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里山ガーデンの秋

 漸く秋らしくなってきた今日は、ズーラシアに隣接した里山ガーデンを尋ねました。
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【参考】○:本日、初撮影種
 ガーデンベア
 里山ガーデン
 チカラシバ Pennisetum alopecuroides
 五色トウガラシ Capsicum annuum
 ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius
 キバナコスモス Cosmos sulphureus
○コバルトセージ Salvia azurea

トウガラシ属(Capsicum)の系統および機能成分

 ナス科(Solanaceae)トウガラシ属(Capsicum)は約35種で構成され、中南米が起源地と考えられています(García et al,.2016)。トウガラシ、シシトウ、ピーマン、パプリカは、全てトウガラシ(Capsicum annuum)の品種で、辛み成分の主体であるカプサイシン類の含有量は品種により大きな差のあることが知られています。
 Shiragaki et al.(2020)による解析によれば、属内には5つクレードが認められますが、従来の種とは必ずも一致しておらず、具体的には、シマトウガラシ(高麗胡椒(コーレーグース))、タバスコ、ハバネロなどの実が比較的小さく辛味の強い品種は、明確に識別出来ないようですので、これらは再編されることが予測されます。
 ナス属(Solanumの系統概要
 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


トウガラシ属(Capsicum)の系統推定】Shiragaki et al.(2020)

     ┌トウガラシ・クレード C. annuum Clade
     ││       ┌───C. annuum ‘獅子唐'(シシトウ)
     ││      ┌┴───C. annuum ‘紫(大和)’
     ││     ┌┴────C. annuum ‘昌介’
     ││    ┌┴─────C. annuum ‘鷹の爪’
    ┌┤│   ┌┴──────C. annuum ‘日光’
    │││  ┌┴───────C. annuum ‘在来’
    │││ ┌┴────────C. annuum ‘八房’
    │││┌┤┌────────C. annuum ‘三重みどり'(ピーマン)
    ││└┤└┴┬───────C. annuum ‘伏見甘長’
    ││ │  └───────C. annuum ‘札幌大長南蛮’
    ││ └──────────C. annuum ‘明石’
    │└キネンセ/キダチトウカラシ・クレード C. chinense and C. frutescens clade
    │ │  ┌────────C. frutescens ‘タバスコ’_2
    │ │ ┌┴────────C. frutescens ‘ラット・チリ’_3
    │ │┌┴─────────C. eximium ‘PL 645681’_3
    │ └┤ ┌────────C. frutescens ‘グリーン・タバスコ’_1
   ┌┤  │┌┴────────C. frutescens ‘ラット・チリ’_1
   ││  ││   ┌─────C. eximium ‘PL 645681’_1
   ││  └┤  ┌┴─────C. frutescens ‘ラット・チリ’_2
  ┌┤│   │ ┌┴──────C. frutescens ‘タバスコ’_2
  │││   │┌┤┌──────C. eximium ‘PL 645681’_2
  │││   └┤└┴──────C. frutescens ‘タバスコ’_3
 ┌┤││    │┌───────C. frutescens ‘グリーン・タバスコ’_3
 ││││    └┤ ┌─────C. Chinense ‘ハバネロ’_1       ┐
 ││││     │┌┴─────C. Chinense ‘Pl 159236’_1       │
┌┤│││     └┤┌─────C. Chinense ‘Pl 441609’_2       │
│││││      └┤ ┌───C. frutescens ‘グリーン・タバスコ’_2 │
│││││       │┌┴───C. Chinense ‘ハバネロ’_2       ├キネンセ・クレード
│││││       └┤┌───C. Chinense ‘スカーレット・ランテム’_1│ C. chinense
┤││││        └┤ ┌─C. Chinense ‘スカーレット・ランテム’_3│
│││││         │┌┴─C. Chinense ‘Pl 159236’_3       │
│││││         └┤┌─C. Chinense ‘Pl 441609’_1       │
│││││          └┤┌C. Chinense ‘スカーレット・ランテム’_2│
│││││           └┴C. Chinense ‘Pl 159236’_2       ┘
││││└バッカツム・クレード C. baccatum Clade
││││ └────────────アヒ・アマリージョ C. baccatum
│││└プベッセンス・クレード C. pubescens
│││ └─────────────ロコト C. pubescens
││└───────────────ウルピカ C. eximium
│└────────────────カプシクム・リシアンソイデス C. lycianthoides
└イヌホオズキ Solanum nigrum (ナス属)

【トウガラシ属周辺の系統関係】Olmstead et al.(2008)

 ┌ナス科
 ││  ┌ナス亜科(Solanoideae)
 ││  ││   ┌─ナス連(Solaneae)
 ││  ││  ┌┤┌トウガラシ連(Capsiceae)
 ││  ││  ││││  ┌Capsicum minutiflorum
 ││  ││  ││││ ┌┼Capsicum chinense
 ││  ││  ││││┌┤├Capsicum pubescens
 ││  ││  │││└┤│└Capsicum baccatum
 ││  ││  │││ │└Capsicum rhomboideum
 ││  ││  │││ └メジロホオズキ属Lycianthes spp.
 ││  ││  │└┴ホオズキ連(Physaleae)
 ││  ││ ┌┤  │ ┌ホオズキ亜連(Physalinae)
 ││  ││ ││  └┬┴イオクロマ亜連(Iochrominae)
 ││  ││┌┤│   └─アシュワガンダ亜連(Withaninae)
 ││  │└┤│└──チョウセンアサガオ連(Datureae)
 ││  │ │└───ファヌリヨア連(Juanulloeae)
 ││  │ └┬───ヒヨス連(Hyoscyameae)
 ││  │  └───クコ連(Lycieae)
 ││ ┌┴タバコ亜科(Nicotianoideae)
 ││┌┤ └┬────アンソトローシュ連(Anthocercideae)
 ││││  └────────タバコ属(Nicotiana)
 │││├───────シュヴェンキア連(Schwenckieae)
 │└┤├───────ペチュニア連(Petunieae)
 │ │└┬──────ベンサミエラ連(Benthamielleae)
 │ │ └┬─────サルピグロシス連(Salpiglossideae) ┐
┌┤ │  └┬────ブロワリア連(Browallieae)     ├ヤコウカ亜科
┤│ │   └────ヤコウカ連(Cestreae)       ┘(Cestroideae)
││ └──ゲッツェア亜科(Goetzeoideae)
│└ヒルガオ科(Convolvulaceae)
└─モンティニア科(Montiniaceae)

【カプサイシン類(Capsinoids)】
 ナス科の中でもトウガラシ属だけの特徴の一つとして、種子が付いている胎座(Placenta)で辛み成分カプサイシン類(Capsinoids)を生産することがありますが、ピーマンやパプリカではカプサイシン類を生産する遺伝子発現が抑止されているため、辛みはありません。一方、シシトウでは通常は辛くない品種でも栽培条件によっては辛くなることが知られていましたが、最近ではピーマンとの品種交配により全く辛くならないシシトウ品種も作出されているそうです(田中ら,2022)。
 カプサイシン類は、カプサイシンとジヒドロカプサイシンが辛さの9割以上を占めるとされており、その濃度測定は、20世紀初頭に考案された希釈官能検査であるスコヴィル法(Scoville,1912)が採用されてきましたが、現在ではHPLC法, LC/MS/MS法等の機器分析による個別測定が可能となっています(ジーエルサイエンス,1998-2024)。現在でのスコヴィル値は参考程度ですが、AOAC(1995)のHPLCを用いた公定法では、主要なカプサイシン類3物質、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカブサイシンの合量(μg/g)を15倍した値が、スコヴィル値に相当するとしています。また、日本味覚協会(2021)は3g/kg以下のカプサイシン濃度範囲で『スコヴィル値=17.375xカプサイシン濃度(mg/kg)+1180.9』という換算式を示しています。この式の意味するところは、計算式算出に用いたデータセットの辛さ成分のうち、平均すると約1000スコヴィル値分がカプサイシン以外のカプサイシン類に起因する辛さだったいうことになります。
 トウガラシ属の果実では、辛みはないのに発汗・発熱などの生理作用を有するカプシエイト類(Capsiates)と総称されるカプサイシン類似物質群が発見されています(矢澤ら,1989)。カプサイシン類のペプチド結合(-C-NH-C-)部分が、エーテル結合(-C-O-C-)に置き換わったものがカプシエイト類なので、分子内に窒素のあるカプサイシン類はアルカロイドですが、カプシエイト類はアルカロイドではないことになります。カプシエイト類は、トウガラシ(C. annuum)より南米で栽培されるアヒ(C. baccatum)で多く含まれる品種が見つかっているようです(田中,2014)。

 辛くないのに生理作用のあるトウガラシ品種は、これまでのところ食用としてはあまり普及していないようですが、機能性食品としては利用されています。


【文献】
Shiragaki K, Yokoi S and Tezuka T (2020) Phylogenetic Analysis and Molecular Diversity of Capsicum Based on rDNA-ITS Region, Horticulturae,6, 87, DOI: 10.3390/horticulturae6040087, Accessed: 2024-09-25.
García CC, Barfuss MHJ, Sehr RM, Barboza GE, Samuel R, Moscone EA and Ehrendorfer F (2016) Phylogenetic relationships, diversification and expansion of chili peppers (Capsicum, Solanaceae), Annal Bot, 118(1), 35–51, DOI: 10.1093/aob/mcw079, Accessed: 2024-10-02.
農林水産省 (2024) カプサイシンに関する詳細情報、URL: https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/capsaicin/syousai/, Accessed: 2024-10-04.
田中寿弥、南山泰宏、小谷泰之、髙垣昌史、片山泰弘 and 林 恭弘 (2022) 辛味果実の発生しないシシトウ新品種‘ししわかまる’の育成、園学研(Hort Res Jap)、21(1)、123–128、DOI: 10.2503/hrj.21.123, Accessed: 2024-10-05.
ジーエルサイエンス (1998-2024) HPLCとLC/MS/MSによるカプサイシンの分析, URL: https://www.gls.co.jp/viewfile/?p=LT197, Accessed: 2024-10-05.
AOAC (1995) AOAC Official Method 995.03 Capsaicinoids in Capsicums and Their Extractives Liquid Chromatographic Method First Action 1995, URL: https://techcrim.ru/wp-content/uploads/2011/11/AOAC_Official_Method_995.pdf, Accessed: 2024-10-06.
日本味覚協会 (2021) 辛さの指標(単位)とは?~スコヴィル値とカプサイシン濃度の関係~, URL: https://mikakukyokai.net/2021/11/04/gekikara-anzen/, Accessed: 2024-10-05.
前田智, 米田祥二, 細川宗孝, 林孝洋, 渡辺達夫 and 矢澤進 (2006) トウガラシ ‘CH-19甘’ (Capsicum annum L.)の果実発育中の新規物質カプシノイド含量の変化と胎座組織の形態変化ならびに果実の彫像条件とカプシノイド含量, 京大農場報告, 15, 5-10, URL: https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010724262.pdf, Accessed: 2024-10-05.
矢澤進, 末留昇, 岡本佳奈 and 並木隆和 (1989) ‘CH-19甘’を片親としたトウガラシ(Capsicum annuum L.)の雑種におけるカプサイシノイドならびにカプサイシノイド様物質の含量, 園学雑, 58(3), 601-607, DOI: 10.2503/jjshs.58.601, Accessed: 2024-10-05.
田中義行 (2014) トウガラシにおける新規カプサイシン類似物質・カプシコニノイドの含量, 岡山大学農学部学術報告, 103, 37-43, URL: https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/52127/20160528115331516420/srfa_103_037_043.pdf, Accessed: 2024-10-05.
味の素, 辛くないトウガラシの成分「カプシエイト」, URL: https://www.ahs.ajinomoto.com/products/food/pdf/cap.pdf, Accessed: 2024-10-05.
Olmstead RG, Bohs L, Migid HA, Santiago-Valentin E, Garcia VF and Collier SM (2008) A molecular phylogeny of the Solanaceae, Taxon, 57(4), 1159–1181, DOI: https://doi.org/10.1002/tax.574010, Accessed: 2024-10-05.
Scoville WL (1912) Note on Capsicums, J Am Pharm Assoc, 1, 453-454, DOI: 10.1002/JPS.3080010520, Accessed: 2024-10-08.

シバナ科の系統概要

 シバナ科(Juncaginaceae)は、APG-IV(2016)で1属からなるマウンディア科が分離新設された結果、現在では3属25-35種で構成される耐塩性を備えた種を含む湿地植物です(Mering and Kadereit,2015))。和名『シバナ』がユーラシア大陸に自生する他種のいずれに相当するのかは未解決の様で(原,1960)、少なくとも神奈川県では既に全滅しており(神奈川県植物誌,2018)、日本全体でも準絶滅危惧(Near Threatened)となっています。
 下記のシバナの写真は、横浜市こども植物園の「横浜の植物・植物標本展」で撮影したもので、70年ほど前に九十九里浜で採集された標本です。ここでは欧州産の(Triglochin maritimum)と同一種となっていました。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【オモダカ目(Alismatales)の系統関係】Chen et al.(2022)
カワツルモ科(Ruppiaceae)は試料が供試されなかったため記載がありません。

  ┌オモダカ科(Alismataceae)
 ┌┤┌トチカガミ科(Hydrocharitaceae)
 │└┴ハナイ科(Butomaceae)
┌┤    ┌┬ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)
││   ┌┤└アマモ科(Zostraceae)
┤│  ┌┤└┬ベニアマモ科(Cymodoceaceae)
││ ┌┤│ └ポシドニア科(Posidoniaceae)
││┌┤│└マウンディア科(Maundiaceae)
│└┤│└シバナ科(Juncaginaceae)
│ │└ホロムイソウ科(Scheuchzeriaceae)
│ └レースソウ科(Aponogetonacaeae)
└┬サトイモ科(Araceae)
 └チシマゼキショウ科(Tofieldiacaeae)

【オモダカ目(Alismatales) シバナ科(Juncaginaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
シバナ属 Triglochin
シバナ属の一種 シバナ属の一種
Triglochin sp. Arrowgrass

解説文転記
No.2 シバナ [環境省:純絶滅危惧種(NT), 神奈川県:絶滅]」
 シバナはかつて横浜西区の干潟、平沼付近での貴重な採集記録が残されている。現在は県内では絶滅したと考えられている単子葉植物。
 シバナとは「塩場菜」の意味で、潮が採れるような塩性の湿地に生えている。当時の横浜にはまだそうした自然の情景が残っていたのであろう。国内での自生も、特に関東以西では自生地が限られる貴重な植物である。かつてはホムロイソウ科に含まれていたが、花の構造が著しく異なることからシバナ科となった。半月型の切面となる多肉質の葉は、塩性地で体に水分を長く保持することに役立っている。
 シバナの学名は、戦前に中国北部の植物を研究したことで知られる植物学者の北川政夫に献名されています。命名者は北欧の系統分類学者Soris Löve。
【植物研究雑誌・1巻6号 p.154-155 段枝片葉(其三)しばな横濱ニ盡ク 参照】
【植物研究雑誌・35巻6号 190-192 シバナについて 原寛 参照】


横浜市bこども植物園標本 No.YCB605202
和名 シバナ
学名 Triglonchin maritmum L.
採集地 千葉県驚
採集者 久内清孝
採集年月日 1953年08月17日
久内標本コレクション 12-191
           2050-00100


(驚)という地名は長生村と白子町とにある.どちらか不明
YLB605202
Triglochin matitimum Lin
Nom Jap Shibana
in oppido Odoroki, Kazusa
17 Aug 1953


【文献】
Mering Sv and Kadereit JW (2015) Systematics, phylogeny and biogeography of Juncaginaceae, Mol Phylog Evol, 83, 200-212, DOI: 10.1016/j.ympev.2014.10.014, Accessed: 2024-09-28.
Mering Sv and Kadereit JW (2010) Phylogeny, Systematics, and Recircumscription of Juncaginaceae – A Cosmopolitan Wetland Family, In Seberg, Peterson, Barfod and Davis Edts, Diversity, Phylogeny, and Evolution in the Monochtyledons, URL: https://juncaginaceae.myspecies.info/sites/juncaginaceae.myspecies.info/files/von%20Mering%20%26%20Kadereit_2010_phylogeny_Juncaginaceae.pdf, Accessed: 2024-09-28.
原寛 (1960) シバナについて、植物研究雑誌, 35(6) 30-32, DOI: 10.51033/jjapbot.35_6_4529, Accessed: 2024-09-28.
Chen L-Y, Lu B, Morales-Briones DF, Moody ML, Liu F, Hu G-W, Huang C-H, Chen J-M and Wang Q-F (2022) Phylogenomic Analyses of Alismatales Shed Light into Adaptations to Aquatic Environments, Mol Biol Evol, 39(5):msac079, DOI: 10.1093/molbev/msac079, Accessed: 2023-08-10.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.


神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p249.
A035 シバナ科 JUNCAGINACEAE (勝山輝男)
 多年草,稀に1年草,葉は根生し線形,花序は穂状で,花には苞葉がない.花被は3枚が輪生し,雄しべは3個ずつ2輪につき,心皮は3または6.全体の姿がホロムイソウに似るので、ホロムイソウ科(Scheuchzeriaceae)に含めていたが,花の構造が著しく異なるので,現在は別科とされる。世界に4属25種あり,日本には1属のみがある。
†1.シバナ属 Triglochin L.
 世界に12種あり,日本にはシバナとホソバシバナ T. palustris L. の2種がある。
†(1)シバナ Triglochin asiatica (King) A. & D. Löve; T. maritimum auct. non L.
 河口や内湾などの塩湿地に生える。北海道,本州,四国,九州;北半球の温帯に広く分布する。県内ではかつて横浜の平沼が干潟だったころの標本が残されているが,1915年(大正4年)に埋め立てにより絶滅した(牧野1917).『箱根目58』に芦ノ湖とあるがこの標本は確認していない.『神RDB06』では絶滅と判定された.北海道や東北地方を除いて産地,個体数ともに少なく,『国RDB15』では絶滅危惧Ⅱ類にされた.
標本:横浜市平沼 1920.8.10 K.Hisauchi TI; 同 採集年月日不明 松野重太郎 ACM-PL030019, 030020; 武蔵横浜 1912.8.20 久内清孝TI; 武蔵横浜平沼 1913.9.21 牧野富太郎 MAK226663; 武蔵平沼 1888.8.26 牧野富太郎 MAK194633; 武蔵金川付近 1893.10 牧野富太郎 MAK194634; 武蔵神奈川浦島山 1904 牧野富太郎 MAK194632.

横浜の植物・植物標本展など

 今日は、横浜市こども植物園で開催中の「横浜の植物・植物標本展」を見てきました。貴重標本が撮影できたのを機に、神奈川では既に絶滅しているシバナ科のページを掲載することができました。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹



【参考】○:本日、初撮影種、◎:標本での初撮影種
◎ハイコモチシダ Woodwardia unigemmata
シバナ属の一種 Triglochin sp.
◎ハマカキラン Epipactis papillosa var. sayekiana
 ヨコハマダケ Pleioblastus matsunoi Syn. Arundinaria matsunoi
◎ハコネナンブスズ Sasa shimidzuana subsp.
shimidzuana

◎ヤマキタダケ Sasaella yamakitensis
◎ハコネメダケ Sasaella sawadae
◎サンカクヅル Vitis flexuosa
◎ハコネグミ Elaeagnus matsunoana
◎アカバグミ Elaeagnus X maritima (ツルグミ X オオバグミ)
◎トウゴクミツバツツジ Rhododendron wadanum<
◎アシタカツツジ Rhododendron komiyamae
 オカイボタ(オオバイボタの変種) Ligustrum ovalifolium var. hisauchi
 サガミギク(シロヨメナの変種) Aster ageratoides var. harae


〇ミセバヤ Hylotelephium sieboldii
〇ナガバヤブソテツ Cyrtomium devexiscapulae
 ヒマラヤタマアジサイ Platycrater aspera Syn. Hydrangea villosa
 ヒガンバナ Lycoris radiata
 オオタチカラクサ Dichorisandra thyrsiflora
 ネペンシス ‘レグレヤナ’ Nepenthes X ‘Wrigleyana’
 アサザ Nymphoides peltata
 タヌキモ属の一種 Utricularia sp.
 シモバシラ Keiskea japonica
〇アキカラマツ Thalictrum minus var. hypoleucum
 ナンバンギセル Aeginetia indica
 ヌスビトハギ Desmodium podocarpum subsp. oxyphyllum
 マツカゼソウ Boenninghausenia albiflora var. japonica
 マツモ Ceratophyllum demersum
 キキョウ Platycodon grandiflorus
 カリガネソウ Tripora divaricata
 アブラゼミ Graptopsaltria nigrofuscata
 ヒメシャラ Stewartia monadelpha
 ガマズミ Viburnum dilatatum
 カワラケツメイ Chamaecrista nomame
 ゲンノショウコ Geranium thunbergii
〇タラノキ Aralia elata
 トウガラシ Capsicum annuum
〇ウコン(ターメリック) Curcuma longa
 ハナシュクシャ Hedychium coronarium
 エビスグサ Senna obtusifolia
 エゴマ Perilla frutescens var. frutescens
 シロザ Chenopodium album var. album
 ゲッケイジュ Laurus nobilis
〇アシタバ Angelica keiskei
 ヘチマ Luffa cylindrica
 センナリビョウタン Lagenaria siceraria var. microcarpa
 カラタチ Poncirus trifoliata
 フジバカマ Eupatorium japonicum
 ダイコンソウ Geum japonicum
タチテンモンドウ(立天門冬) Asparagus cochinchinensis var. pygmaeus
〇クワクサ Fatoua villosa
 マツバラン Psilotum nudum
 ホトトギス Tricyrtis hirta
 センニンソウ Clematis terniflora
 マユミ Euonymus hamiltonianus
 クスノキ Cinnamonum canphora 横浜市指定名木古木 No.59001,59002
 カワラタケ Trametes versicolor
 キツネノマゴ Justicia procumbens
 マメガキ Diospyros lotus
〇ツリフネソウ Impatiens textorii
〇アオドウガネ Anomala albopilosa
 ミツガシワ Menyanthes trifoliata
 ガマ Anomala albopilosa
 コヤブタバコ Carpesium cernuum
 ブラジルヤシ Butia capiatata
 アオノリュウゼツラン Agave americana
 カワニナ Semisulcospira libertina
 オオカナダモ Egeria densa
 ヤマハギ Lespedeza bicolor
 イチモンジセセリ Parnara guttata
 ストレリチア(極楽鳥花(ゴクラクチョウカ)) Strelitzia reginae
 ペペロミア・オブツシフォリア Peperomia obtusifolia
 ビカクシダ Platycerium bifurcatum
〇ワイルドオーツ Chasmanthium latifolium
 ペニセタム(ギンギツネ) Pennisetum villosum
 ワレモコウ Sanguisorba officinalis
〇ヤナギバシャリントウ ‘オータムファイアー’ Cotoneaster Salicifolius ‘Autumn Fire’
 トチノキ Aesculus turbinata
〇クズクビボソハムシ Lema diversipes
 アカメガシワ(雌花) Mallotus japonicus
 ラセイタソウ Boehmeria biloba
 クズ Pueraria lobata
 カラスウリ Trichosanthes cucumeroides
 ケヤキ Zelkova serrata (横浜市指定名木古木 No.48075)
 石塔群:金沢横丁
 いわな坂
 ダンドボロギク Erechtites hieracifolia
 北向地蔵尊
 エビヅル Vitis ficifolia
 サルスベリ Lagerstroemia indica
 エノキ Celtis sinensis (ゆずの木)
 ペンタス Pentas lanceolata
〇ヨモギクキマルズイフシ

横浜イングリッシュガーデンの秋

 長かった夏の暑気がようやく収まりそうなので、久しぶりに横浜イングリッシュガーデンを尋ねました。秋薔薇の季節はまだ先になりそうです。
 


【参考】○:本日、初撮影種
 横浜イングリッシュガーデン
 ハロウィン・デイスプレイ
 ハナカンナ Canna X generalis
 トウゴマ(ヒマ) Ricinus communis
 アノダ・クリスタータ Anoda cristata
 センチニコウ(白花) Gomphrena globosa
 ノゲイトウ(白花) Celosia argentea
 ユウガギク Kalimeris pinnatifida ‘Hortensis’
 サルビア・ガラニチカ Salvia guaranitica
 シュウメイギク Anemone hupehensis
 ニシキギ Euonymus alatus
 ジョウザンアジサイ ‘碧のひとみ’ Dichroa febrifaga ‘Ao-no-hitomi’
 ミソハギ Lythrum anceps
 ミズヒキ Persicaria filiformis
○キダチハッカ(セイボリー) Satureja hortensis Summer Savory
 フレンチマリーゴールド Tagetes patula
 バラ ‘ロザンナ’ Rosa X ‘Rosanna’
 イチモンジセセリ Parnara guttata
 マルバフジバカマ Eupatorium rugosum
 ハロウィン・デイスプレイ
 トレニア Torenia fournieri
 ガウラ Gaura lindheimeri
 ゴンフレナ ‘ラブラブラブ’Gomphrena pulchella ‘Love Love Love’
 ニラ Allium tuberosum
 ヒャクニチソウ Zinnia x hybrida
 トウガラシ ‘辛ビキーニョ’ Capsicum chinense ‘Habanero’ X Capsicum annuum ‘Biquinho’
 コリウス Solenostemon scutellarioides
○セダム(虹の玉) Sedum rubrotinctum
 ピンクノウゼンカズラ Podranea ricasoliana Syn. Pandorea ricasoliana
○ツメレンゲ Orostachys japonica
 丘友坂

ヒルムシロ科の写真整理

 ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)は、約100種からなる水生植物のグループで(角野,1984; Lindqvist et al.,2006)、APGの分類体系ではオモダカ科の所属となっています(APG-IV,2016)。ヒルムシロは水田に普通な雑草でしたが、稲作の衰退とともに減少傾向にあると思われ、神奈川県植物誌(2018)によれば、三浦半島では三浦市でヒルムシロとエビモが記録されているだけです。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【オモダカ目(Alismatales) ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
ヒルムシロ属 Potamogeton
ヒルムシロ ヒルムシロ
Potamogeton distictus Pondweed

【文献】
Lindqvist C, Laet Jd, Haynes RR, Aagesen L, Keener BR and Albert VA (2006) Molecular phylogenetics of an aquatic plant lineage, Potamogetonaceae, Cladistics, 22, 568–588, DOI: 10.1111/j.1096-0031.2006.00124.x, Accessed: 2024-09-22.
角野康郎 (2023) 日本の水草の分類−研究はどこまで進んだか、植物地理・分類研究, 71(2), 93-106, DOI: 10.18942/chiribunrui.0712-01, Accessed: 2024-09-21.
角野康郎 (1984) ヒルムシロ属同定の実際(1)浮葉をもと種類, 水草研究報, (15), 2-9, URL: https://mizukusakenjp.sakura.ne.jp/PDF/BWPSJ015_2.pdf, Accessed: 2024-09-21.
沖田朋久, 髙居千織, 豊田恵子 and 喜内博子 (2020) 川崎市内河川の親水施設調査結果(2019年度), 川崎市環境総合研究所年報, (8), 61-71, URL: https://www.city.kawasaki.jp/300/cmsfiles/contents/0000126/126578/nenpou8_4houbun9.pdf, Accessed: 2024-09-21.
神奈川県植物誌調査会(2018)神奈川県植物誌2018(上)、p253-259.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

ニヶ領用水を辿って

 漸く残暑が終りつつある今日は、多摩川から取水されているニヶ領用水に沿って下りながら散策してみました。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【参考】○:本日、初撮影種
 ニヶ領上河原堰
○ヒルムシロ Potamogeton distictus
 オオニワホコリ Eragrostis pilosa
 チカラシバ Pennisetum alopecuroides
 アオサギ Ardea cinerea
○チュウダイサギ Egretta alba modesta
○コウガイセキショウモ Vallisneria X pseudorosulata
 ハグロトンボ Calopteryx atrata
 ヨシ Phragmites australis
○オオイヌタデ Persicaria lapathifolia
○シロフクロタケ Volvopluteus gloiocephalus Syn. Volvariella speciosa
 ウキクサ Spirodela polyrhiza
○オオカナダモ Egeria densa
 マメアサガオ Ipomoea lacunosa
 ミニヒマワリ Helianthus annuus cv.
 オオスカシバ Cephonodes hylas
 キバナコスモス Cosmos sulphureus
○コナギ Monochoria vaginalis var. vaginata
 ルコウソウ Ipomoea quamoclit
 マゴイ Cyprinus carpio
 イヌタデ Persicaria longiseta
 ジュズダマ Coix lacryma-jobi
 ツユクサ Commelina communis
 ヌルデハイボケフシ白膠木・葉・疣・毛五倍子
 メリケンガヤツリ Cyperus eragrostis
 ノダフジ Wisteria floribunda
 イチョウ Ginkgo biloba 川崎市まちの樹50選保存樹木No.3175(右),3176(左):永池山長念寺
 クスノキ Cinnamonum canphora 川崎市まちの樹50選:登戸稲荷社
 ケヤキ Zelkova serrata 川崎市まちの樹50選:登戸稲荷社
 ノダフジ Wisteria floribunda:丸山教本庁
 クスノキ 川崎市まちの樹50選::丸山教本庁
 光のしじま:作 井上 (ばく)
 浅間社(登戸富士塚):川崎市多摩区登戸2919
 庚申塔:浅間社(登戸富士塚)
 南武線
 石塔群(船島福地蔵):宿河原1丁目27
 フウセンカズラ Cardiospermum halicacabum
 地蔵尊:宿河原1丁目9
 船島稲荷社
 カワラバト Columba livia
 二ヶ領宿河原堰
○ウグイ Tribolodon hakonensis
○ゲンゴロウブナ Carassius cuvieri
○ナガブナ Carassius auratus Subsp. 1
○ニゴイ Hemibarbus barbus
 フヨウ Hibiscus mutabilis
 ワタ Gossypium hirsutum
 サツマイモ Ipomoea batatas
○ミツバハマゴウ Vitex trifolia
 ショウジョウソウ Euphorbia heterophylla
 ヒメノウゼンカズラ Tecomaria capensis
 ヒガンバナ Lycoris radiata


国登録記念物 ニヶ領用水(にかりょうようすい)
 登録年月日:令和2(2020)年3月10日
 登録面積:82,236.07㎥

 令和2(2020)年3月、ニヶ領用水は多摩川に水源を有する最古級の農業用水であることや、開削以降利用する村々が協力して維持管理を行ってきた歴史があることなどから、その価値が認められ、大部分が国登録記念物に登録されました。
二ヶ領用水の誕生
 古くから大雨が降るたびに洪水や氾濫を繰り返す多摩川は、川沿いであっても灌漑利用が困難でした。小泉次太夫は、多摩川流域の灌漑治水事業に取組む徳川家康の命により、慶長4(1599)年から用水の開削工事を開始し、江戸時代初期の慶長16(1611)年、ニヶ領用水が完成しました。この名称は、稲毛領・川崎領のふたつの領地にまたがって開削されたことの由来します。以降、ニヶ領用水は現在の多摩区から川崎区までの農地を潤してきました。
田中休愚(きゅうぐ)による大改修
 完成から約100年が経った江戸時代中期になると、二ヶ領用水は各所で老朽化が目立つようになりました。そこで、享保10(1725)年から、川除御普請(かわよけごふしん)御用の田中休愚により大規模な改修工事が行われ、用水を分配する「久地分量樋(くじぶんりょうひ)」や「上河原取入口圦樋(かみがわらとりいれぐちいりひ)」などが新たに設置されました。その結果、江戸時代中期から後期にかけて周辺の新田灌漑面積は60ヶ村、約2,000haまで広がりました。
近代化する用水施設
 明治時代後期には施設の老朽化に加え、相次ぐ災害により二ヶ領用水は大きな被害を受けました。そこで、昭和11(1936)年から、用水路工事をはじめとする改修工事が開始されました。昭和16(1941)年には、それまでの分量樋に代わり、当時としては最も理想的で正確な自動・定比の分水装置である円筒分水が建設されました。
農業用水・工業用水を経て現在へ
 昭和に入り市内の工業化が進むと、二ヶ領用水は日本初の公営工業用水として、川崎の工業を支える役割を果たすようになります。
 一方、昭和30年代半ばの急激な都市化により、多くの生活用水が流入し、水質の悪化が問題となりました。こうした状況から、周辺住民による二ヶ領用水再生に向けた市民運動が盛んになり、日常的な市民の努力や下水道の整備などによって、水質は改善していきました。
 こうして二ヶ領用水は、農業用水や工業用水しての役割を経て、川崎市の発展の礎を築いたシンボルとして現在でも親しまれています。
多摩区の用水利用
 多摩区には、多摩川から二ヶ領用水への取水口である上河原堰と宿河原堰があります。建造時から昭和の初めまでは蛇籠堰(じゃかごぜき)という竹籠と砕石で造る堰でしたが、用水の不足により維持修繕費が多額にのぼることなどから、昭和20(1945)年には上河原堰、昭和24(1949)年には宿河原堰がコンクリート堰堤へと改修されました。
   令和3(2021)年3月 川崎市教育委員会


ニヶ領宿河原堰(にかりょうせきがわらぜき)
ニヶ領宿河原堰のあゆみ
 二ヶ領用水開削に着手したのは、江戸時代以前の1597年のことで、徳川家康の農業生産を高めるために小泉次太夫に命じ、1611年に完成しました。
 この二ヶ領用水に多摩川の水を取り入れ易くするために、宿河原に堰が設けられましたが、当時は竹製の蛇籠で造られていました。
 1949年(昭和24年)5月、安定した取水量を確保するために、コンクリート製の堰に改築されました。この時に造られたのが旧・宿河原堰で、ほとんどが固定部(洪水時も堰の高さが変わらない)でした。
 1974年(昭和49年)9月、台風16号による出水により狛江市側の堤防が決壊し、民家19軒が流されるという大きな災害が発生しました。
 1994年(平成6年)から川崎市と建設省(当時)の共同により治水安全の向上と水辺環境等なも配慮した改築工事に着手し、1999年(平成11年)3月に現在の宿河原堰が完成しました。
洪水を安全に流す
 治水安全の向上を図るため、旧堰より堰の高さを2m切り下げ、洪水時の水位を大幅に下げること裸子ました。
水辺環境や景観への配慮
 一方、宿河原堰周辺は交通の利便性からも多くの人々の憩いの場となっているとともに、堰上流の湛水面は多様な生物の生息域となっていました。このため、切り下げた堰に2mのゲートを設け可動堰とすることにより、日常は旧堰と同じ湛水面を確保し、堰周辺の豊かな水辺環境の保全にも配慮しました。
 また、起伏式ゲートの採用や堰下流側の水の流れの工夫などにより、旧堰が創出していた景観や雰囲気にも配慮した構造としました。
◇「土木学会デザイン賞2010 優秀賞」を受賞◇
 新しい堰は、起伏式ゲートを採用することにより、視界を遮ることなく、上空への広がりを確保し、自然石や特殊型枠を使用し石張り風に仕上げることで人口構造物のイメージを軽減しました。これらを含めたさまざまな工夫が総合的に評価を得て、受賞しました。   国土交通省 関東地方整備局 京浜河川事務所 2012.3作成


船島稲荷社のゆかり
聖なる母多摩川の川辺に古くは中の島現在は船島と云うふるさとがある、此の地を開拓した我等の祖先は堤の近くに信仰の氏神として稲荷社を祀った治水興農の守護神として爾来幾百年しはしば暴風雨水害に見舞はれ度々境内を移したりした、昭和十二年境内には決壊し樹令数百年に及ぶ神木は流され社殿は水浸しとなるも常に霊験加護を信じ神徳に浴さんとする氏子の信仰心を結集し社を復興して今日に到ったのである、稲荷社の歴史を信仰をもちつゝ自然と共に生きてきた吾等の祖先の足跡とも考へられる「日の本は神の国なり神まつる昔のてぶり忘るゝなゆめ」とその歌にあるように今も参詣人がたえないのである教聖初代不動教会長関山盛衆師も有力な信者の一人である、先に氏子一同相計り本殿を近代風に改築し神徳を礼賛し今亦拾周年を迎へる当り玉垣をめぐらして神域を整え景仰の誠を捧げ遺風を顕彰しようとするものである茲に一文を草し以て崇敬の念を表する所以である。
   昭和五十四年十一月吉日
     船島稲荷社改築拾周年記念委員会
          委員長 田中交司 選併書

※:出展は明治天皇が詠んだ
「わが國は神のすゑなり神まつる 昔の手ぶり忘るなよゆめ」であったと思われる。太平洋戦争前までは教科書に載っていた歌のようなので、建碑当時の年配者にはよく知られていたと推測されます。

【文献】
藤井伸二, 勝山輝男, 狩山俊悟 and 牧 雅之 (2027) コウガイセキショウモの野生化個体群を神奈川県と岡山県に記録する, Bunrui, 17(1), 43-47, DOI: 10.18942/Bunrui.01701-05, Accessed: 2024-09-21.
糟谷大河, 丸山隆史, 池田裕, 布施公幹 and 保坂健太郎 (2018) 日本新産種 Volvopluteus earlei(ハラタケ目,ウラベニガサ科), 日菌報, 59, 47-52,DOI: 10.18962/jjom.jjom.H30-06, Accessed: 2024-09-22.
Rylková K, Kalous L, Bohlen J, Lamatsch DK, Petrtýl M (2013) Phylogeny and biogeographic history of the cyprinid fish genus Carassius (Teleostei: Cyprinidae) with focus on natural and anthropogenic arrivals in Europe, Aquaculture, 380-383, 13-20, DOI: 10.1016/j.aquaculture.2012.11.027, accessed: 2024-09-22.
信濃教育會編 (1939) 第二課 敬神崇祖、in 青年學校終身及公民教科書巻一-本科男子五年制用、p.8-14、PDF: , accessed: 2024-09-23.

トチカガミ科の写真整理

 トチカガミ科(Hydrocharitaceae)は、18属約120種からなる水生植物のグループで、ハナイ科が姉妹群と推定されていてオモダカ目の所属になっています(Chen et al.,2022; APG-IV,2016)。我国でのトチカガミ科の多くの種は絶滅が危惧されていて、クロモ(Hydrilla verticillata)もその例ですが、その原因は北米から帰化したオオカナダモ、コカナダモの分布拡大が影響したと考えられています(沖ら,1989)。

 維管束植物の分類【概要小葉植物と大葉シダ植物裸子植物被子植物(APG-IV体系)】【生物系統樹


【オモダカ目(Alismatales)の系統関係】Chen et al.(2022)
カワツルモ科(Ruppiaceae)は試料が供試されなかったため記載がありません。

  ┌オモダカ科(Alismataceae)
 ┌┤┌トチカガミ科(Hydrocharitaceae)
 │└┴ハナイ科(Butomaceae)
┌┤    ┌┬ヒルムシロ科(Potamogetonaceae)
││   ┌┤└アマモ科(Zostraceae)
┤│  ┌┤└┬ベニアマモ科(Cymodoceaceae)
││ ┌┤│ └ポシドニア科(Posidoniaceae)
││┌┤│└マウンディア科(Maundiaceae)
│└┤│└シバナ科(Juncaginaceae)
│ │└ホロムイソウ科(Scheuchzeriaceae)
│ └レースソウ科(Aponogetonacaeae)
└┬サトイモ科(Araceae)
 └チシマゼキショウ科(Tofieldiacaeae)

【トチカガミ科(Hydrocharitaceae)の系統関係】Chen et al.(2012)

  ┌クレードA(Clade A)
  ││ ┌┬ウミヒルモ属(Halophila)      ┐
  ││ │└┬ウミショウブ属(Enhalus)     ├海草
  ││┌┤ └リュウキュウスガモ属(Thalassia) ┘(Seagrasses)
 ┌┤│││ ┌クロモ属(Hydrilla)
 ││└┤│┌┤┌ネカマンドラ属(Nechamandra)
 ││ │└┤└┴セキショウモ属(Vallisneria)
┌┤│ │ └イバラモ属(Najas)
│││ └┬リムノビウム属(Limnobium)
│││  └トチカガミ属(Hydrocharis)
┤│└クレードB(Clade B)
││ │  ┌アパランテ属(Apalanthe)
││ │ ┌┴┬オオカナダモ属(Egeria)
││ │┌┤ └コカナダモ属((Elodea)
││ └┤└┬ミズオオバコ属(Ottelia)
││  │ └スブタ属(Blyxa)
││  └ラガロシフォン属(Lagarosiphon)
│└ストラティオテス属(Stratiotes)
└ハナイ科ハナイ属(Butomus)Out group

【オモダカ目(Alismatales) トチカガミ科(Hydrocharitaceae)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
トチカガミ属 Hydrocharis
トチカガミ トチカガミ
Hydrocharis dubia Asian Frogbit
クロモ属 Hydrilla
クロモ クロモ
Hydrilla verticillata Esthwaite Waterweed
セキショウモ属 Vallisneria
コウガイセキショウモ コウガイセキショウモ
Vallisneria X pseudorosulata Tape Grass
オオカナダモ属 Egeria
オオカナダモ オオカナダモ
Egeria densa Large-flowered Waterweed

【文献】
Chen L-Y, Lu B, Morales-Briones DF, Moody ML, Liu F, Hu G-W, Huang C-H, Chen J-M and Wang Q-F (2022) Phylogenomic Analyses of Alismatales Shed Light into Adaptations to Aquatic Environments, Mol Biol Evol, 39(5):msac079, DOI: 10.1093/molbev/msac079, Accessed: 2023-09-15.
Chen L-Y, Chen J-M, Gituru RW and Wang Q-F (2012) Generic phylogeny, historical biogeography and character evolution of the cosmopolitan aquatic plant family Hydrocharitaceae, BMC Evol Biol, 12:30, DOI: 10.1186/1471-2148-12-30, Accessed: 2023-09-15.
沖陽子、今西競、中川恭二郎 (1989) 沈水雑草オオカナダモ,クロモ,コナダモの生育環境及び外部形態の変異性に関する研究、農學研究, 62(1), 31-48, URL: https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/files/public/5/51165/20160528105547132020/bbr_62_1_031_048.pdf, Accessed: 2023-09-15.
藤井伸二, 勝山輝男, 狩山俊悟 and 牧 雅之 (2027) コウガイセキショウモの野生化個体群を神奈川県と岡山県に記録する, Bunrui, 17(1), 43-47, DOI: 10.18942/Bunrui.01701-05, Accessed: 2024-09-21.
The Angiosperm Phylogeny Group and others (2016) An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG IV, Botanical Journal of the Linnean Society, 181(1), 1–20, DOI: 10.1111/boj.12385, Accessed: 2023-07-11.

海の公園から泥牛庵へ

 何か藻類の写真が撮れればと思い、海の公園を尋ねました。

 【生物の系統概要】【真核生物】【シダ類】【裸子植物】【被子植物】【菌類】【哺乳類】【鳥類】【昆虫類】 【節足動物】 【軟体動物】【後生動物


【参考】○:本日、初撮影種
 センニンソウ Clematis terniflora
 メナダ Planiliza haematocheilus
 デュランタ Duranta erecta
 エノコログサ Setaria viridis
 ノウゼンカズラ Alstroemeria aurea
○ウミニナ Batillaria multiformis
○イワフジツボ Chthamalus challengeri
 マガキ Crassostrea gigas
 未来へのタマゴ(作者:日本造形)
  これは、宇宙・生命・自然など、あらゆる意味を秘めている。「さあ、何が生まれてくるのかな?」次代を担うタマゴ達へ贈ります。 平成5年3月
 コノテガシワ Platycladus orientalis
 ムラサキナツフジ Callerya reticulata
○カワラヒワ Chloris sinica
 カリン Pseudocydonia sinensis
 レモン Citrus limon
○トチカガミ Hydrocharis dubia
○アズマザサ Sasaella ramosa
 アレチヌスビトハギ Desmodium paniculatum
 メリケンカルカヤ Andropogon virginicus
 マテバシイ Lithocarpus edulis
○アナアオサ Ulva australis
 ハマボウ Hibiscus hamabo
 カランコエ Kalanchoe blossfeldiana
 ゴシキトウガラシ Capsicum annuum
 サンショウモ Salvinia natans
 クルクマ・ペティオラタ Curcuma petiolata
 クルクマ・シャローム Curcuma alismatifolia
 キムネクマバチ Xylocopa appendiculata
 ネズミモチ Ligustrum japonicum
 ヤマアジサイ ‘光月’ Hydrangea serrata ‘Kogetau’
  一重額咲き。鋸葉があり、弁は重なる。葉が乳白色になる独特の品種。新葉は緑色だが、その後六月頃から乳白色に変化し、十一月頃まで葉色を楽しめる。
 瀬戸神社のカヤ Torreya nucifera:横浜市指定名木古木 No.48137
 吼月山(くげつさん)泥牛庵:金沢区瀬戸11-1
 石塔群(庚申、馬頭観音、青面金剛、猿田彦):
 ハス Nelumbo nucifera
 ウキクサ Spirodela polyrhiza
 スイレン Nymphaea sp.
○クロモ Hydrilla verticillata
○ラセンイ Juncus effusus ‘Spiralis’
 エノキグサ Acalypha australis
○セスジスズメ Theretra oldenlandiae
 カラムシ Boehmeria nivea
 アオツヅラフジ Cocculus trilobus
 タマシダ Nephrolepis cordifolia (の貯水球)
 メドハギ Lespedeza cuneata


【文献】
加戸隆介 (2023) 日本沿岸の人工構造物に付着するフジツボ類の形態的特徴と分布(前編), 海生研ニュース, (160), 4-7, URL: https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news160kaisetu.pdf, Accessed: 2024-09-14.
加戸隆介 (2024) 日本沿岸の人工構造物に付着するフジツボ類の形態的特徴と分布(後編), 海生研ニュース, (161), 5-8, URL: https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news161kaisetu.pdf, Accessed: 2024-09-14.
金末姫・山口寿之 (1996) イワフジツボおよびオオイワフジツボ(蔓脚亜綱,完胸目,イワフジツボ科)の幼生発生と類縁関係, Marine Fouling, 12(2), 1-23, DOI: 10.4282/sosj1979.12.2_1, Accessed: 2024-09-14.


  泥牛庵縁起
開基 北條高時(鎌倉幕府第十四代執権)
開山 南山士雲禅師(鎌倉円覚寺第十一世)
開創 正中二年(一三二五年)
移転 元禄年間
 米倉家柳沢吉保六男を養子に迎え皆川藩より転封、金沢六浦藩陣屋創設に当たり現在の京急金沢駅裏谷戸の旧寺領より現在地へ移転となる。
本尊 聖観世音菩薩(北條高時公護守仏)
脇仏 子育て地蔵尊(元六浦地蔵堂本尊)下野国小山家遺児供養仏


  泥牛庵庚申塔
道教由来の更新思想により庚申塔は江戸時代街道の整備と共に全国の寺社の辻付近に多く建てられるようになりました。通行人の道中安全や疫病、災害を防ぐ意味と、また六十日に一度訪れる庚申の日に体内の三尸の虫が天帝に人間の罪悪事を告げ口に行くことを阻止するために一晩中皆衆が集まり夜を明かした場所にもなりました。当庵の庚申塔は豊れ九年間に据えられたもので正面左から三猿像、馬頭観音塔、青面金剛塔、猿田彦神塔の順に並んでいます。

腕足動物門(Brachiopoda)の系統概要

 腕足動物門(Brachiopoda)は古生代が始まる前から生息していたグループで、古生代ペルム紀末、そして中生代白亜紀末の大絶滅にも生き延びた生物群です(Carlson,2016)。かつては、ホウキムシ綱(Phoronidea)コケムシ綱(Bryozoa)とともに腕足綱(Branchiopoda)として触手動物門(Tentaculate)に置かれていましたが、現在では3綱とも独立の門に格上げされています。
 外見は二枚貝によく似ていますが、二枚貝の殻が左右に着くのに対して、腕足類の殻は背側(Dorsal)と腹側(Ventral)に配置するのが大きな違いで、背側の基部から肉茎(Pedicle)と呼ばれる組織が背側に出て、これで基質に付着する種が多いとされています(Carlson,2016)。
 これまで記載されてきた腕足動物の95%以上は化石種であり(Carlson,2016)、現生種は約350種と言われています(池田・倉持,1997)。軟体動物の貝殻の主成分は炭酸カルシウムですが、腕足動物の貝殻の主成分はリン酸カルシウム(calcium phosphate)である種もあり(Luo et al.,2015)、殻の成分による分類も試みられたことがあるようですが、系統との関係は明らかではないようです。

 【生物の系統概要】【真核生物】【シダ類】【裸子植物】【被子植物】【菌類】【哺乳類】【鳥類】【昆虫類】 【節足動物】 【軟体動物】【後生動物


【腕足動物門(Brachiopods)の系統概要】Carlson(2016)、†:絶滅目

┌他の冠輪動物(Lophotrochozoan)
│  ┌舌殻亜門(Linguliformea)
│  ││┌舌殻綱(Lingulata):リン酸カルシウムの殻
┤  ││││┌アクロトレタ目(Acrotretida)(†)
│  │└┤└┤┌シャミセンガイ目(Lingulida)
│ ┌┤ │ └┴シフォノトレトラ目(Siphonotretida)(†)
│ ││ └パテリナ綱(Paterinata)
│ ││  └パテリナ目(Paterinida)(†)
│ │└頭殻亜門(Craniiformea)
│┌┤ └┬頭殻綱(Craniata):炭酸カルシウムの殻
│││  └┬頭殻目(Craniida)
└┤│   └┬クラニオプス目(Craniopsida)(†)
 ││    └トリメレラ目(Trimerellida)(†)
 │└?箒虫動物(Phoronida)
 │┌オボレラ綱(Obolellata)(†)
 └┼キレータ綱(Chileata)(†)
  ├クトルギナータ綱(Kutorginata)(†)
  └┬ストロフォメナ綱(Strophomenata)(†)
   └嘴殻綱 (Rhynchonellata)(†):リン酸カルシウムの殻
    └新有関節クラウンクレード(Neoarticulata crown clade)
     │┌ペンタメルス目(Pentamerida)(†)
     └┤┌┬クチバシチョウチン目(Rhynchonellida)
      ││└┬アトリパ目(Atrypida)(†)
      └┤ └┬ホウズキガイ目(穿殻目)(Terebratulida)
       │  └アチリス目(Athyridida)(†)
       │┌テキデラ目(Thecideida)
       └┼スピリファー目(Spiriferida)(†)
        └スピリフェリニダ目(Spiriferinida)(†)

【腕足動物門(Brachiopoda) 嘴殻綱(Rhynchonellata) ホウズキガイ目(穿殻目)(Terebratulida)】

和名 (Japanese Name) 画像 (Image) 学名 (Latin name) 英語名 (English name)
テレブラタリア科(Terebrataliidae) テレブラタリア属(Terabratalia)
カメホウズキチョウチン カメホウズキチョウチン
Terabratalia coreanica (Lamp Shell)
フレヌリア科(Frenulinidae) フレヌリア属(Frenulina)
フレヌラソデガイ フレヌラソデガイ
Frenulina sanguinolenta

【文献】
Carlson SJ (2016) The Evolution of Brachiopoda, An Rev Earth Planet Sci, 44, 409–438, DOI: 10.1146/annurev-earth-060115-012348, Accessed: 2024-09-03.
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