な開国論者であった。先生は日本か世界の先進国からとり残されることを憂え幕府の要路に対してしばしば欧米諸国
との通商交易の必要なことを献策した。またその開港場として横浜が最適地であることを強く主張し幕府の決意を促して、国際港都横浜の今日の発展の緒を作った。不幸にも先生はその後京都に遊説中攘夷派刺客の兇刃のために木屋町三條で客死した。時に元治元年一八六四年七月十一日のことであった。本年はたまたま開国百年の記念すべき年に当るのでわれわれ有志相はかりその功績たたえるためにここに顕彰の碑を建て、永く後世に伝えることとした。
  昭和二九年十月一日
       佐久間象山顕彰会
            横浜市長 平沼亮三書


 野毛のつり橋
1970年(昭和45年)6月28日、「一万人市民集会」が開催された。その時、野毛山動物園分会場で、一老人が「交通量が増えている折り動物園と遊園地は遊び場が二分されている状況で子供達には危険だ。地下道か歩道橋を設置してほしい」と訴えた。
 これを本会場の横浜文化体育館で聞いた当時の飛鳥田市長は、清水、塩田両助役と相談、「さっそく実行いたしましょう」と確約、即刻工事に取りかかり、翌年3月に完成したのがこの橋である。
 橋の名称は、市内の小中学生から募集し「野毛の橋」と「つり橋」を合成し「野毛のつり橋」と決定した。
(出展:横浜市野毛山動物園(1982)『野毛山動物園のあゆみ』一部改変)


橋の概要
 種類:斜張橋
 橋長:59m
 塔柱高さ:18.2m
 幅員:4m
 竣工:1971年(昭和46年)
 設計者:柳宗理
 総工費:52000万円(当時)


斜張橋と柳宗理
 橋のデザインは、プロダクトデザイナーである柳宗理やなぎそうり氏に依頼した。当時、日本の歩道橋は美観を無視したものがほとんどで、最低限の機能があり構造的に問題がなければよいとされていた。しかし、土木構造物を魅力的にデザインすることで、都市空間の質を上げようとする柳氏の考えから、斜張橋という当時では最新の構造で設計された。そして、その特徴的な造形から野毛のシンボルとして設置から現在にいたるので広く市民に愛されている。


水道みち「トロッコ」の歴史
 この水道みちは、津久井郡三井村(現:相模原市緑区三井)から横浜村の野毛山浄水場(横浜市西区)まで約44kmを、1887年(明治20年)わが国最初の近代水道として創設されました。
 運搬手段のなかった当時、鉄管や資機材の運搬用としてレールを敷き、トロッコを使用し水道管を敷設しました。横浜市民への給水の一歩と近代消防の一歩を共に歩んだ道です。


  近代水道発祥の地(野毛山貯水場跡)
明治20年(1887年)10月、日本最初の近代水道は横浜に誕生した。当時の横浜は、埋立地が多く良い水が得られないため、長い間飲み水や伝染病に苦しみ、また大火事にも悩まされていた。いつでもどこでも安全で良い水が欲しいという人々の夢は、この近代水道の完成によって実現された。
 横浜の水道は、英国人H・S・パーマーの設計・監督によるものであるが、沖守固県知事をはじめ三橋信方(後に市長となる)、三田善太郎など多くの日本人の努力を忘れることはできない。
 パーマーは、横浜のほかにも大阪・神戸・函館・東京などの水道計画に貢献した。さらに、横浜開港工事や横浜ドックの設計など港湾整備の面でも業績を残したほか、天文台の建言やロンドンタイムスへの寄稿など広い分野で活躍し、明治23年(1883年)54才で没し東京青山墓地に眠る。
 横浜水道創設100周年を迎えるにあたり、パーマー像をこの地に建て、先人の業績を讃え、明日への発展を願いたいと思う。
          昭和62年4月 横浜市長 細郷道一


   藤棚の由来
 横浜へ向う保土ヶ谷街道の要衝であった此の地に、明治の初め頃より道行く人の憩の酒饅頭店があった。その店先の藤棚に来る春毎に見事な純白の花房を垂れ町の飾り門の観を呈し行き交う人は勿論市電の窓越しにも観賞され、当時誰言うともなく此の辺りを藤棚というようになった。
 昭和三年町名改正の際此のあたり一帯を藤棚町と命名した。惜しいことに戦災で焼失し名のみを残し今日に至った。そこでゆかりの藤を偲んで藤の棚復興実行委員会を作り、有志のご協賛を仰ぎ茲に名実伴った藤の棚が復元されたのである。
  昭和五十二年四月吉日
    藤の棚復興実行委員会


西区歴史街道 保土ケ谷道

○西区歴史街道 ~西区は道の交差点、すべての道は開港へ~
西区は、昭和19年4月1日に、中区から独立して誕生しました。今から250年ほど前までは、現在の西区の区域は、芝生村(しぼうむら)と戸部村(とべむら)が、東海道の景勝地である「袖ケ浦」という三角形の内海をはさんで成り立っていました。神奈川宿台町から見た風景は、たいへん美しく、「武蔵国第一の景」と言われるほどでした。
宝永4(1707)年の富士山大噴火による降灰の影響等で海が浅くなり湿地帯になっていくと、18世紀以降、埋め立てによる新田開発が進められ、「宝暦新田」「平沼新田」「岡野新田」などが造成されました。その結果、150年ほど前の「袖ケ浦」は、畑と塩田の風景に変わりました。なお、「横浜道」ができるまでは、神奈川から開港場へは須崎神社前から渡し船によっていました。
西区には「東海道(とうかいどう)」「横浜道(よこはまみち)」「保土ケ谷道(ほどがやみち)」という三つの古道が通っていました。
江戸時代の大動脈であった「東海道」は、江戸方からは袖ケ浦の海岸に沿って、神奈川宿台(元、神奈川区台町)の坂を下り、大通り(環状1号)に出て観行寺の前を通り、浅間下交差点を横切って浅間下公園の中を抜け、浅間神社へと続いていました。そして、追分、現在の松原商店街を通り、天王町、帷子町を経て保土ケ谷宿へつながっていました。
わが国は、安政6(1859)年に開港し、横浜村(現在の関内地区)に開港場が築かれました。そのとき、東海道と開港場を結ぶために作られたのが「横浜道」で、初めは「しんみち」と呼ばれていました。浅間下交差点近くの薬局横が起点で、岡野・平沼新田の埋立地と海面の境に盛土して通とし、帷子川、石崎川の河口に「新田間橋」「平沼橋」「石崎橋(現敷島橋)」を経て開港場に至っていました。
また、「保土ケ谷道」は、保土ケ谷宿と戸部村を結ぶ古道で、現在の保土ケ谷区岩間町大門通り交差点で東海道と別れ、鉄道線路をこえて安楽寺(保土ケ谷区西久保町)から左折、藤棚商店街を通り、願成寺の下の通り「暗闇(くらやみ)坂」を抜け、伊勢町商店街から「横浜道」に合流していました。
開港場をめざして全国から集まる人々や物資は、この西区内の三つの古道をひんぱんに行き交いました。それにともない、わが国に入ってきたさまざまな文化も、これらの道を通って全国に伝えられていきました。重要な役割を果たしてきた三つの古道の周辺には、さまざまな歴史資源が残っています。
     2004年12月設置
     西区観光協会、西区土木事務所、西区役所


  袖ヶ浦から工場・鉄道・水道道へ
 戸部村と保土ケ谷宿の間の奥深い入り江であった袖ヶ浦は帷子川から排出される土砂により年々浅くなり、江戸時代後期には新田として開発されやすい場所となっていました。現在の西横浜駅がある場所は、自然にできた中州を宝暦13(1763)年に埋め立て、尾張屋新田となり、この辺り一帯は昭和3(1926)年に市に編入さるまで尾張屋町と呼ばれていました。
 明治5(1872)年に初代横浜駅(現、桜木町駅)まで鉄道が敷設されるとともに、塩田から陸地化し、新田間川、石崎川などが整備され、舟運や駅の開設により木材、捺染、ガス、電線などの工場が立地するようになりました。
 鉄道業は、関東大震災以降、法施行に伴い大幅に発展します。当初、神中鉄道は、二俣川~厚木間を開通させ、相模川で採取された砂利などを横浜方面へ供給していました。昭和4(1929)年に路線は西横浜まで延伸し、昭和8(1933)年には横浜駅に乗り入れました。
 横浜の発明家家山与七は、電力需要が盛んになるに伴い、輸入に頼らずに国産の電線を供給するという信念から、明治29(1896)年に自身の電線製造所を横浜電線製造株式会社へ改め、明治35(1902)年に現在の西平沼に製造工場を新設しました。その後、同社と古河合名会社(現在の古河機械金属(株))とま事業提携により古河電気工業(株)が発足し、尾張屋新田一帯はインフラ構築を支える工業地域となり現在(住宅展示場として活用中)に至ります。
 また、本サインが設置されている跨線橋の下は、西区の水道道の入口にあたります。


【参考】
 ホームドア設置工事の始まった追浜駅
 日本近代水道最古の水道管 (野毛三丁目公園)
 野毛山公園碑
 知恵の箱 1993 望月Mochizuki菊磨Kikuma
 佐久間象山の碑(野毛山公園)
 野毛のつり橋
 近代水道発祥の地碑
 近代水道発祥の地(野毛山貯水場跡)
 野毛山貯水場跡
 ロウバイ Chimonanthus praecox
 尻こすり坂(水道道)
 セダムの一種 Sedum sp.
 神中神髙希望ヶ丘髙 発祥の地碑
 藤棚交差点
 西戸部町塩田横枕西部公私道路修理記念之碑(西区浜松町9)
 ノジスミレ Viola yedoensis
 水道橋
 横浜イングリッシュガーデン
 ワシントンヤシ Washingtonia filifera
 エレガンスみゆき Cerasus x Armenica mume ‘Elegance Miyuki’
 パンジー Viola × wittrockiana
 オオヤエクチナシ Gardinia jasminoides f. ovalifolia
 冬桜(ふゆざくら)Cerasus x parvifolia ‘Fuyu-zakura’
 ミツマタ Edgeworthia chrysantha
 (西久保)杉山神社
 (伏見)稲荷社:保土ケ谷区帷子町2丁目69
 金沢横丁道標四基
 石難坂(石名坂)
 庚申塔(御所台地蔵前)
 御所台地蔵尊
 御所台の井戸
 北向地蔵尊
 エノキ Celtis sinensis (ゆずの木)
 ソテツ Cycas revoluta