博物誌(串田孫一著)に登場する植物

 『博物誌』の名を冠する著作は世に多数あり、大プリニウス(A.D.77)、ビュフォン(18世紀)、ルナール(1896)などが良く知られていますが、我が国にも広義の博物誌は多数あります。中でも1956年から1957年にかけて3巻で出版された随筆家串田孫一による博物誌が学生時代のお気に入りでした。と、申しますか、私にとって生物名を正しく記載することが大切だと認識できた原点だったように記憶しています。ここでは手元にあった1冊目の博物誌を元に、そこに登場する植物をリストにしてみました。被子植物の記載順はAPG-IV(2016)に概ね準拠しています。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹
 作品中の植物 楚辞:山鬼 枕草子


【被子植物(Angiosperm)】

記載名 題・頁 種名等・学名  画像      所属    備考
もくれん もくれん
p.140
シモクレン
Magnolia quinquepeta
シモクレン モクレン目
モクレン科
 
あぶらちゃん なんじゃもんじゃ
p.96
アブラチャン
Lindera praecox
アブラチャン クスノキ目
クスノキ科
 
ひとりしずか
(Chloranthus japonicus)
ひとりしずか
p.178
ヒトリシズカ
Chloranthus quadrifolius
ヒトリシズカ センリョウ目
センリョウ科
本文の学名はシノニム
ふたりしずか ひとりしずか
p.179
フタリシズカ
Chloranthus serratus
フタリシズカ センリョウ目
センリョウ科
 
おもたか 毬藻
p.45
オモダカ
Sagittaria trifolia
オモダカ オモダカ目
オモダカ科
 
チューリップ チューリップ
p.170
チューリップ ‘ダイアナ’
Tulipa gesneriana ‘Diana’
チューリップ ユリ目 ユリ科 ダイアナは白花一重で早咲
画像は恐らく別品種
ほくろ(春蘭) ほくろ
p.166
シュンラン
Cymbidium goeringii
シュンラン キジカクシ目
ラン科
 
クラジオラス ほくろ
p.166
クラジオラス
Gladiolus X gandavensis
クラジオラス キジカクシ目
アヤメ科
 
夏水仙 夏水仙
p.186
ナツズイセン
Lycoris squamigera
ナツズイセン キジカクシ目
ヒガンバナ科
 
蚊柱
p.60
ニラ
Allium tuberosum
ニラ キジカクシ目
ヒガンバナ科
 
ラッキョウ
p.28
ラッキョウ
Allium chinense
ラッキョウ キジカクシ目
ヒガンバナ科
(画像は近縁種)
 エゾネギ
ほそばのおおあまな ベツレヘムの星
p.112
ホソバオオアマナ
Ornithogalum orthophyllum
クロホシオオアマナ キジカクシ目
キジカクシ科
(画像は近縁種)
 クロホシオオアマナ

p.33
ガマ
Typha latifolia
ガマ イネ目 ガマ科  
熊笹 おやまぼくち
p.154
クマザサ
Sasa veitchii var. veitchii
ガマ イネ目 イネ科
タケ亜科
 
芝生 雉鳩
p.176
シバ
Zoysia japonica
シバ イネ目 イネ科
ヒゲシバ亜科
 
葛 p.68
木兎 p.72
ススキ
Miscanthus sinensis
ススキ イネ目 イネ科
キビ亜科
 

p.32
ヨシ
Phragmites australis
ヨシ イネ目 イネ科
ダンチク亜科
 
クリスマス・ローズ クリスマス・ローズ
p.114
クリスマスローズ
Helleborus sp
クリスマスローズ キンポウゲ目
キンポウゲ科
 
いなご豆 ベツレヘムの星
p.113
イナゴマメ
Ceratonia siliqua
クズ マメ目 マメ科
 ジャケツイバラ亜科
 

p.68
クズ
Pueraria lobata
クズ マメ目 マメ科
ソラマメ亜科
 
黒豆 ちょろぎ
p.122
ダイズ ‘丹波黒’
Glycine max ‘Tanbagoro’
ダイズ '丹波黒' マメ目 マメ科
ソラマメ亜科
 
すもも すもも
p.4
スモモ
Prunus salicina
スモモ バラ目 バラ科
モモ亜科 スモモ属
 
こがねぐも
p.42
ウメ
Prunus mume
ウメ バラ目 バラ科
モモ亜科 スモモ属
 
天狗巣
p.192
サクラ属
Cerasus sp.
サクラ バラ目 バラ科
モモ亜科 サクラ属
画像の品種は
 染井吉野
薔薇 薔薇 p.116
ほくろ p.166
バラ連
(Roseae)
バラ バラ目 バラ科
バラ亜科 バラ連
画像の品種は
 カーディナル
蚊柱 p.60 スウェター p.118
ひよこ p.173 雉鳩 p.177
ケヤキ
Zelkova serrata
ケヤキ バラ目 ニレ科  
毒蛾 p.9 クヌギ
Quercus acutissima
クヌギ ブナ目 ブナ科  
まがも p.121 スダジイ
Castanopsis sieboldii
スダジイ ブナ目 ブナ科  
胡瓜 草雲雀 p.47
胡瓜 p.76
キュウリ
Cucumis sativus
キュウリ ウリ目 ウリ科  
西瓜 草雲雀 p.47 スイカ
Citrullus lanatus
スイカ ウリ目 ウリ科  
かたばみ きつりふね p.56 カタバミ
Oxalis corniculata
カタバミ カタバミ目
カタバミ科
 
すみれ ひとりしずか p.178 スミレ属
Viola sp.
コスミレ キントラノオ目
スミレ科
画像はコスミレ
時計草 時計草 p.6 トケイソウ
Passiflora caerulea
トケイソウ キントラノオ目
トケイソウ科
 
ポインセチヤ クリスマス・ローズ p.114 ポインセチア
Euphorbia pulcherrima
ポインセチア キントラノオ目
トウダイグサ科
 
ダイヤモンド草 くものすかび p.127 ユーフォルビア・ヒペリキフォリア ‘ダイヤモンド・フロスト’
Euphorbia hypericifolia ‘Diamond Frost’
ユーフォルビア・ヒペリキフォリア キントラノオ目
トウダイグサ科
 
げんのしょうこ きつりふね p.56 ゲンノショウコ
Geranium thunbergii
ゲンノショウコ フウロソウ目
フウロソウ科
 
山椒 こがねぐも p.42
蛙 p.198
サンショウ
Zanthoxylum piperitum
サンショウ ムクロジ目 ミカン科  
レモン レモン p.174 レモン
Citrus limon
レモン ムクロジ目 ミカン科  
キャベツ キャベツ p.66 キャベツ
Brassica oleracea var. capitata
キャベツ アブラナ目 アブラナ科
アブラナ連
 
大根 蚊柱 p.60 ダイコン
Raphanus sativus
ダイコン アブラナ目 アブラナ科
アブラナ連
 
たまあじさい たまあじさい p.10 タマアジサイ
Platycrater involucrata Syn. Hydrangea involucrata
タマアジサイ ミズキ目 アジサイ科 挿絵にはHydrangea cuspidataとあるが、
これはヒメアジサイのシノニムなので不採用。
きつりふね 釣舟草 p.51
きつりふね p.56
キツリフネ
Impatiens noli-tangere
キツリフネ ツツジ目 ツリフネソウ科  
釣舟草 釣舟草 p.50 ツリフネソウ
Impatiens textorii
ツリフネソウ ツツジ目 ツリフネソウ科  
鳳仙花 釣舟草 p.51 ホウセンカ
Impatiens balsamina
ホウセンカ ツツジ目 ツリフネソウ科  
ががいも ががいも p.36 ガガイモ
Metaplexis japonica
ガガイモ リンドウ目
キョウチクトウ科
旧ガガイモ科
いも 蚊柱 p.60 (サツマイモ)
Ipomoea batatas
サツマイモ ナス目
ヒルガオ科
 
せんなりほうずき 酸漿 p.24 センナリホオズキ
Physalis angulata
ガガイモ ナス目
ナス科
ホオズキとセンナリホオズキを
筆者は同一種と見做していた様です。
ほうずき 酸漿 p.24 ホオズキ
Physalis alkekengi var. franchetii
ガガイモ ナス目
ナス科
 
ひとつばたご なんじゃもんじゃ p.96 ヒトツバタゴ
Chionanthus retusus
ヒトツバタゴ シソ目
モクセイ科
本文中ではひいらぎ科となっいる。
ひとつばたご しもばしら p.138 シモバシラ
Keiskea japonica
シモバシラ シソ目
シソ科
 
ちょろぎ ちょろぎ p.122 チョロギ
Stachys sieboldii
シモバシラ シソ目
シソ科
 
おやまぼくち おやまぼくち p.154 オヤマボクチ
Synurus pungens
シモバシラ キク目
キク科
 
のぼろぎく のぼろぎく p.182
あとがき p.203
ノボロギク
Senecio vulgaris
シモバシラ キク目
キク科
 

【裸子植物(Gymnosperm)】

記載名 題・頁 種名等・学名 画像 所属 備考
しらべ こがら
p.151
シラビソ
Abies veitchii
モミノキ マツ目 マツ科 モミ亜科 (画像は同属別種)
 モミノキ
葛 p.69
雉鳩 p.176
マツ属
Pinus spp.
モミノキ マツ目 マツ科 マツ亜科 画像はクロマツ
りょうめんひのき なんじゃもんじゃ
p.96
ヒノキ
Chamaecyparis obtusa
モミノキ ヒノキ目 ヒノキ科 ヒノキの一品種
品種としては絶滅か

【苔植物門(Bryophyta)】

記載名 題・頁 種名等・学名 画像 所属 備考
ぜにごけ 錢苔
p.98
ゼニゴケ
Marchantia polymorpha
ゼニゴケ ゼニゴケ目 ゼニゴケ科  

【緑藻植物門(Chlorophyta)】

記載名 題・頁 種名等・学名 画像 所属 備考
毬藻 毬藻
p.44
マリモ
Aegagropila brownii
マリモ シオグサ目 アオミソウ科 阿寒湖
マリモ展示観察センターで撮影

【文献】
串田孫一 (1956) 博物誌, 204p, 創文社, 東京, URLhttps://dl.ndl.go.jp/pid/1664909/1/1, Accessed: 2026-3-16.【要利用登録】
デジタルアーカイブは初版本(1956年9月20日)で、手元にある印刷体は『昭和三十一1956年十月五日再販發行 定價弐百参拾圓』です。元の価格は同じでしたが、神田の鳥海書房で購入した際には1,000円。序ながら現在の取引価格は、2,000円くらいの様です。
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-06-28.


Renard, Jules(ジュール・ルナール) (1904) Historires Naturelles(博物誌《新装版》), 岸田国士訳(1990), 278p, 白水社, 東京.
 ルナールの博物誌は、博物学の記録というより文芸作品の類で、記載されている生物は動物、それも四足動物に偏っていますので、博物誌というより動物誌というべき作品です。独立項目としての植物は『ひなげし』『ぶどう畑』『木々の一家』の3題だけですし、ルナールは植物にはあまり興味がなかったようで、和訳を見る限り種までの特定は困難で、当時の学名さえも推定できないことが多いのですが、参考まで岸田(1990)による植物名の和訳をリストにして掲げておきます。
 あざみ
 あし
 アスパラガス
 いちご
 いばら
 苜蓿うまごやし
 かしわ
 かぶら
 からすむぎ
 橄欖
 木いちご
 黑すぐり → カシス
 桑
 櫻
 桜んぼ
 サラダ菜
 白いすみれ
 すかんぽ → スイバ
 すみれ
 たばこ
 たまねぎ
 とうもろこし
 にんにく
 ねぎ
 野梅
 ばら
 馬鈴薯
 ひなげし
 ひまわり
 ぶどう
 ほうき草
 ほうれんそう
 ポプラ
 まるすぐり → セイヨウスグリ
 麦:麥表記ゆれ
 矢車草
 柳
 リンゴ
 れんげ
 わけぎ


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